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経営コラム SOLID AS FAITH 第175号
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ご愛読ありがとうございます。第175話をお届けします。
この号が皆様に届く頃にはゴールデン・ウィークも、終わりまして、また日
常が到来していることと思います。この原稿をセットしている今現在は、まだ
4月の終わりで、私は片付け途中の書類や書籍が散乱する中で、作業していま
す。当コラムの原稿もネタメモの状態から文章化に取り組まねばなりませんが、
一日に5話ぐらいを集中して書くと言う感じで、在庫を貯めております。
今号のPR欄は、前号に引き続き、弊社の事業の方針を容れて、弊社の案件
処理をお手伝い戴ける個人事業主の方の募集です。前回お見逃しの方は、是非、
ご覧の上、ご一考下さい。
さて、今回の号は、「社長はなぜ事業をするのか」と言う非常に単純にして、
あまり普段考えることのないテーマに挑んでみます。最近話した何人かの社長
のご意見を重ね合わせてみて、透かし見える、中小零細企業経営者の考えにつ
いて、一緒にご一考戴けましたら幸いです。ちょっと、切ないお話かもしれま
せん。それでは、本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴し
たご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その175:余命の堆積
或る二代目社長と呑みに行くことになった。先代の創業社長は会長となって、
今尚、株も半分以上持っている。会長は自分でも語るほどに、起業してからや
りたい放題で事業を大きくしてきた。社員の中にも顧客にもその強引なやり方
を厭う者は多く、業務も改善の施せる所が山ほどある。社長の代替わりの遥か
以前から、業績は横這いか悪化を繰り返し、能力の限界を悟っての筈の交代劇
を経て、今尚会長は会社の内外で、精神論をぶち続けている。もうすぐ本当に
引退するので、最後の足掻きとは、本人の弁である。
社長と四方山話を続けて、「しかし、会長が元気すぎて、大変でしょうが、
それよりももっと大変なのは、業績の悪化ですね。よく、親族でもないのに社
長を引き受ける気になりましたね」と私は言った。社長は笑って誤魔化してい
たが、店を変えてから、語り始めた。
「いえね。たいした会社じゃないんですよ。会長には言えませんがね。仰る通
り、穴だらけで、どこから手を付けようかと言う感じですよ。ただ、それでも、
うちの商品が良いと言うお客はちゃんと居るし、目の前に休みもしないできち
んと出てくる社員も居るじゃないですか。潰すには本当に勿体無い。それだけ
ですよ。その役回りが私で勤まるなら、残った人生でそれをやっても良いんじ
ゃないかと思いましてね」。
40を過ぎて、哲学っぽい本やら人生論の類を、たまに手にしてみる。子供が
できると、人は否応なく死を意識し命が軽くなると、どこかに書いてあった。
自分でも感慨と共に実感できる。事故や災害の場面で、助かる道を選べる人数
に制限があると、決まって投げ出される命は老人のものである。未来ある命と
老い先短い命。人の命は何より重いが、その命の間には軽重がある。朽ちる物
が、これから萌え栄える物の糧になるのが道理であろう。
40代前半、起業8年目の社長が、社員4名の自社について言う。
「いやあ。自分で独立することになってやってきた仕事が、多少増えてきたの
で、社員を雇っただけですからねぇ。会社の理念とか方針とかねえ。社員は、
そういうのはないのかと言うんですが、ピンと来ませんよ。事業と言うより、
仕事の延長ですからねえ」。
「なるほど。では、一つ教えてください。社長もいつかは引退する日が来ます
ね。例えば、20年後としましょう。その最後の出社日。引き払って何もない部
屋に一人で鍵をかけたいですか。それとも、『社長、お疲れ様でした。これか
らもお元気な限り、顔を出してください』と社員に見送って欲しいですか。後
者なら、それなりに準備が要りますから、早めの判断が必要でしょう」と私は
言った。
ちっぽけな生業の形に過ぎないと、多くの零細会社の社長は言う。そして、
矮小な組織でも、脆弱な事業でも、永続する「法人」と言う人なら、余命を投
じて育てる価値があると言う人も多い。
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次号予告:
第176号 『改善のホンネ』 (5月25日発行)
自社ビル建設、ISO取得、IPO、Pマーク取得、基幹システムの構築など。社
長業の終わりが見えてくる辺り、伸びてきた業績が限界に達して、悪化しない
までも経営の手詰まり感が出てくると、中小零細企業の社長が検討を始める項
目のような気がします。その時の経営者の心理について勘繰ってみます。お楽
しみに。(完)