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経営コラム SOLID AS FAITH 第554号
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ご愛読ありがとうございます。第554話をお届けします。
前号は『文字表現』と題して文章を手で書くことに着目し、文字を丁寧に
書こうとするだけでも、脳の空間認知能力を鍛えることになるという話を紹
介しました。その後、読解力に関するシリーズ記事を書く機会がありました。
とうとう中小零細企業が本気に人を育てなくてはならない時代が到来したと
改めてその記事を読み直して痛感しました。
大手企業に比べて、結果的に中小零細企業は人の質で勝負しなくてはなら
なくなり、その傾向は今後もっと強まって行くでしょう。しかし、少なくと
も読解力の面からの評価軸で言うなら、社会の中の読解力が低い人ほど、求
人力の高い大手企業や有名企業から閉め出されて行きますから、求人力が低
い中小零細企業にこれらの人々が、語弊を恐れず言うなら、吹き黙ってくる
社会構造になっています。読解力が高い人間が集まる大手企業では読解力の
高さをウリにする必要が相対的に低く、人の質(や人の動かし方)で勝負す
る場面が多い中小零細企業には、かなりラジカルな対策を打たない限り、読
解力の低い人間ばかりが蓄積される。このような皮肉は他にそう簡単に見つ
かるものではありません。
この構造に真っ向向き合うことを決断できた中小零細企業が、生き残りの
可能性を大きく広げることになるのだろうと思えます。その認識がぼんやり
あるオーナー経営者は増えているように感じますが、その会社の採用活動も
育成活動も、到底事業の一部とは言えないぐらいの、場当たり的で非合理的
な計画に基づいているケースが殆どです。「知識社会の到来」などと巷間で
言われるのを、あまり真に受ける必要はないように思えますが、それでも経
営に関しては「現場・現実を合理的に考え直すこと」が今まで以上に求めら
れそうに思えます。
今号『無機的変異』は、人間の思考と実践を必要としない現場の形が、ジ
ワジワと世の中に広がっている様子について考えてみた内容です。読解力の
問題と関連付けながらお読みいただけると、より興味深く感じられるかもし
れません。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへの
お返事の目標納期は5営業日!!
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その554:無機的変異
「ああ。中国共産党が外国の会社を接収するって。接収って、はっきり言っ
て横取りすることでしょ。だから日本の企業もどんどん撤退して国内に回帰
してきていると聞きますよ。けど、中国でやっていたような所謂“量産品”
なんて、ウチみたいな零細の製造業がもうやることじゃないと思うんですけ
どね。折角育てた現場力が活きませんから」。
或る小規模製造業の社長が私に言う。通称武漢ウイルスの全世界的蔓延と
宇露戦争のせいで、グローバル経済はあちこちが綻んでブロック経済に再度
移行しつつある。各国が以前に比べて相対的に自給自足体制を取らねばなら
なくなって、国内市場を相手にしていた企業群の中には需要が急増している
ケースが散見される。
「そうですよねぇ。ベルトコンベアでダラダラ作っていたら、仕掛品が膨大
になって資金繰りが大変でしょうし。受注の多い多品種小量生産にはやっぱ
り育成が効いた社員がセル生産みたいな感じで工夫を凝らしつつやるのが究
極の答えですもんね」。
私が応じると社長は「まあねえ」と笑って頷いた。
或る清掃道具のメーカーで営業管理者の勉強会を開いていたら、雑談の中
で参加者の誰一人としてQC活動を知らないことが判明した。管理者の彼らは
自社の工場にも物流センターにも時々訪れている。柔軟な組織運用が為され
ていて、製造の繁忙期には箱詰めや棚卸を営業担当者が工場や物流センター
で手伝うこともあるらしい。それでも、製造現場における品質改善の概念も
QC活動も、そして「小集団活動」などの言葉さえ知らなかった。
QCサークル指導士の資格を持つそのメーカーの工場長に、QC活動を全く知
らない営業管理者たちの話を振ってみると、驚きの答えが返ってきた。
「まあ、知らないでしょうね、彼らは。けど、市川さん。大手さんでもそう
いう活動を止めて行っているらしいですよ。作業を標準化して管理する観点
からすると、現場作業者が色々考えて何かを変えるのは、簡単に言えば、今
までの“まあまあなやり方”を、素人考えで壊してしまう可能性がある訳で
すから。そんなことに時間を投じるかという話です」。
「量産ラインで機械がバンバン作業を行なっていればそうでしょうが、人間
の関与の大きな生産工程ならどうでしょうか」と私が問うことは時間切れで
叶わなかった。35万人の職員を有する電話会社で学んだQC活動はまだろっこ
しく嫌いだった。しかし社員一人ひとりの現場力を高める意義は大きいと思
う。
事務作業でも生産性向上が叫ばれ、RPAが人の仕事を奪っている。生産性
向上も品質改善も新商品開発も、人間の研ぎ澄まされた無意識が生み出すと
私は認識している。
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『小さな豆屋の反逆 …』 池田光司 著
■『「日本型格差社会」からの脱却』 岩田規久男 著
■『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』 宮口幸治 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
MSIグループ 市川正人
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次号予告:
第555話 『インビジブル・レイン』 (3月10日発行)
霧雨が降る日のスタバで人間が提供すべきサービスの維持管理を行なう難
しさについて考えてみました。ご期待ください。
(完)