528 ゴーストの囁き

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経営コラム SOLID AS FAITH 第528号
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 ご愛読ありがとうございます。第528話をお届けします。

 今年も毎年恒例の寒中見舞いをお世話になった皆様に配布しています。ご
存じの方も多いことと思いますが、恒例寒中見舞いはA4サイズの大判ハガキ
でお届けしています。昨年から合資会社MSIグループと「会社の萬屋 企画
改善請負本舗」の共同名義となりました。

 今月中旬から手渡しでの配布を始め、2月上旬まで訪問配布や郵送を行な
って、寒中見舞いなので当然ですが、寒さが緩む前に作業を終える予定です。
昨年同様にプレゼント企画があります。「読解力を引き上げるためのヒント
10選!」と銘打って、読解力の問題について理解するための書籍10タイトル
を列挙したリストのプレゼントです。

 ベストセラーとなった新井紀子著の『AI vs. 教科書が読めない子どもた
ち』でも提起されているように、読解力はAIが社会に浸透し多くの作業を行
なうようになった際に、人間に残された仕事に必要となるものと考えられて
います。詰まる所、読解力は人間としてまともな賃金を得ながら働く主要な
条件の一つということです。読解力というと本を読むことのように考えられ
がちですが、ここでの読解力は、「行間」を読んだり、「空気」を読んだり、
「機微」を読んだりするような能力も含んでいます。そのように考えると、
読解力が組織の中で行なわれるさまざまな業務に必要なものであることがご
理解いただけることでしょう。

 小さな会社の差別化は人の質や人を動かす仕組みによって実現するべきと
言われて久しいですが、そうであれば、小さな会社こそ社員の読解力引き上
げに邁進しなくてはならないことになります。寒中見舞いの配布作業が完了
した頃に発行される次号の当メルマガでも、寒中見舞いを受け取っていない
方々向けに「読解力を引き上げるためのヒント10選!」のブックリストをプ
レゼントする企画を行ないますので、是非ご期待ください。

 今号は『ゴーストの囁き』です。タイトルはジャパン・アニメの一つの頂
点にして映画『マトリックス』の制作もこの作品に影響された結果と言われ
る『攻殻機動隊』で用いられている表現です。当コラムの『MSIグループの
仕入完了報告(抜粋)』にも2019年に『攻殻機動隊 名言集』が登場してい
ますが、弊社代表の市川も好きな作品の一つです。

 その『攻殻機動隊』の世界観にじわじわと現実が追い付いて来つつありま
す。そんな世界における労働の主体となる人間の立ち位置を少々考えてみる
ことにしました。社会保障制度やベーシック・インカムの議論にもつながる
労働の形について、ひとときお付き合いください。ご意見・ご感想をお待ち
しております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その528:ゴーストの囁き

 伊美沙智穂というウェブメディア・ライターの『優秀すぎる人事社員は、
実はこの世に存在しない人物だった……フルリモートワーク企業のある実
話』をとても興味深く読んだ。

 リモートワークで働くことになった「私」に対して、業務委託契約の手続
きを進める「遠藤ひかり」という担当者から連絡が来る。返信すると「遠藤
ひかり」は簡潔な文章で数分も経たずに返事を返して来る。手際が良い仕事
ぶりに「私」は好感を覚えたという。

 チャットのアイコンでは若い女性が微笑んでいて、やり取りが続くうちに
絵文字をつけるような間柄になったが、二年後、「私」は遠藤ひかりが実在
しないことを同僚から知らされる。「遠藤ひかり」は複数人の人事部の社員が
運用するアバターだったのだ。「人事部共有アカウント」などの名称にせず、
わざわざ架空の人間にしたのは、人格を持たせることで利用者が相談する上
での心理的ハードルが格段に下がることが理由だと伊美氏は言う。

 ことはアバターだけの話ではない。「遠藤ひかり」は5名もの担当者が裏
で“運用”しているが、人工知能が人間に代わって人間に対応している場面
は急速に増えている。Siriやアレクサなどの音声認識によるものは勿論、
チャットボットは文字でやり取りするものも多いので、余計に機械としての
ボロが出にくい。まして、人間の方も機械を通した信号の形で仕事をするリ
モートワークが増えたなら、生の個人と生の人間が集うアバターと、生の人
間に似せた人工知能の区別は殆どつかず、その区別をすることさえ無意味に
なるだろう。

『答えのない世界に立ち向かう哲学講座』と言う本で、18世紀の英国の哲学
者バークリーは「存在するとは知覚されること」と述べていると説明されて
いる。その考えを踏まえて著者の岡本裕一朗は、今や「存在するとはインタ
ラクト(相互作用)可能であること」になってしまっていると指摘している。
日本人は伝統的に付喪神やら魑魅魍魎など自然物にも人工物にも擬人化を施
すことが得意なので、物言わぬものでさえ、脳内でインタラクトが可能で、
多くの“存在”があちこちに個別に許されることだろう。

 内閣府は生活状況についての調査を平成27年度に満15歳から満39歳までを
対象にし、平成30年度には満40歳から満64歳までを対象にして行なっている。
前者では広義の引きこもりは全国で54.1万人、後者では61.3万人と推計され
ている。これらの人々の一定割合は、インタラクトが困難であるがゆえに、
現代哲学の定義からすると存在そのものが危ぶまれるのではないか。アバ
ターや機械の存在は勃興し、彼らの存在は希薄化していく。政府までが中小
零細企業にも表層的な生産性を求める昨今、彼らが存在し得る場を社会の誰
が用意し得るのか、相応に関心が湧く。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋日和』 「会社の萬屋 企画改善請負本舗」からのPR

「会社の萬屋 企画改善請負本舗」の奥田美幸です。

このたび、師匠・市川が代表である合資会社MSIグループの
共同出資者になりました。先日、無事登記を終えたところです。
合資会社の登記や出資の仕組み、会社法についての勉強も進めています。

市川が常々言っている「ゴーイング・コンサーン」の実現のためにも
合資会社MSIグループをきちんと引き継げるよう、精進してまいります。
ヨロズヤ・ウェブサイトのお知らせにも掲載しておりますので、
ぜひご高覧ください。

https://kaisha-yorozuya.support/news/

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『萬屋のもっと深く愛してい』第25回「ブロックチェーン<概要編>」

近年、ビットコインなどの仮想通貨が話題になったことから認知度が上がっ
てきた「ブロックチェーン」。ブロックチェーンとは、暗号によって改ざん
されないようにできる仕組みのことで、フィンテックなどにも用いられてい
る技術です。

ブロックチェーンの技術について簡単に説明していきます。例えば、仮想通
貨を取引した際には、必ず取引のデータが残ります。銀行でお金を預けたり、
引き出したりした際に、そのデータが残り、通帳に印字されるのと一緒です。
銀行の場合は、その銀行が一元的に取引データを収集・管理していますが、
ブロックチェーンの場合は、その取引データを何十万、何百万という数に分
散して皆がもち合う形で管理されています。取引のデータは「ブロック」と
呼ばれ、それを「鎖(チェーン)」のようにつなぎ合わせることで一連の取
引データを表現していきます。

ブロックチェーンはこのように、ブロック単位で分けたデータを整合性がと
れているかどうかを検証し、データの正当性を保持します。しかし、このブ
ロック自体は分散して保管されているので、リアルタイムに整合性を検証す
ることはできません。これがブロックチェーンが改ざんされにくいと言われ
る所以です。

企業では、これまで集中してデータ管理・決済処理をしていますので、その
1カ所がたまたま、あるいは負荷が大きすぎたり悪意の攻撃をされたりして
ダウンすると、すべてのシステムが止まってしまいます。そういう心配がブ
ロックチェーンによりほぼすべてなくなります。言い換えれば、システム全
体の安定した運用が可能となるのです。データ改ざんへの不安、高い決済コ
スト、処理速度、システム構築の大変さなどからできなかったことがブロッ
クチェーンにより実現可能となります。

次回から3回にわたって、中小企業におけるブロックチェーンの活用事例を
紹介していきます。

このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『その「もの忘れ」はスマホ認知症だった …』 奥村歩 著
■『実況! 会社つぶれる! !』 全宅ツイ 著
■『やりたいことなんて、なくていい。…』 伊藤羊一 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ ) 

毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け23年。

マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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次号予告:
 第529話 『クロック・パルス』 (2月10日発行) 
 一定時間集中することができない人が増えていると言います。その傾向は
中小零細企業の経営にも影響を与えることでしょう。そんなことを考えてみ
ました。

(完)