210 美観の絶壁

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経営コラム SOLID AS FAITH 第210号
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ご愛読ありがとうございます。第210話をお届けします。

 10月も後半の号の発行となりました。10月末日は、長年の読者の方はご存知
の通り、9周年特別記念号の発行日です。8周年特別記念号同様に、全体テー
マと言うか、コンセプトを明確にして構成した内容です。弊社PR欄にコンセ
プトの概要を紹介致しましたので、是非、ご一読下さい。

 今回の話は、使い始めて33年近く経つ腕時計を修理に出した話です。壊れて
どうしようもなくなったら、諦めて新しいものにしようと思い続けて、今に至
りました。修理できる時計店も限られていて、それなりの経験のある店でしか
引き受けてもらえません。時計店店主の自分の美観への執着のあり方から、中
小零細企業のオーナー経営者の「経営の美観」への執着を連想しました。周囲
からはなかなか理解できない域に達した美観。それらはどのように形成され、
その独自性の根拠は何であるのか。

 中小零細企業を訪れると、「細かいことに、やたら拘る社長」への愚痴をよ
く幹部や社員から聞かされます。そのたびに考えてきた「美観」について考え
てみます。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感
想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その210:美観の絶壁

 自動巻きの腕時計をし始めて、32年が経った。子供の頃、面倒を看てくれ
た祖母が、亡くなる一年余り前に中学入学祝に買ってくれた腕時計を形見と思
って使い続けて来て、既にそれだけの年数が経った。5年に一度ほど分解掃除
をする。あとは平常、常に着け続けること。お蔭で時計を自分で買ったことが
ない。着け続けねば止まるので、貰い物の時計もすることができない。

 内部は分解掃除でもつが、外装の細かな傷が目立ってきて、覗き込む顔が映
るほどだった文字盤周辺の金属部分は鈍く光を放つだけとなった。日付表示が
おかしくなったので、初めての古い時計店を訪ねて、時計を預けてきた。二週
間後に行くと、時計は完璧に動き、さらに昔のままに光り輝き、金属部分に写
る周囲ははっきりと見えた。鑢の段階を変えて、何度もやるとこうなるのだと
店主が自慢気に言う。すると夫人が奥から、この人はこれしか能がないからと
苦笑した。

 勉強会での或る説明を、最近同行している弟子にさせてみたら、どうも伝わ
りが悪い。まずは原稿レベルの構成に手を入れようと、留学時代の英作文のク
ラスで習った段落の構成方法を使って改善を促した。文章は構成前に、箇条書
きで言うべきことを列記する。論理展開を考えて箇条書きの文章の順序を必要
に応じて変更する。その箇条書きの文章を肉付けして段落にする。もともとの
箇条書きの文章は極力原形のまま残して埋め込み、これをキーセンテンスと呼
び習わす。

 留学していたのは25から28までの二年半。この間にこの文章構成ばかり
練習して、幾百ものレポートも卒論もこうしてできあがった。日本語も同じよ
うに考えるようになり、高校時代に小論文の補修で習った起承転結の展開に磨
きがかかった。「分かり易い説明をする」、「面白い文章を書く」と褒めて戴
けることがある。それは多分この訓練の賜物だろう。

「文章の善し悪しは、書き手のセンスや読んできた文章によるところが大きい
のだと思ってきたが、思考の構成方法が入口にあり、それを練ることで各自の
文章のスタイルができることが分かった」。弟子の週間報告のこんな内容を読
んで、つい微笑む。

 中小零細企業を訪問すると、自社製品の品質を眼光鋭く見極める社長や、部
下の営業報告に老眼鏡の奥から厳しく見つめ、赤ペンを走らせる社長に出会う
ことがある。幹部や部下は大抵、「もともとそう言う適性が社長にはある」、
「そう言うことには、若い頃から長けていた人だから」などと軽々しく言う。
適性、才能、センス。それらが無ければ、到達できない高みにある美観をこれ
らの人々は持つという。「随分と世の中は単純にできているんですね」と、そ
のたびに笑い出してしまう。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

『経営コラム SOLID AS FAITH』創刊9周年特別記念号 発行間近!!

6回シリーズでお送りした
200話発行特別記念号同様、提携事業者、市場真理子による
「顧客との関係性」をテーマにした充実の内容。

ソリアズでも多くの原稿の核を成す“経営者との会話”。
そこに伺える市川の「顧客である経営者との関係作り」。
市場真理子が弟子として修行した期間に、
一番習得が困難と感じたと言う「顧客との関係性の構築」。

「なぜ、デブラ・ウィンガーは
 女優としてキャリア高みが見え始めた時点で引退したのか」
 
その問いの答えを求めて、女優ロザンナ・アークエットが
数々のハリウッド女優をインタビューする映画
『デブラ・ウィンガーを探して』。

女優業と母親の役割・妻の役割の両立について、
34人の女優達が生の意見を述べて、
映画は最後にデブラ・ウィンガーに辿り着きます。

『デブラ・ウィンガーを探して』に習って、
今回の9周年特別記念号は題して、『市川正人を探して』。

市川のクライアントやソリアズの読者の方々、総勢4名様の
「顧客との関係性の構築」について、延々インタビューを重ねた上で、
最後に「顧客との関係性がこの商売の総て」と言う市川に
市場真理子が辿り着きます。

例年通り、10月末日発行。
通常号に比べて数倍のボリュームの読み応え。
ご期待下さい。
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弊社代表のオリジナルブログが完成!!

 ● ソリアズのネタにもなっている留学時代の悪戦苦闘を描いた
 『 My Life In Klamath Falls 』(英文)
 ● 東京で見た映画の感想を備忘目的で書き留めた
 『脱兎見!東京キネマ』
 ● そして、勿論、弊社代表が足掛け9年書き続けて、今尚続く
 『経営コラム SOLID AS FAITH 』

 全部まとめて、ブログになりました。題して…
 MSI?TALES
 http://tales.msi-group.org/

 特に映画の感想を増量して30本文以上となりました。
 お楽しみ下さい。

使い勝手がちょっとイマイチかもしれませんが、
内容・機能性、共に発展途上中です。
カテゴリーの細かい分類が自慢です。
是非、お楽しみ下さい。
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して
 発行しています。
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毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず まる9年。

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次号予告:
 第211話 『尊属の理解』 (11月10日発行)
 タイトルの通りなのですが、子から親は理解できるか否か。根深い経営課題
の一つである親族の後継者の承継も、基本はこの問いに帰着します。久々に会
った高校時代の同級生との会話から考えてみました。

(完)