『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』

深夜のバルト9の、到底この時間の回とは思えないような混雑の中で見てきました。パンフレットも売り切れ、エレベーター前も大混雑、ロビーもごった返しと言う、この映画館で初めて見る人ごみでした。

公開予定が当初の発表よりも大きく延びたはずの、「破」ですが、私にとっての総合点では「序」よりもやや低いぐらいの傑作です。「にゃん」とか言い出すメガネっ娘新キャラの登場や、アスカの苗字も立場も変わり、弐号機のデザインも大きく変わり…などと、全くの新設定と聞いていましたが、それ以外の部分は、登場する使徒の順番やら特徴やらも、ほぼ原作どおりですし、場面設定や有名どころの台詞回しも大きな変更が見当たりませんでした。むしろ前評判に比べ、ストイックなほどにオリジナルから逸脱を発生させないように作られたように私には感じられました。

個人的好み全開で言うと、女性キャラに関しては、プラスマイナスが微妙です。私はアスカが鬱陶しくて大嫌いで見るに耐えないので、オリジナルのDVDのガギエル・イスラフェル・サンダルフォン・アラエルの話は、購入以降殆ど再生したことがありません。それらのエピソードがきれいにスキップされているのは、非常に好ましく思いました。一方、私の大好きなキャラの綾波レイ(?)は、シンジに好意を抱いて料理に挑戦し、手をバンソーコーだらけにし、映画全体をラブロマンスに変えてしまっていて、肩透かしを食らった感じです。

演出に関しても、再び、プラスマイナスが微妙です。音楽に映画『太陽を盗んだ男』のテーマ曲やら『365歩のマーチ』、さらにはバルディエルの解体の名場面に使われるやたらに明るい唱歌など、どうも私は好きになれませんでした。これほどの、違和感と言うより、場違い感を抱いてしまうのは、『キャシャーン』で唐突に流れ出す椎名林檎の『茎』以来ではないかと思います。一方、画像の精巧さは「序」同様に素晴らしく、帰宅して見直したオリジナルDVDのミサトの顔の輪郭など、(今までは何らの違和感もなかったのに)雑に感じられてしまいます。バルディエル以外、フォルムが斬新になった使徒もこの精巧な画像があってこそ、(使徒は生き物かと言う問題はさておき)活き活きして見えるように思います。

その使徒のフォルムもまた、プラスマイナスあい中和する感じです。私が好きな使徒はサハクィエルとゼルエルです。両者が一本の映画の刻みに納まってくれてまずは嬉しいのですが、サハクィエルのオリジナルに比べて見紛うような時々刻々と変化して行くフォルムの美しさは、最高でしたが、好きになれなかったのはゼルエルです。私はゼルエルの牛が直立したようなデザインと、それがただ空中をぬーっと移動する様子の不気味さが大好きです。あの格好と動きの鈍さで、最強の使徒なのですから、魅力は尚更です。しかし、映画では、ほどけるのは両手(?)だけではなく、全身です。ほどけて、空中に浮かぶくらげの様になってしまいますし、零号機捕食後は、その下に肉体までできてしまって、なんだか不恰好なだけになってしまったように感じます。原形を留めぬほどのフォルムの美しさになったマトリエル(あまりにもフォルムが違うのですが、多分、マトリエルでしょう。パンフもないので、確認できませんが)なども登場する一方で、このゼルエルの不細工さは好きになれません。

そんなこんなで、悩み深いエヴァ映画なのですが、DVDは間違いなく買います。やはり、第一の理由は「序」同様の画像の美しさです。第二の理由は、アスカが鬱陶しい話を飛ばし飛ばし見なくてはいけないオリジナルDVDにくらべ、登場したアスカは早々に病院送りになり、あとは綾波レイ(?)とメガネっ娘新キャラ(と、ついでに、ミサトとリツコ)を安心してみていられる利便性です。