最近、以前に比べて、見に行きたい映画が増えて、まあまあ嬉しいバルト9で見てきました。
売りは、やっぱり、アンジーさんなのだと思います。かっこいいことこの上なしなのですが、何か、(当たり前なのですが)常人離れしているというか、凄さが定番になってしまって驚きがないように感じるのです。アンジーさんが、やたら強いクールビューティーを演じる映画は、『トゥームレイダー』とか、『スカイキャプテン…』などで十分と言う気がします。個人的に好きなアンジーさんの役は、『ボーン・コレクター』のもので、二番手ぐらいなら、『狂っちゃいないぜ』と『17歳のカルテ』ぐらいの感じです。
映画の面白いところは、高速で展開されるまずあり得ないアクションシーンです。しょっぱな、男が高層ビルの窓をぶち破って飛び出し、反対側のビルの屋上にいる敵数人を空中にいる間に射殺し、さらに、緩い放物線を描いて、もともと飛び出した階より一階下のフロアに窓を破って入り、さらに、屋上に上がってきて、残った一人の敵を撃ち殺す。スピンする車のドアを開けて道路にしゃがみこんでいる主人公を拾う。電車に乗っている主人公を救うために、アンジーさんがその走っている電車に車で突っ込んで、車が電車に突き刺さった状態から乗り移るなど、連発で出てきます。
ただ、このような特撮表現や設定の技が何となく、どこかで見たような感じで、新鮮味が感じられないのは、残念です。例えば、銃弾の軌跡をスロー画像で追うシーンは、当然、『マトリックス』を連想させます。ポスターやトレーラーにも使われているように、アンジーさんが高速で走る車のボンネットに仰け反って銃を連射するなどのシーンも、不自然な格好でのアクロバット的銃撃戦のスロー画像と言う意味では、かなり『マトリックス』的です。
そんな風に思い始めると、何でもそんな風に思えてきます。上述の列車のシーンは、往年の『カサンドラ・クロス』や、スティーブン・セガールの『沈黙のナンチャラ』のようでもあります。さらに、穿ってみると、銃弾の軌道を曲折させると言う、主人公が修行の末、身につける能力は、コブラのサイコガンのようでもありますし、狙撃してくる銃弾に銃弾をぶつけて防ぐなどは、ルパン三世の次元とか、ジョジョの奇妙な冒険に出てくる人気スタンド遣いのセックス・ピストルズを連想してしまいます。それを実写でそれらしく見られるのだから、それはそれで楽しいのですが、どうも、そういうネタに頭が行ってしまうのです。
アクションシーンとかっこいいアンジーさんと言う要素なら、まあアリかなと言う映画ではあるのですが、一つだけ、ちょいと気に食わないことがあるので、DVDは買わないと思います。その気に食わないところは、やたら大音響ではいるメタル系(またはハードロック系)のサントラです。特に、覚醒していない主人公の日常を描く冒頭のシーンで、カメラが引いて遠景に入った瞬間に、いきなり流れ出す曲は、「おいらは、未来が見えると信じてたぁ」(王様風直訳)とか言う間の抜けた歌詞で、これが大声で叫ばれると、興醒めしてしまいます。その他の曲も、結構抜けた歌詞を大声で叫びますし、そうではない場合も、でかい音量で結構邪魔です。(歌詞の間抜けさはさておいて)この手の音楽自体はきらいではないのですが、目立ちすぎている気がしました。
映画館を出ての帰路、ふと気づくと、口ずさんでいたのは、ドゥーリーズの30年ぐらい前のヒット曲、『Wanted』でした。当時、好きで好きで、毎日歌っていましたので、無意識のうちに記憶から引きずり出したのだと思います。