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経営コラム SOLID AS FAITH 第557号
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ご愛読ありがとうございます。第557話をお届けします。
今年も1年の4分の1が終わって4月に入りました。巷間ではChatGPTが話題
となっています。まだまだ誤った回答をしてくるケースも多く、回答の検証
を色々な人々が試している段階とみることができますが、本体の学習や進歩
と相俟って、使う側の用途についての研究が重なれば、ここでもまた人がや
るべき仕事が大きく減る可能性が生じそうです。
少々前はRPAが事務作業を大幅に削減すると喧伝されていました。さらに
その前にも、各種の技術が企業の現場を変えると言われてきました。中小零
細企業の現場で見ていると、それほど大きな変化は起きていません。
ICTのリテラシーの問題と括ってしまえば早いのかもしれませんが、「ど
のような課題解決の方法論があるか」、「その方法論を自社に合った形で実
現できるのはどのソリューションか」、「それは自社で使いこなせるのか」、
「その導入はどのように行なうのか」、「その結果、組織のオペレーション
はどのように変わるのか」などの疑問の答えがきれいに揃うことがないのが、
ICT技術活用が進まない最大の原因であろうと思われます。
そのようなソリューションを展示会などで見て回っても、デモが大分重視
されるようになってきていますが、それでも、その場で自社導入に関する質
問の答えが明示されないケースは散見されます。ICT技術を普及させる側で
市場ニーズの把握がまだまだ進められていないように思えることがよくあり
ます。
一方で活用側には、活用をするための従業員教育が必須です。単なる自動
化や省力化は、同じソリューションの導入で、どこの会社でもできてしまい
ます。自動化や省力化によって、自社の独自の強みをより明確に顕現させる
方針を決め、それに従って、従業員を強化することになるでしょう。
ChatGPTのようなツールまで登場した結果、徐々に人間のできることは、改
善や創造、交渉、そして、雑多な総合的作業のような分野に特化して行くこ
とでしょう。業務のどの部分を人間に残し、トータルでどのような自社の強
みを作るのかを、中小零細企業でも今まで以上に真剣に考えねばならなく
なって行きます。
今回の号は『ガチャの元凶』と題して、最近発展が著しい遺伝研究の成果
に対する人々の姿勢を考えてみました。採用面接では、「本人に責任のない
事項」や「本来的に本人の自由であるべき事項」についての質問をしてはい
けないことになっています。前者には家族環境などが含まれますし、後者に
は本人の宗教や人生観などが含まれています。もし多くの事柄の遺伝的に決
まる要素が大きいのなら、何でも「本人に責任のない事項」になりやすくな
り、その仕事への適性さえも遺伝の結果として把握できるような考え方に
なってしまう可能性があります。
仕事が「できる」、「できない」は、何によって決まるのか。企業にとっ
て従業員の望ましくない状況は誰のせいであるのか。そんなことを一般に流
布している「親ガチャ」的遺伝観に従って、ご一考いただく材料としてお楽
しみいただければ幸いです。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴し
たご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その557:ガチャの元凶
私の知っている或る女性は26歳、外資系企業の秘書。職場の男性と結婚し
たいと両親に告げたら、両親はその男性についてこう述べた。「母子家庭の
子供は犯罪者になる」、「日本の大学を出ていない人間は日本の社会では
やっていけない」、「サラリーマンは社会に何も残さず、何も貢献しない屑
のような存在である」。その男性が礼を尽くすべきと考えて挨拶に行くと、
「おまえとは土壌が違うのが分からんか。娘には大学教授との縁談話だって
あるんだ」と両親は激高した。父は大学教授、母は小学校の臨時教員だった。
母子家庭で育った子供が罪を犯す確率がそれ以外より多いのは一応尤もら
しい。日本の高偏差値大学を出ていないと、日本の比較的富裕層の相互扶助
組織に加わることが難しいのは間違いないだろう。一般的に大学教授の方が
一サラリーマンよりネット上に名前が残りやすく、社会への貢献が見え易い
のは確かだろう。両親の発言内容は、事実関係として見たら、一部妥当な論
点を含んでいると男性は考えた。両親はその後、彼女の勤め先の社長の自宅
に直談判に行き、男性を興信所に一週間に渡って尾行させ、会社の入口での
妨害ビラの撒布まで画策して結婚に反対した。彼女は家を出て男性と結婚し
た。
ネットのニュース記事の中に鴻上尚史の人生相談が時々混じり込んでいる。
「受験を控えていますが、この顔で大学に行く人生は嫌です」と題された相
談を18歳の女子高生が持ち込んでいた。彼女は自分の顔がブサイクであると
感じ続けており、美容整形手術費用を出すよう親を説得したが失敗し、過去
に自らをブサイクと評している鴻上尚史に親を説得してもらいたいと願って
いる。「親に高額な請求をしていることが一般的ではないとわかっています。
しかし、普通から外れた顔に産むのは子どもに重い不幸を味わわせるもので、
その不幸を避けられる方法があり経済的にも可能なのに放置するのは『愛し
ていない』と同義に感じます」と彼女は言う。
遺伝の研究が進み、それがネットの記事や新書のネタになると、遺伝の影
響についての不正確な理解が広がった。儘ならない人生を親からの遺伝の結
果と考え、「親ガチャ」と呼ぶ人々がいる。親ガチャを認めるなら、その親
も「親ガチャ」を嘆き呪わねばならない。
どこの段階の親が誤って「親ガチャ」が発生したのか。数億年遡って調べ
れば、元々人間にならずにミミズへの進化の分岐もあったろう。ミミズなら
雌雄同体なので性差別がない。一度のセックスで両者が産卵できる。目がな
いのでルッキズムも関係ない。食べ物は当に「恒河沙」どころか無限大に近
い量が常に身の周りにあって飢える心配も全くない。脳もないので人類が抱
えるような問題に苦悩することもない。自分の不幸の元凶をフェアに追及す
るには、ネット投稿どころではない程の膨大な時間が要りそうだ。
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『おとなの教養 私たちはどこから来て、…』 池上彰 著
■『新世紀のコミュニズムへ 資本主義の内からの脱出』 大澤真幸 著
■『9割の社会問題はビジネスで解決できる』 田口一成 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
MSIグループ 市川正人
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次号予告:
第558話 『被暗示性』 (4月25日発行)
中小零細企業の現場にも応用できる色々な理論や説があります。しかし、
それらには異論や疑義が提示されていることがあります。割れ窓理論とマ
シュマロ実験を題材にして、そのような考え方の有効性を少々考えてみまし
た。
(完)