570 痩せた畑

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経営コラム SOLID AS FAITH 第570号
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 ご愛読ありがとうございます。第570話をお届けします。

 今年も残す所2ヶ月余りとなりました。中小零細企業の経営環境を見ると、
電子帳簿等保存制度やインボイス制度の対応で各種の混乱が起きそうです。
制度に従った自社内の対応のみならず、制度の概要を未だに分かっていない
取引先や分かっていても対応の意思がない取引先への対応にも、諸々の手間
がかかることでしょう。

 制度ができると、その徹底度合いや実現度合いについて、「落し所」が世
間一般に共通に認識されるまで時間がかかり、その間、暗中模索が続きます。
既に始まっているゼロゼロ融資返済の問題も年末に向けて焦げ付く所が増え
るという予想もあります。寒さの到来と共に気の抜けない季節が始まりそう
です。
 
 毎年10月末日に発行する創刊周年記念特別号は、今年は24周年です。そ
の24周年記念特別号発行前の最後の通常号となりました。24周年記念特別
号のテーマは離職対策です。大手企業基準の世の中で言われる一般的な離職
抑制策と一線を画し、中小零細企業の現実・現場の目線で、離職抑制の方法
を考えてみます。
 
 そのように言うと、人手不足が嵩じて、「採用の方が問題で定着はまだま
だ先の話」といった声をお聞かせいただくことがあります。しかし、離職抑
制策がなければ、苦労して雇った人材の満足度が低く、次々と離職に至りま
す。底の抜けたバケツ状態です。そうなると、また採用を強化することにな
りますから負のスパイラルを突き進むことになります。
 
 また地域のそれほど規模も大きくない企業が離職者を次々と発生させると、
地域コミュニティの中で社内の定着が困難な内情がどんどん共有されて行っ
てしまい、余計に採用が困難になります。生産性向上などのたくさんのメリ
ットもある離職抑制策をまず講じるべきなのです。是非ご一読の上、実践に
手を着けてみてください。

 今号は『痩せた畑』と題して、中小零細企業の文系4大新卒者採用の変容
についてまとめてみた内容です。通称武漢ウイルス禍によって、それ以前に
起きていた採用市場の地殻変動が一気に表面化してその一部は定着してしま
ったように見えます。従来の採用方法の再検討が必要となりました。これも
一つの大きな経営環境の変化要因であるように思えます。是非一緒にご一考
ください。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへの
お返事の目標納期は5営業日!!

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その570:痩せた畑

 どうもおかしいと私はほぼ同業の彼に疑問をぶつけた。就活市場が変質し
ていると思う。通称武漢ウイルス禍のせいで混乱が続いたが、変質のトレン
ドは変わっていない。大学生は三年生のうちに早々に就活を始める者から四
年生の秋を過ぎてから慌てだす者まで多様になってきた。三年生のうちは何
をやるのかと突き詰めていくと、大学就職課の関係者でさえ、インターンシ
ップですと言う。本当だろうか。
 
 調べて行くと、新卒学生を売物にした人材紹介業は企業から紹介料をたん
まり受領していて、就活塾だの各種業者も学生達に就活以外の就職ルートを
提供している。大手有名企業側はOB・OGを大学のゼミやらサークルに送り込
んで青田買いをしている。それらの学生達は四年生になってからの就活市場
には現れてこない。大手有名企業がそのような金や手間暇をかけて囲い込も
うとするのは、数限られた“優秀な学生”達だろう。大手企業群が水面下で
食指を伸ばさなかった学生。それが三年生の終わり頃から就活市場に顕れる
その他大勢の学生達だろう。彼らも企業から望まれる資質の順に市場から消
えて行く。

「結局、水面下の就活市場から顕在的な就活市場まで、ほぼ二年近いスパン
で就活が展開されて、学生の質のグラデーションがぐーっと引き延ばされた
状態で、大手有名企業から無名の零細企業までが新卒採用に挑むということ
か」と私は頷く彼に確認した。

 クライアントの小規模事業者のご夫婦を訪ねると、その日は年にたった二
回だけ行なう会社説明会に向けて、応募学生の母集団形成の計画を考えるこ
とになった。過去五年以上の新卒採用の経験から、どのような取り組みをし
ている就職課がある、どの程度の偏差値の大学にアプローチすべきかを慎重
に検討する。

 この会社では昨年から小学生向けの算数の計算ドリルや国語の読取りドリ
ルを入社した社員達に与えて、読解力の教育を始めた。当初作った育成計画
もじわじわと下方修正し、入社したての新卒社員の現実的な能力にあったス
キル・マップに収斂した。それと同時に、採用プロセスの方は、コストを掛
けず少しずつ母集団形成を強化しつつ、選考方法を工夫し、多くの学生から
少しでも育成の手間がかからない学生を選抜できるように改善が積み重ねら
れている。それでも、暗算もできなければ、お客様の電話連絡内容をメモに
まとめることもできないような社員が入ってくる。作業の優先順位の理解な
ど遠い目標だ。

「ウチの採用は痩せた畑から細い折れそうな人参を収穫するようなものだと
想定することにしましたよ。その上で何ができ、どう改善するかを考えます
よ。そうでしたよね」。
 打ち合わせの後、社長が自分に言い聞かせるように笑顔で言うので、私も
笑顔で応じた。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『普通の人々の戦い …』 アンドリュー・ヤン 著
■『子どもの学力がグングン伸びる古典音読』 陰山英男 著
■『恐怖バブルをあおる世界経済はウソばかり! …』 増田悦佐 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
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次号予告:
 第571話 『洞窟のインフルエンザ』 (11月10日発行)
 社内不倫について以前クライアント企業の社長から相談を受けた話をまと
めてみました。

(完)