549 続・終着駅の風景

==================================
経営コラム SOLID AS FAITH 第549号
==================================

 ご愛読ありがとうございます。第549話をお届けします。

 当コラムの今年の発行は今号も入れてあと二回となりました。年末に向け
て、いつもの如く倒産が増えてきたとニュースが報じています。特に今年の
暮れから来年春までは今までにないぐらいのペースになるとの予想も成り立
ちます。元々オーナー経営者が高齢化しているのに後継者が見つからず廃業
というパターンはどんどん増えています。廃業ではなく、ここに至って倒産
が増加傾向です。

 倒産の理由の一番は通称武漢ウイルス禍疲れでしょう。終わりが見えない
得体の知れない疫病の噂に対策を強いられるのはどこも一緒ですが、人々の
行動変容でビジネス・モデルの存続が困難になった事業者は多数いることで
しょう。そして、通称武漢ウイルスへの公的対策である補助金はきちんと使
っていなければ年度末に大きな課税が待っています。同じ公的対策の緊急融
資はそろそろ重い返済が始まります。
 
 おまけに本来オカミに納めるべき消費税を零細事業者はポケットに入れて
も良いはずだったのに、「やはりちゃんと納めなさい」とオカミのお達しが
下りかけています。「カエサルの物はカエサルに」に納得できず、「零細事
業者を保護せよ」と叫んでいる人々がいますが、益税の特権がある方が僥倖
だったと諦めるべきでしょう。
 
 急激な環境変化に機動的に対応しなくてはならないのに、今尚のんびりと
PDCAだのと言っている企業。受注ができない営業行為を漫然と繰り返しては、
「継続することが大事」ぐらいにしか考えていない零細事業者。次々と店舗
スタッフに見透かされ見放されているのに、女子スタッフにモラハラやセク
ハラを止められないオーナー経営者。業務の優先順位も利益構造も分からな
い女性担当者に阿て、利益を喪失し続ける経営者…などなど。最近見聞きし
た中でも、経営状況が悪くなる要因は、大抵組織内に見つかります。先日、
弊社代表の市川は、雀鬼、桜井章一の薄い本を読みましたが、タイトルが
『勝とうとするな 負けの99%は自滅である』です。廃業で留まることがで
きず、倒産にまで至る中小零細企業の経営にもそのまま当て嵌まるような言
葉に思えます。
 
 お客のニーズを捉えて、機動性高く凡事徹底を重ねれば、生き残りは難し
くないことでしょう。中小零細企業の経営の原理は至極単純で、手抜きをし
なければ誰でもできます。そこにきれいごとの理念だの青臭い志だのも要り
ません。当たり前のことを必ずやるだけで結果は出ます。「PDCAを1度回す
ぐらいなら、『仮説と検証』のサイクルを2度回せ」は、市川がよく言う言
葉ですが、その市川は最近OODAループに着目しているようです。お客様満足
の実現に機動性高く凡事を徹底する。その実現が今ほどすべての企業に容赦
なく求められたことはなかったように思えます。

 今回お届けする『続・終着駅の風景』は、当コラムにしては珍しく、中小
零細企業の現場が登場しない話です。日本経済の「消費の飽和」について、
考えてみました。ネットでよく言われている「日本は終わっている論」とは
全く異なる視点をお楽しみください。ご意見・ご感想をお待ちしております。
頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

==================================

その549:続・終着駅の風景

「片田舎まで続く舗装道路、都会では手の届かないような立派な住宅――東
京にくらべ、はるかに豊かになった地方。“日本は遅れている”というマゾ
ヒズムはもうやめにしたい。先進諸国では『失業と飢えの恐怖』がなくなる
や、人々は働かず文句ばかりいうようになった。こうした産業社会の病理=
先進国病を、日本は免れうるか。『豊かさ』を支える日本人の活力を自助努
力の精神と真面目さにさぐり、内外の情勢の中に日本の針路を位置づけた。
日本人の“常識”をくつがえす異色の経済社会論」。
 中学校の頃から面白くて貪り読んだクリーム色のカバーが目印の講談社現
代新書。その中でも飯田経夫の著書はお気に入りで、第一作『「豊かさ」と
は何か』のカバーに書かれた文章は、彼のシリーズを貫く思想を簡潔に表現
している。
 
 彼が講談社現代新書で出した著書は四作ある。17歳の時に見つけた1980年
の『「豊かさ」とは何か-現代社会の視点』を皮切りに、1982年の『「ゆと
り」とは何か-成熟社会を生きる』、1984年の『「豊かさ」のあとに-幸せ
とは何か』と続く。既にGNPやGDPでは測れない豊かさの検証が為されている。
電話会社の局内技術者として働いている中、ミクロもマクロも知らない経済
学に関心が持てたのはこれらの三冊の御蔭だったろう。その後、米国に私費
留学して休みに帰国してバイトに励んでいたら、書店で第四作目『日本経済
ここに極まれり』を見つけた。バブル経済真只中でその後の豊かさのありか
たを模索していた。
 
「これも仮説ですが、日本が成長できないのは、優秀な経済学者がいないか
らではない。(中略)その理由としてひとつ考えられるのは、皆がアイパッ
ドを2台持っていて3台目はタダでも欲しくないような状況にあること。つま
り、「黄金の天井」説です。(中略)見方を変えれば、これは資本主義の終
着点に到達したということですよ」。
『欲望の資本主義』という本の中に見つけたチェコの経済学者セドラチェク
の台詞。

 AIDA・AIDMAがAISASに遷移しても広告はその神通力を失い、いくら刺激し
ても消費は伸びなくなってきた。個々人が欲しいものを見つけにくくなった
のはセドラチェクの指摘通りだろう。シェアード・エコノミーもC2Cも、個
人消費を総じて縮退させるだろう。

 経済成長が要らないとは思わない。まともに自立した国なら防衛力も今以
上に必要だろう。まともな教育をするなら、子供達に配ったタブレットから
吸い上げた情報を米国や中国のサーバに送り込まず、自前のサーバ、自前の
ネットワーク、自前の技術者で実現したらいい。医療も福祉も教育もまとも
にするにはカネが要る。「国は子供一人生まれたら1000万円渡せばよい」と
の声もある。それなら確かに子供も増えて消費も刺激されるかもしれない。
黄金の天井の下に暮らす知足の人々の家は、実は多層階だったのだろう。
 
==================================
☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
==================================

【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『これでいいのか北海道 まちの問題編』 昼間たかし・鈴木ユータ 編
■『ローカリズム宣言』 内田樹 著
■『勝とうとするな 負けの99%は自滅である』 桜井章一 著
==================================
発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ ) 

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け24年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
★弊社代表のコラムが色々満載。
 ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
 http://tales.msi-group.org/?cat=2
★講読の登録・解除はこちらのURLでお願いします。
 http://msi-group.org/msi-profile/saf-index/
==================================
諸般の都合から「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸による記事は
掲載を中止いたします。ご了承をお願い申し上げます。
==================================
※ ご注意!!
 サーバのエラーなどで読者登録が解除されてしまった方がいらっしゃる様
子です。当メルマガは毎月10日・25日に休まず発行しております。発行状況
のご確認は上述の弊社ブログにて行なってください。
 また、まぐまぐからの連絡によると、一部フリーメール運営企業でサーバ
の受信量規制を行なっているケースがあり、その場合は大幅にメールマガジ
ンの到着が遅れるとのことです。
「届かない」、「再送希望」などの連絡は、まぐまぐの窓口である
「magpost@mag2.com」に、メルマガID(#0000019921)、タイトル(『経営
コラム SOLID AS FAITH』)、購読アドレス、再送希望の旨を記載の上、
メールにてご連絡下さい。
==================================
次号予告:
 第550話 『続・意見の伝達』 (12月25日発行) 
 語彙から規定される思考のありかたについて考えた第12話『意見の伝達』
から22年以上が経って、改めて当世の語彙と思考について考えてみます。

(完)