『七人の秘書 THE MOVIE』

 10月7日の封切から1ヶ月弱が経った11月の第一水曜日の新宿ピカデリー。1日2回の2回目15時45分の回を観て来ました。新宿では3館でやっているものの、他の2館は1日1回です。大分、人気に陰りが出てきているように感じます。封切時は一応鳴り物入りのレベルだったように感じますが、1ヶ月経たないうちに、上映館数は維持しているものの上映回数がここまで減っています。

 シアターに入ると、約30人の観客。女性比率がかなり高く6割以上で、制服姿のJK二人連れもいれば、後期高齢者もいるぐらいの感じでした。男性客は殆どが単独客で、高い年齢に偏っていました。私は若い方だったように思います。

 私がこの映画を観ようと思った動機は、自分でも明確に分かりません。多分、木村文乃が気になっていたからかと思います。以前の『ザ・ファブル』の感想で私はこのように書いています。

「木村文乃の存在です。注目の理由は当然最近ドラマで嵌っている『SICK’S 恕乃抄 ~内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~』シリーズの主人公のスペック・ホルダー(=超能力者)御厨静琉です。ただ、元々ファンだった『SPEC 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿』シリーズに比して、何かマンネリ感や冗長感があり、嫌いではありませんが、パワーダウン感が否めません。それは多分御厨静琉のキャラが立っていないことにあるような気がしています。女優としての木村文乃の力量の問題ではなく、台本上の設定の問題であるように思えますが、いずれにせよ、私は『SICK’S 恕乃抄 ~内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~』シリーズで木村文乃を注視している状態でした。

 最近DVDで観た『体操しようよ』でも父を見捨てる娘という名脇役で登場します。私が彼女を明確に認識できるようになったのは、DVDで観た『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』で、その後、これまたDVDで観た『伊藤くん A to E』で完全に全身イメージ的に記憶することができ、そこへ、『羊の木』の名演と『体操しようよ』の好演で、はっきりと記憶に残るようになりました。(ただし、私は画像記憶ができないので、あくまでも比喩的な表現として書いています。)しかし、これらの出演作に比べても、この作品での方が、木村文乃は光っているように感じました。主人公の岡田准一程ではありませんが、かなり際立ったおかしなキャラを違和感なくスクリーン上に描きだすことに成功しているように思えます。」

 その後、『ザ・ファブル』では、大活躍で(画像記憶ができないのでよく分かりませんが)キャットスーツ系の恰好でのアクションもあれば、俄か関西弁のギャグもあれば、有能でクールな暗殺者フォロー役もあれば…と、元々芸達者で色々な役をこなせることが分かっていますが、この作品一本で幅広い木村文乃のバリエーションが楽しめます。この木村文乃は大好評だったのか、DVDで観た続編ではさらに活躍場面が増え、単独行動で堤真一に事実上の磔にされたりしていて、スカヨハのブラック・ウィドウ並みの扱いになってきているようです。今に彼女を主役にしたスピン・オフさえ期待しても良いかなぐらいに思えます。作品そのものでは、私は第一作の方が好きですが、木村文乃の活躍シーンを楽しめるという物差なら続編に軍配が上がるように思えました。

 その後、さらにDVDで観た『居眠り磐音』でも名演技炸裂で、脇役ながらかなり印象に残ります。主人公に対する滲み出てくる片想いが表現されています。そのDVDレンタルの際に、木村文乃で検索してみて、ドラマの『殺人分析班』シリーズの存在を知りました。それで、『石の繭』、『水晶の鼓動』、『蝶の力学』の三シリーズを観ました。シリーズを重ねるごとに、主人公の新米刑事の如月塔子が成長して行き、捜査班を率いるぐらいになって行きますが、その遷移に全く無理がなく、その都度、見入ることができる作品群です。そんな中で、9月に『よだかの片想い』を札幌の狸小路で観た際に、木村文乃が雨の中突っ立って観る者を凝視しているビジュアルのチラシを観て、やたらに『LOVE LIFE』を観に行きたくなりました。

 しかし、123分の尺に躊躇して他の短い作品を優先していたりする間に、あっという間という感じで、上映館が減少して行き、おまけに上映回数も減少して、23区内でギリギリ観に行けるかどうかの上映館が有楽町で、それも終映までのほんの2日ぐらいしかチャンスがない状態になっていたのです。結局、仕事が入ってそれらのチャンスを逸することとなり、10月になって、完全に観る機会は失われました。そんな木村文乃を観たい気持ちの代替案的な位置づけで、本作を観ようかなという気持ちが少々生まれました。

 それで、予習をしようかとドラマ版の方のDVDをレンタルしてみようかと思ったところ、なんと通常のドラマも、スペシャル・ドラマも、スピンオフ・ドラマも、どうもDVD化されていないようなのです。逆にDVDを数話観てイマイチハズレだったら、映画はパスしても良いなと思っていたのですが、判断材料がなくなって、いきなり映画を観るしかなくなってしまいました。ネットでこの作品の物語設定などの情報を見てみると、何人か七人の秘書の中に観てみたいと思える女優さんが居て、まあ好とするかと決断できました。

 まず菜々緒です。会社系のドラマは仕事の参考になるかと観てみることにした『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』でいきなりハマりました。『女王の教室』の天海祐希のような態度の人事担当の女性をあの人形染みたスタイルで演じる菜々緒がかなり気に入りました。その後、少々コケティッシュな霞が関のお役人を演じた『インハンド』や殆ど『Missデビル…』と同様のキャラの編集者を演じている『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』もDVDで観ました。やはり、あの人形染みた外観そのものや何をやっても決めポーズに見える様子がやたらに楽しくも思えます。さらに遡って、『週刊モーニング』でまあまあ原作コミックが楽しめた『主に泣いてます』の彼女や、弟子が三浦春馬が好きだというので、陰謀説盛んな「自殺」の後に何か観てみようと思って観た『ラスト・シンデレラ』(本来「・」ではなく、ハート。環境依存文字のため表記略)の彼女も観てみましたが、初期の頃のまだ幼さが残る風貌が現在とあまりに違い過ぎて、イマイチに感じました。

 映画では『白ゆき姫殺人事件』、『神様はバリにいる』、『エイプリルフールズ』、『グラスホッパー』、『銀魂』、『マスカレード・ホテル』、『ヲタクに恋は難しい』、『地獄の花園』など、DVDで観たものも劇場で観たものも合わせると、私が好感を持っている作品群に多数出演していますが、如何せんすべて脇役で、強烈に印象に残っているのは、『銀魂』、『地獄の花園』ぐらいしかありません。どちらの菜々緒もアクション押しです。

 次に関心が持てたのはシム・ウンギョンです。私が個人的な韓国製品・サービス不買運動をしている中で、ほぼ唯一の例外が彼女の出演作です。彼女の主演作は不買運動の対象になっていますが、彼女が準主役級で出てくると、主役以上に目立つほどに、印象的な演技をする女優だと思っています。最初に私が彼女を知ったのは『ブルーアワーにぶっ飛ばす』で、かなり気に入って、コミックも買ったほどです。私には明らかに主役の夏帆より重要な役どころに感じられました。正確には、主役の夏帆の役どころがシム・ウンギョンの役どころとのコントラストがなければ成立しない状態になっているというべきかもしれません。

 その後、DVDで観た『新聞記者』、同じくDVDで観た『椿の庭』のいずれでも彼女の存在感はかなり大きく、ヘイト感全開ながら、ここまで彼女が目立つのなら、不買運動の対象にすべきだったと後悔するほどに名演技で『ブルーアワーにぶっ飛ばす』と変わらぬ貢献度合いです。そんな彼女を劇場で観たのは『架空OL日記』の韓国人銀行OL役です。コケティッシュな役どころでしたが、多人数いるOLの一人であったことや言葉に支障のある外国人の役だったことで、存在感が薄かったように感じます。ちなみに彼女の出世作である『怪しい彼女』は多部未華子主演のリメイク版で観てまあまあお気に入りの一作です。

 続いて広瀬アリスです。『食べる女』についてのこのブログの記事でこのように書いています。

「広瀬アリスは劇場で見た中では『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』ぐらいしかありません。私は常に目が腫れぼったく浮腫んだように見える広瀬すずが単に見た目的に好きではなく、『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』を観て以来、誰かと広瀬すずの話題になるたびに、「むしろ、広瀬アリスの方が好感が持てる」と答えることになり、周囲から「アンチすず、アリス・ファン」であるように認識されるに至りました。『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』の広瀬アリスも目立たない役でしたが、自然で好感が持てるとは思っています。今回は漸くライフ・スタイルや恋愛観までバッチリ分かる役柄で、何かとうとう一つの形の広瀬アリスを捉えることができたように思えます。山田優が店番に立つバーでいつも酔い潰れ、行きずりの男ともどんどん寝てしまい自己嫌悪に堕ちることばかりの役柄ですが、ずぼらだけど一所懸命で憎めない等身大キャラには好感が持てました。」

 この『食べる女』では広瀬アリスは男に優し過ぎるが故に都合のいい女になっていて、部屋着のジャージを脱いでごちゃごちゃとモノが色々ある雑然とした部屋の中のセックス・シーンまで、少々披露してくれています。『食べる女』の中でもかなり明確にキャラが立っている役を見事に演じていたように思います。その後、DVDで(タイトルがイミフな)『AI崩壊』で準主役級の彼女を観たりしましたが、あまり印象に残りませんでした。やはり、印象度合いだけで言うなら、山中での修行の結果、クマの腹を突き破るパンチを身につけるスケ番を演じた『地獄の花園』が一番かもしれません。しかし、『地獄の花園』は映画の物語構成自体がかなり破綻していたように感じられて作品全体であまり好印象を持てませんでした。その観点から、私の広瀬アリスのベスト作は『食べる女』であり続けています。

 室井滋も結構好感が持てました。ウィキを見ると1978年が彼女の映画初出演ですから、長いキャリアの中で数々の名作に出ているはずですが、どうも、彼女を観て一番に思い出すのが、実写版『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズ二作の砂かけ婆で、これほどハマった役はないのではないかというほどでした。逃避行を続けるヒロイン役の人間・井上真央を砂かけ婆達が匿うシーンで、「腹がすいたろう」と井上真央に砂塗れの握り飯を振る舞うのが最高でした。他にも同じく井上真央を怒鳴りつける『大コメ騒動』の街の顔役の浮浪者風バーさんや、『地獄の花園』で先述の広瀬アリスに修業をつける山中に籠っている伝説のOLのバーさんなど、所謂「バーさん」役しか思い出せません。それがこの作品では、老練な家政婦として敵陣に潜入する役どころで、悪役家族の子供に厳しいことを告げるなど、性格面での設定がきちんと描かれており、「秘書軍団」のリーダー格の木村文乃以外の秘書の中で最も分かりやすく印象に残ったキャラかもしれません。

 これらの私から見ても豪華キャストに加えて、他にも悪役のドンには笑福亭鶴瓶を据え、刑務所から出所してきたテレビドラマシリーズのラスボスキャラの悪徳政治家には岸部一徳、ドラマから一緒の秘書軍団のボスには江口洋介、大富豪の笑福亭鶴瓶の息子のうちキーマンとなる二人には、玉木宏と濱田岳…と、錚々たる面々がいます。これで面白くなければおかしいでしょう。現実に撮影現場の思い出を語った笑福亭鶴瓶は、「悪役のドンとして大見えを切って長台詞を言ってるときに、この人達(秘書軍団の面々)は後ろ姿だけで顔が写っていないのをいいことに、ずっとわろてんのや。ほんま止めて欲しいわ」などと言っているなど、有名俳優陣で固めた撮影現場の様子が分かるコメントをしています。

 パンフの中では濱田岳が、「(『釣りバカ日誌』で既に夫婦役を長くやっている)アリスちゃんと夫婦で鶴瓶師匠の息子の役を断る訳はいないでしょう」と言いつつも、現場に行くと有名俳優陣を前にして、自分の居場所がないように感じられたという主旨の発言をしています。その広瀬アリスは本作の撮影中にラーメンを食べるシーンが何度もあり、その都度完食をして3キロ太ったとインタビューで応えています。楽しい現場だったようです。

 話の展開はドラマからそのままの設定の秘書軍団が、信州の大富豪の悪逆非道を暴き、放逐するというもので、観ている最中から思っていたのは、「日本版『チャリ・エン』(=『チャーリーズ・エンジェル』)って感じかな」でした。謎解きというような厚みもなく、豪雪の中の大豪邸と温泉宿とラーメン店で、チャカチャカと話が進んで行きます。ドラマは全八話で一つの物語のようですから、掘り下げようもあったのだと思いますが、映画の方はかなりの急ぎ足で話が進みます。

 おまけに、主人公の女性秘書だけでも6人もいるので、一人ひとりの尺がどうしても短くなってしまい、登場時間を長くしようとして、数人のチームにしたらしたで、今度は一人ひとりのキャラが立たないという、慌ただしい作品になってしまっています。その結果、恋愛経験が乏しい木村文乃演じる秘書がどっぷり玉木宏に溺れる様子も、かなりライトにチャカチャカ進み、あっという間に木村文乃が醒めてしまいます。一番の後輩のドジっ子的存在の広瀬アリスのキャラも濱田岳との結婚を機に秘書軍団に案件を持ち込んできますが、ウェディングドレスを着ても、すぐその格好で雪山を走り回らねばならなくなってしまいます。そのうち、今度は正体がバレてやくざもんにリンチに遭いますが、特にレイプされるでもなく殺されるでもなく、なぜかわざわざこちらの本拠地のラーメン店の中に放置されています。それも、寒風吹きすさぶ屋外を避けて、わざわざカギを壊してまで、ラーメン屋の床に放置するのです。

 菜々緒は時々子連れで現場に現れますが、ドラマのどこかの時点から突如シングルマザーになったような話がパンフに書かれていました。いちいち子供を預けては、特殊な「秘書仕事」に向かう…という切替場面が数度登場しますが、どうも、シングルマザーの“重さ”というか、大きな一つの役割から別の大きな役割へとマインドを切替えるような素振りには見えません。菜々緒の演技力の問題というよりは、尺の短さを主要因とする構成上の問題であるように感じます。

 そもそも、6人は色々な悪役達の秘書に各々なったりしていますし、時々変装して別の役を演じたりしていますから、6人で役を分けながらやっているキューティー・ハニーのような話でもあります。なぜか悪役側は、ギリギリ「前にどこかで見たか」ぐらいに勘ぐる程度で、まるで画像記憶ができない私並みに、秘書達を見破ることができていません。随分都合の良い展開です。

 さらに『チャリ・エン』よりも、荒唐無稽感が際立つポイントがあります。それは、6人に得意な分野がバラバラに割り振られていることです。特にオリジナル版のテレビ・ドラマの方の『チャリ・エン』では、一応、キャラにかなり明確な性格付けがなされていますし、得意な分野(例えば、格闘技とか変装とか分析など)が一応あるにはありますが、全員相応に多能化しているので、誰でもが何でもまあまあこなせます。それに対して、ドリュー・バリモアがプロデュースまでした映画の『チャリ・エン』は、全員没個性的で三人とも殆ど同じ技術が使えるように見えます。現実的です。

 それに対して、6人の秘書達(厳密にはボスの江口洋介も元秘書で、彼も際立った得意分野を持っています)が各々に得意分野があって、或る程度オールマイティなのはリーダー格の木村文乃ぐらいです。シム・ウンギョンは実際にはテコンドーの上級者ですが、本作での役回りでは、飛び蹴りなどの大技を狙った相手に繰り出すことはありますが、一応戦闘素人ということになっていて、どちらかというとキャーキャー逃げ回る感じです。突出した武闘派は菜々緒で格闘技全開です。あとなぜか本来ハニートラップ担当のようですが、大島優子もそれなりに棒術などを使いこなしています。木村文乃もそこそこ格闘技系です。しかし、この三人以外は事実上白兵戦の乱闘シーンでは活躍できないのです。

※大島優子に全くエロスを感じたことがない私は、なぜ大島優子がエロ系の担当なのかが全く理解できません。ドラマではそのような分野を上手くこなしているのかもしれませんが、想像がつきません。

 シム・ウンギョンはハッキングなどのICT担当で、唯一タブレットやノート型PCを使いこなしていますが、他のメンバーは(木村文乃が携帯カメラで隠し撮りを延々やっている以外)殆どガジェットを使っていることがありません。(室井滋が演じる家政婦が隠しカメラをセットするような場面はあります。)このように見てくると、誰か一人が、ないし二人が、監禁されるとか、何かの潜入ミッションにどっぷりハマりこむとかしてしまうと、特定の技術分野がこのチーム内で発揮されることがなくなってしまいます。これは戦争などにおいては、非常に脆弱な組織と言わざるを得ません。各々が突出した得意な分野を持っているのは勿論良いことですが、各々がその分野以外で平均点以下の技術や知識しかないのは大問題です。

 極端に言うと、打てば必ず大ホームランになる野球選手がいたとして、その技術だけで、球を投げることも受けることもできず、走るのも素人並み…という訳にはいかないのと同じです。同様のことは有名フィクションで言うと、『サイボーグ009』がまさにそれです。空を飛ぶ者や水に潜る者、火力押しで戦闘できる者、などが各々一人しかいないのです。これでは小規模なミッションに全員一丸となって集中するしか用を成しません。

 その非現実感が結果的にこの物語の荒唐無稽感を際立たせているという見方はできます。しかしながら、先述のように、この作品の見所は、諸々の観点での豪華さであり、スピード展開です。先述したようなお目当て女優がどこで何を言ってどんなキャラが提示されたのかもわからなくなるぐらいに個々が埋没してしまう豪華さであり、一応用意されたどんでん返しさえ、全くどんでん返しには思えないほどのスピード感です。それでそれが楽しめるかと問われれば、答えは間違いなくイエスです。

 テレビシリーズやスペシャル・ドラマ、スピンオフ・ドラマは観なくても良いように感じられましたが、この劇場作品のDVDはまあまあ買いです。

追記:
 マズローの欲求五段階説で言う所の三段階目の集団帰属欲求と四段階目の自尊欲求の二つのいずれかかミックスかと思われる、漠然と括るなら「承認欲求」に日本全国民が絆されまくっている状況で、SNSで自分の情報を曝け出し、自己主張をし、スルーされると承服できなくなる…といったことばかりです。そんな中で、あれだけ派手に動き回って、6人の女性達の殆どが現在の勤務先から有休をとって無報酬で働いているのに、「何なんだお前達は」と悪役から問われると、全員揃って「名乗る程の者ではございません」と言います。構造的には、大ヒット作の「必殺シリーズ」の主人公達と一緒ですが、時代劇の「死して屍拾う者なし」の匿名性や陰徳の物語が、スペシャル版やスピンオフまで出るぐらいに受け容れられているのなら、それほど人々は相互に承認しなくてはいられなくなった世の中に疲弊してしまっているのかもしれません。