559 ラブ&ピース

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経営コラム SOLID AS FAITH 第559号
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 ご愛読ありがとうございます。第559話をお届けします。

 人によってはかなり大型連休になったはずのGWも終わりました。GWのアポ
の無い日を利用して、以前から積み残し作業となっていた商圏調査を二件、
各々半日を投じて行ないました。一つは山手線沿線の駅の住宅街、もう一つ
は小田急線沿線の住宅街です。最寄駅、商店街、住宅街などの位置関係を確
認しつつ、そこに住む人々の移動の流れやライフスタイルなどを把握するよ
うな作業です。

 一件はこれから出店が検討されるエリアで商圏の物理的な広がりを調査す
る目的で、もう一件は既に店舗が数ヶ月前にできた後のターゲット・カスタ
マーの見直しから始まる集客強化が目的です。外国人観光客でごった返す新
宿駅から移動してみると、打って変わって地域住民ばかりではありましたが、
商店街は来街者がやたらに多く、賑わいを見せていました。地元商店街とは
言え、通称武漢ウイルス禍下での人出はどのようなものだったのか分かりま
せんが、少なくとも現在その翳りを見ることはありませんでした。
 
 世界的な不景気が来るとの噂は未だに飛び交っており、リーマン・ショッ
ク以来の大恐慌が来ると説く評論家もいます。多くの先進国は、経済や社会
の地盤沈下があからさまになりつつある今、ジワリとではありますが、国内
にはそこここに明るさが見えて来ています。年末から年度末の倒産や廃業ラ
ッシュも一段落しています。今年ももうすぐ前半が終わりますが、VUCAの時
代の真只中であるからこそ、機動性と差別化がウリの中小零細企業には、
「(正しいとは言えなくても)間違っていない一手」を打ち続けて、今後の
飛躍を目指すタイミングに見えてなりません。
 
 今回の号は『ラブ&ピース』と題して、中小零細企業組織の結束のありか
たをぼんやりと考えてみた内容です。本論部分は最後の数段落で、前置きに
は色々な話を盛り込みましたが、串刺しにして繋いでいただくと、家族型経
営についてのプロコンが少々見えてくるものと思います。ご意見・ご感想を
お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その559:ラブ&ピース

「オキシトシンは共感に関わる神経伝達物質で。『愛と絆のホルモン』とも
呼ばれる。女性では子宮頚部への刺激によってオキシトシンが分泌され、性
交でオーガニズムに至ると相手への愛着が形成される(男性では射精時に分
泌される)。妊娠した母親の脳は高濃度のオキシトシンに晒され、出産時に
は子宮頚部が強く刺激されることで大量のオキシトシンが放出される。オキ
シトシンは授乳によっても分泌されるから、これによって母と子の愛着が
『生理学的に』つくられていく。
 恋人同士や親子だけではなく、オキシトシンは他者との共感もはぐくむ。」

 橘玲による『バカと無知…』の一節。この後、橘はオキシトシンが匿名の
他者相手でも信頼感を生んだことを示す実験などを紹介してから付言する。
「社会には生得的に共感力が高い者と低い者がいて、幼児期に環境の影響を
受けたとしても、思春期以降はその傾向はほぼ変わらない。オキシトシンの
濃度は女が高く(共感力も高い)、男が低い(共感力も低い)という性差も
顕著にある」。

 問題はこの後だ。橘はオランダの心理学者ド・ドルーらのトロッコ問題を
使ったオキシトシン効果の実験を紹介する。それによれば、共感の範囲は自
グループ構成員のみに対してで、結果的にそれ以外に対しては排他的になる
のだという。ド・ドルーらは「オキシトシンは内集団びいきの郷党的な利他
主義者にする効果がある」と結論したという。

 遥か昔、私が敬愛する唯一の芸人のタモリは「愛と平和」という表現はお
かしいと宣っている。愛すると愛する人々だけを大切に思うようになるから、
愛情の対象者のために利害が対立し平和にならない。愛は結局拘りで、その
意味で憎しみに近い。当時の私は、そんなことを考えたこともなく、この考
え方に衝撃を受けた覚えがある。「博愛」の概念さえ元来革命後のフランス
国内の話ではなかったか。浅学な私はその検討を哲学者や社会心理学者に任
せたい。ただただ「愛憎紙一重」とは全くよくできた表現だと嘆息する。

 或る零細企業の社長と歓談した。彼は同族経営の弊害を危ぶみ、自分の一
族郎党、全員を会社に関わらせていない。そして、社員を家族のように思っ
て大切にしたいという。

「なるほど。確かに社員は大事に育てて行かねばならないですからね。けれ
ど家族と違って社員は処分したり罰したりする場面もあります。厳しいこと
を迫っても“家族だから社長の言うことを信頼して受け容れよう”と思う社
員はどれほどいるんでしょうか。それに、皆で連帯すればしたで今度は身贔
屓でコンプラ違反に走るかも。どうなんでしょうね」。
 共感や連帯のある零細組織が強いことを私は知っている。けれども少々危
惧もある。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『誰も書けない「コロナ対策」のA級戦犯』 木村盛世 著
■『図書館利用に障害のある人々へのサービス 上巻 補訂版』
  日本図書館協会障害者サービス委員会 編
■『仮面ライダー昆虫記 新装版』 稲垣栄洋 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 MSIグループ 市川正人
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次号予告:
 第560話 『瓢箪とラグビーボール』 (5月25日発行) 
 中小零細企業の新卒採用の現場で職業能力分布の性差についての考え方を
検証してみました。ご期待ください。

(完)