563 続・池水浄化

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経営コラム SOLID AS FAITH 第563号
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 ご愛読ありがとうございます。第563話をお届けします。

 今年も半分が終わりました。通称武漢ウイルス禍が一応収まったことにな
ってからの最初の年がいよいよその全貌を現してきたように感じます。増田
悦佐によれば、資本主義の資本が膨張してリターンが望める大口投資先が見
当たらなくなってしまい、世界全体で投資先を大規模に創る必要に迫られて
いるのがこの時代とのことです。

 それが、旧態依然たる戦争も新形態の戦争もダラダラ続くことであり、イ
ンフルエンザよりも低毒性なのに通称武漢ウイルスに全世界規模で大騒ぎす
ることであり、EU圏を中心にヒステリックに拡散するSDGsによって、二酸化
炭素は幾らでも海に溶け込むことが分かっているのに、どう考えてもエネル
ギー効率が悪い脱炭素策を進めることだと言われています。確かにこれら3
つ全てがなければモノづくりに対する大規模な資本投下はあまり起きなかっ
たかもしれません。しかし、これらも以前に比べて、その神通力を失ってき
ているように見えます。
 
 陰謀論を信奉している訳ではありませんが、このような流れは中小零細企
業経営にもさまざまな影響を与える以上、先を読むことや、先を読める後継
者を用意することは、中小零細企業経営において非常に重要です。大手企業
に比べて、機動性が主要な強みの一つである中小零細企業ですから、VUCAの
時代にあって、より戦略的な経営が求められるのは必定なのです。
 
 有難いことに、今年に入ってから新しいクライアント様との接点が幾つも
できました。今までにできていなかった体制づくりや、環境変化を追い風に
した事業拡充の取り組みなど、ご相談内容の多くはかなり前向きなものばか
りです。一方で、ゾンビ企業などと揶揄される企業群も含め、バタバタと倒
産や廃業する企業は多々あるはずですが、その敗戦処理やソフトランディン
グ策の企画立案などは殆ど戴かなくなりました。
 
 最近、世の中全体の企業群に対して、「経営の質」の喫水線が上昇してき
ているように感じます。経営の質について意識することのなかった企業群は
浸水して存在を危うくされつつあるということです。喫水よりもかなり高み
にいる企業群には沈んで消えた企業群が握っていた市場が転がり込んできま
す。面白い時代になったように感じます。
 
 今回の号は『続・池水浄化』です。第172話『池水浄化』は2007年の発行
ですから、もう15年以上前の話です。そこでは、世の中に広がり始めた心理
主義について考えてみました。最近、悪しき心理主義は再度ブームになりつ
つあるように感じられます。その一つの大きな潮流について、書きまとめて
みました。

 なお、本文では日本がデフレと書かれていますが、原稿作成段階の経済状
況を反映した内容です。論旨は海外との比較ですので、現在でもインフレ率
が先進国の中で非常に低く抑えられていて、展開の構造上、大きな問題はな
いものと考え、特に修正を施していません。ご意見・ご感想をお待ちしてお
ります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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■第172話『池水浄化』 http://tales.msi-group.org/?p=226
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その563:続・池水浄化

 ネットの記事を見ると、全世界で日本人の給料だけが上がっていないとの
主張がやたらに目につく。給料だけを見たら多分そうだろう。それも正社員
の給料だけかもしれない。EUに続々と漂着するイスラム教徒は、高い給料
を享受しているとは思えない。米国でもマック・ジョブという言葉ができて
久しい。これらの人々の給料は統計に含まれているのか。
 
 日本と比較にならないほど先進国のほぼ全てで格差は激しい。初めから大
きな所得格差があれば、社会のヒエラルキーの上部ほど所得は伸び、底辺の
大多数は殆ど所得が変わらないとも聞く。しかし経営努力を怠る会社ばかり
で、人件費の上昇分は丸ごと価格に転嫁される。物価上昇は止まる処を知ら
ない。海外の人々は、ずっと給料が上がらないのに日本人はなぜ暴動を起こ
さないのかと不思議がるとの記述も見つかる。給料が上がらなくても、デフ
レで物価は下がっていく日本の方が相対的に住みやすいのは自明だろう。
 
 多くの先進国でも消費は飽和傾向にないのに、記号論の大家ボードリヤー
ルさえ腰を抜かすほどの記号消費の粋を尽くしても、日本の消費は飽和状態
が続いている。日常に必要なものは何でも安く買える。だから暴動を起こさ
ない。そして、集団全体を見て個を抑制するために、仏教でいう「知足」の
状態に皆がなる。だから暴動を起こさない。何かと言えばすぐに暴動を起こ
し、近くにある店舗に強盗に入る口実を作る人々が先進的な社会の構成員で
あろうはずがない。心穏やかなサイレント・マジョリティが多くて何が悪い
のか。

 サンフランシスコ州立大学の経営学者にして禅僧でもあるという珍しいキ
ャリア形成をしたロナルド・パーサーは、大手企業が社内研修としてマイン
ドフルネスを採用するケースが目立っていることに警鐘を鳴らしている。マ
インドフルネスは数千年の歴史を持つ仏教などの瞑想が基になっている。座
禅を単純にしてカタカナのネーミングにしただけとも揶揄される。心が鎮ま
り、充足感溢れる社員が大量に発生する素晴らしい組織が増える。

 マインドフルネスで鎮静化して「足る」を知った人々は本来何に対して暴
動を起こしたかったのか。パーサーはその著書『McMindfulness …』で、マ
インドフルネスは従業員個人のストレス対処能力を向上させるので、組織の
問題や劣悪な職場環境の問題を、個人の気の持ちように還元してしまうと指
摘している。

 会社や学校にカウンセラーが配置されて組織運営の杜撰さを社員や生徒の
心の問題だと言い募っていた、今から20年近く前の心理主義の問題構造が進
化して再来したようだ。マインドフルネスで、会社はカウンセラーの費用さ
え削減できる。ネトウヨではないつもりだが、こんな問題においてさえ、や
はり日本は世界の最先端を行っていると痛感する。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『「運と不運」には理由があります』 伊藤由美 著
■『ドーパミン中毒』 アンナ・レンブケ 著
■『さらば、欲望 資本主義の隘路をどう脱出するか』 佐伯啓思 著
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次号予告:
 第564話 『市場の構造』 (7月25日発行) 
 プロのマーケッターと自称する人のセミナー資料の添削をしたことから、
マーケティングの基本原理の優れようについて想像を巡らせてみました。

(完)