547 不戦敗集団

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経営コラム SOLID AS FAITH 第547号
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 ご愛読ありがとうございます。第547話をお届けします。

 毎年恒例の周年記念特別号の発行も先月末日に無事完了いたしました。お
読みいただいた感想はどのようなものだったでしょうか。

 現在の日本の経済状況や社会状況を眺めて、悲観的になっている中小零細
企業のオーナー経営者によくお会いします。その多くは現実をきちんと理解
していなかったり、ネット上の無責任な意見に振り回されているだけだった
りします。少数ながら、現在の日本の経済状況や社会状況を眺めて、非常に
事業意欲に燃えている中小零細企業のオーナー経営者にもお会いします。国
内を主要市場とする中小零細企業にとっては恵まれた時代の到来を感じてい
らっしゃる様子には強く共感できます。

 しかし、そういった中小零細企業では、オーナー経営者の意欲とは裏腹に、
全く人材の質が揃っていないことが非常によくあります。幾ら見栄えの良い
事業展開の計画を練ったところで、それを支える人材が社内に居なければ、
全て画餅です。

 では、中小零細企業が現在の賃金体系や待遇、そして社内環境、それらを
そのままにして、大手企業も垂涎のような優秀な人材を見つけ出し採用する
ことができるでしょうか。大抵の場合、答えはノーです。結局、中小零細企
業の事業の基盤的能力は、人材育成に尽きます。正確に言うと、人材採用か
ら育成・定着までを視野に入れた広義の人材調達です。これができていなけ
れば、全世界の中でも珍しいぐらいの国内の空前のビジネス・チャンスも、
単なる空騒ぎのタネにしかならないことでしょう。

 どうやったらコスパよく人材を調達できるのか。世間一般に出回っている
採用方法の多くはブランド力に裏打ちされた強力な求人力を持つ大手企業の
ものばかりです。無名の中小零細企業が“役に立つ人材”を調達する方法は、
世の中に知られていません。それは自社の特長に合わせてカスタマイズして
作らねばならないからです。その主要な一部に今回の23周年記念特別号で扱
った「読解力」教育も含まれています。

“中小零細企業は社会人(/組織人)教育最後の砦”と書かれていましたが、
そのご趣旨に頷いていただけましたら、是非ご一報ください。当コラムでも
長年にわたって描いてきた、中小零細企業の現場レベルの、大仰に言うと、
“人材マネジメント”の数々の手法のティップスをお話しして差し上げるこ
とができるかと思います。

 今回お届けする『不戦敗集団』は、そんな読解力の現状について内容です。
比較的最近出版された『映画を早送りで観る人たち』をネタの一つにして書
きまとめてみました。是非ご一緒にご一考ください。ご意見・ご感想をお待
ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その547:不戦敗集団

「好きな情報やコンテンツしか見たくない。興味のないことは視界から外し
たい。偏っていてもいいから、好きなものだけに囲まれていたい。映像娯楽
コンテンツに限らずニュースなどの情報についても、それを貫きたい。
 同レポートではこう言った『“なんとなく”の時間を問い直し、自分の気
分に合ったメディア・コンテンツを選り好みする生活者』のことを『Picky
Audience(ピッキー・オーディエンス)』と名付けている。」
 比較的最近読んだ『映画を早送りで観る人たち』の中の一文。登場する同
レポートとは博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所が2021年
に発表したもの。
 
 嘗て内田樹は『下流志向』で、無意識のうちに「分からないことをなかっ
たことになる能力」がある人々の思考や言動について詳細に描写している。
その人々がどのようにしてそのような能力を身につけたのかは定かではない。
自分が意図しない事物や経験を迫られることがないままに育つと、自分の思
考や価値観を無理矢理に変えて、その外部からの入力に適応する必要がない。
それがずっと続くと、適応力は不要なものとして退化する。そして「分から
ないことがなかったことになる能力」として定着すると考えられそうだ。

 自分の周囲の分からないことがすべて存在しないと認識されるなら、その
人間の世界には知らないことも分からないことも存在しない。全知であるな
ら、新しい何かに遭遇することもないので、それを読解したり解釈したりす
る必要がなく、 “読解力”も生まれない。
 
 数学者の新井紀子の『AI vs. 教科書が読めない…』は、彼女が人工知能
に東大受験をさせるプロジェクトに参加して得た知見をまとめたもの。人工
知能「東ロボくん」は英語と国語の偏差値がどうしても伸び悩んだ。その理
由は、機械にパターン認識はできても、意味理解はできないからと、著者は
説明する。
 
 読解だけが苦手な「東ロボくん」は、MARCHレベルの大学入学には十分な
偏差値を誇り、センター入試の中央値どころか平均値さえ大きく上回った。
一学年の子供の数のうち大学受験をするのは約半数。その上位20%に「東ロ
ボくん」が食い込んでいる事実は重い。新井が「読解こそが人間が今後持ち
合わせているべき能力」と警鐘を鳴らすのは、彼女が調べた読解力が高校生
ぐらいまでの期間には伸びる余地が残されているが、それ以降人間の読解力
はかなり意識的な努力をしなくては伸びないという事実を踏まえてのこと。
 
 ピッキー・オーディエンスは年齢に拠らず膨大に存在するらしい。元々そ
の性向を持つ人々がICTの発展と共に顕在化したのだろう。その人々の未来
は仄暗く思えてならない。
 
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。
人々の価値観が多様化し、
近年流行りの「好きなことを仕事にする」、
「アルバイトでも食べていける」、
「ワーク・ライフ・バランスを大切にする」といった考え方が、
イマドキでカッコイイと持て囃されたりしています。
本当にそうでしょうか。

個々人の働くことについての考え方を「就労観」と市川は呼んでいますが、
どのようなキャリアの選択肢においても、周囲から高く評価され、
自分の価値を高めていく働き方にはある共通点があります。

「ウチの社員にも聞かせてやって欲しい」とのご要望を
多くのクライアント様からいただくので、
その共通点を分かりやすくレクチャー動画としてまとめたところ、
大好評をいただいています。

ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
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『萬屋のもっと深く愛してい』第44回_生体認証(短所)

近年注目されている技術の一つである「生体認証」をテーマに取り上げてい
ます。生体認証は顔や指紋などの生体情報を使って本人を識別する仕組みの
ことです。3回目となる今回は、生体認証の短所について紹介したいと思い
ます。

主に次の3つが考えられます。

<生体認証の短所>
1.身体の「変化」に対応できない
 生体認証は身体的特徴で本人を判断するため、外見が変わると認証制度が
下がってしまいます。指紋認証は指の怪我でも認証されなくなることがある
ので注意が必要です。また、顔認証においては老化や整形、メイクなどによ
っても識別精度が変わってくるため、短所の一つと考えられます。その対策
として、生体認証以外の認証方法と組み合わせる方法があります。例えば、
顔認証とあわせてパスワードも設定しておけば、外見の変化や怪我に対応す
ることが可能です。

2.データが盗まれても迅速に対応できない
 生体認証はなりすましや偽造のリスクが低いという長所がありますが、そ
の裏返しとして、「生体データそのもの」が盗難に遭った場合、生体データ
の変更が難しいため、迅速に対応できないというリスクがあります。文字列
などのパスワードであれば情報漏洩が発覚した際にすぐに変更することが可
能であり、物理的な鍵の紛失・盗難の場合も、鍵自体を変えてもらうことが
できます。それらと違い、生体データの変更は困難なため、認証に用いる生
体情報を変更するなどの対応が必要になります。なかでも指紋や音声は他人
が取得しやすいため、静脈などの身体内部にある情報を利用することで、こ
の短所の軽減を可能にします。

3.運営側に高いセキュリティ対策が求められる
 生体データ盗難による悪用リスクを避けるためにも、個人情報を多く扱う
企業は、より高いレベルのセキュリティ対策をすることが求められます。前
項の通り、迅速な対応が困難であるからこそより厳重な対策が必須です。

次回から、生体認証のうち代表的な9種類の特徴と実用例などについて紹介
していきます。

このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『嘘と感情論で封殺された5つの日本の真実』 高橋洋一 著
■『リミットレス! …』 大嶋信頼 著
■『すみません、金利ってなんですか?』 小林義崇 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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 bizcom@msi-group.org
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次号予告:
 第548話 『凋落の淵』 (11月25日発行) 
 社員が採用できず、大手企業は従来の社員待遇を見直し、一気に新入社員
に阿るような施策を採用しつつあるようです。その落とし穴について考えて
みました。

(完)