『It’s All in the Fingers』 番外編@SKIP シティ

川口にある国際Dシネマ映画祭で見てきた短編映画三編の一つ目です。
日本とポーランドの合作映画とのことですが、たった10分しかありません。

映画はその10分がさらに3編に別れていて、どれもタイトルの通り、何気ない日常の指の動きが、異次元空間への裂け目のような所に嵌り、現実世界に巨大な指となって登場すると言うことが共通です。例えば、二編目では、田舎道を車で進み迷った夫婦が道の分かれ目で地図を広げ、地図の箇所を確認しながら、指で触っていると、「ズン」・「ズン」と指を当てるたびに地響きが起きます。それは、地図のポイントに夫婦が指を当てるたびに、現実のその場所に巨大な指が天空から突き当たってくる音でした。で、その夫婦は、音の元に気づくことなく、最後に「だから、私達はここにいるのね」のような感じで、自分たちの現在地を指さしてしまうのでした。

この映画は、パンフレットの解説にもありますが、或る意味での反戦映画です。三編のストーリーでは、ラジオやテレビから、アメリカ発のブッシュ大統領のニュース画像が流れていて、「大量破壊兵器が存在するから、攻撃を仕掛けなければならない」と宣言されています。そんな大事をよそに、人々(劇中では、多分ポーランドの人々と言うことになりますが)は、日常生活を何らの変化なく送り、そこでは、彼らの日常行動を象徴するような指の方が(ブッシュ大統領が各ボタンを押したり、戦争開始の署名をする指よりも)当たり前に重要であるというような話です。

何となく、この奇妙な特撮のようなものもなく、やはり、ヨーロッパ(と言っても旧ソビエトですが)の田舎を舞台とした、戦争批判の映画である『サクリファイス』が思い出されました。タルコフスキーの怪作ですが、高校生時代に見た印象は鮮烈でした。あと、ブッシュ大統領の指を巡る戦争パロディポルノ映画の『花井さちこの華麗な生涯』も何となく思い出されます。これらの強烈な印象に比べると、10分だから仕方ないのかもしれないのですが、奇抜な着想の割に印象が薄いのが難点です。