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経営コラム SOLID AS FAITH 第560号
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ご愛読ありがとうございます。第560話をお届けします。
テレビの報道系の番組で「5月病」の解説コーナーが設けられるほど、GW
明けから精神を病む人々が増えているようです。4月からの新生活に馴染め
ないままに迎えてしまったGWが明けると、新たな生活に心が向き合うこと
ができず、「5月病」が発生し、人によっては、各種症状がさらに嵩じて、
適応障害や鬱に至るようです。
数年に渡って続いた行動制限も解除され、マスクは要らなくなり、リ
モートで働けたはずの職場にも出社しなくてはならなくなった人が多いと言
います。特に過去1~2年の新卒入社者であれば、学校にも通学しない時期が
続き、就職してからもリモート業務が殆どというケースも多かったと、先述
の複数の報道系の番組は説明しています。GW明けと同時に通称武漢ウイルス
感染症が5類扱いになり、一気にリモート業務を減らした企業も多いようで、
通勤ラッシュを初めて毎日することになった人々がかなりの数存在するとも
説明されていました。そのような背景から精神を病む従業員が発生しないよ
う「ワーク・ライフ・バランス」を実現しなくてはと意気込む中小零細企業
の話を耳にします。
19世紀末に社会学の基礎を作り上げたデュルケームは、大量の自殺事例を
綿密に調べています。彼の研究の重大な発見の一つに束縛のプラス効果があ
ります。社会的な束縛や絆や義務が少ない人ほど、より自殺する率が高かっ
たのです。デュルケームは、人には人生に意味と構造を与えるために、義務
と束縛が必要であると結論づけています。彼の説の正しさは、現在に至って
も科学的に証明され続けています。強い社会関係を持つことは、うつ病や不
安障害に対するリスクを軽減すると言われています。
勿論、過労で心身を病むような状況は論外ですが、どうも「5月病」対策
の主軸が労働時間の削減や休養を取ることではなさそうに感じられます。一
方で、米国では反動が起きて就労者の数が上昇しつつあると言われるグレー
ト・レジグネーションの影響なのか、最近は離職率抑制のご相談もよく受け
ます。「5月病」対策も含め、離職率抑制については、人間の無意識の構造を
無視した極めて表層的な対応策が流布されています。中小零細企業の現場で
実現する身の丈の労働力確保にお悩みでしたら、是非ご一報ください。
今回の号は『瓢箪とラグビーボール』と題して、中小零細企業組織の貴重
な労働力であり、価値あるノウハウの器でもある人材について、その性差の
現実を考えてみたものです。ジェンダー論はあちこちで聞きますが、遺伝子
レベルで人間がどのようにできているかを無視した考察や対応策は、早晩破
綻してしまいます。人材採用から動機づけ、定着、育成まで、人材管理を考
える上での重要な切り口について、一緒にご一考賜れたら幸いです。ご意見
・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期
は5営業日!!
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その560:瓢箪とラグビーボール
「ああ。それ今聞く?じゃあ、15分ぐらい時間を貰うけど説明しようか」。
零細企業の30代前半の中堅社員が「市川さんは、何で製造業のウチのよう
な会社に『女子を雇う』って言い続けるのか、教えて貰えますか」と尋ねる
ので、説明することにした。
会議室のホワイトボードに向かって、一象限しかないグラフの縦軸と横軸
を取って、その中に大きな瓢箪型の形を左に、大きなラグビーボールの形を
右に並べて縦に描いた。
「これ、人口統計とかの『釣り鐘型』とかいうようなグラフがあるでしょ。
ああいう感じ。縦軸は測り方は分からないけど、『優秀さ』とか『能力』の
ような感じで、上側が当然高い。横軸はさっき言った通り、幅が広い所が人
口の構成が大きいということ」。
彼が「何が起きるのか」と私を見つめているのを確認して、「それでさ。
この瓢箪型の方が男。ラグビーボールの方が女。何を言いたいかもう分るね」
と私は言った。私はこの図をどこで知ったのか全く覚えていない。ただ、或
る程度多様な母集団をきちんと取ると、男女の分布はこのようになると何か
の講義で聞いた時の衝撃の大きさ故に、この図を忘れることがない。瓢箪の
上の膨らみはかなり小さく、下は異常なほどに膨れている。
横軸に平行な線を棒高跳びのバーのように上げていくと、上部では瓢箪の
上の膨らみと僅かにラグビーボール上端がバーの上に残る。「この線の上に
残った部分は大手さんの採用ね。好き放題採用できるから、上から採るで
しょ。だから、男の方が多くなるし、平均的に優秀になる。けれども…」と
私が言うと、彼が「残った人材から採用する無名の小さな会社は女子の方が
圧倒的に優秀」と容喙した。
「そう。人口が固まっている所に着目するとさ、全部の人材は、「少数の優
秀な男」、「普通の女」、「たくさんのダメな男」の三種類にモデル化でき
ることになるね。極論だけど」。
私がニヤニヤしながら言うと、彼は頭を抱えて「身も蓋もありませんね」
と呟いた。
今尚「やはり男じゃないとこの仕事はダメだね」と全ての職種の採用に当
たる経営者によく遭遇する。一方で「男女って特に能力差とかないじゃない
ですか。平等だから」と今時あり得ないぐらいの非科学的なことを言い出す
女子大生もそれなりにいる。
生殖器官どころかホルモンから視神経の構成まで男女は全く違う。名著
『できそこないの男たち』によれば、安定生産されるメスに対し、オスは良
品が稀な間に合わせ品だ。それでも仕事はできる人間が多い方が良いから、
性差が現れないように設計する。能力が高い方から雇うから無名組織では女
子採用が多くなる。全て合理の範疇と思っている。
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『アドテクノロジーの教科書』 広瀬信輔 著
■『奇子(全二巻)』 手塚治虫 著
■『努力不要論…』 中野信子 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
MSIグループ 市川正人
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次号予告:
第561話 『鳩穴の人々』 (6月10日発行)
かなり知られるようになって来たダンバー数と、人々のつながりの種類で
あるウィーク・タイズの関係を考えてみた意欲作です。ご期待ください。
(完)