171 砂山の運搬

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経営コラム SOLID AS FAITH 第171号
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ご愛読ありがとうございます。第171話をお届けします。

札幌と東京の往復生活をしておりまして、二ヶ月先の航空券手配は既にゴー
ルデンウィークの計画まで組み入れなくてはならない時期になりました。皆様
は、如何お過ごしでしょうか。

さて、今回の号は、仕事のやりがいや動機付けに関して考えてみたものです。
弊社がお世話になっている企業様の一部では、既に、社員のやる気を削ぐ仕事
の与え方や、その結果の社員にとっての「味気ない仕事」のことを指して、
「砂山運び」と呼び習わされています。翻訳により、運ばれるものは、砂だっ
たり土だったりするようですが、ご一緒に、「砂山運び」的な仕事のあり方に
ついてお考え戴けましたら幸いです。

また、関連テーマを扱った以下の号も合わせて、ご一読戴ければ幸いです。
第40話『日常の透析』
http://cyblog.jp/modules/wordpress/index.php?p=125
第48話『おまけの行方』
http://cyblog.jp/modules/wordpress/index.php?p=133

本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへ
のお返事の目標納期は5営業日!!
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その171:砂山の運搬

幼稚園の夏休み。娘が私の実家のある町に海遊びに行って帰って来た。今は
整備されて海浜公園となった海辺で私の母と蟹釣りをしたと言う。コンクリー
トで、自然にはあり得ない矩形の足場が固められる過程では、テトラポットや
ら防波堤やらを周囲に配置する作業が長い年月をかけて進められて来た筈であ
る。

私が子供の頃、砂浜沿いの低い防波堤とその内側を縫うように進む砂利道の
間のスペースには、高さが4、5メートルほどの砂山が幾つも作られていた。
そこに登って遊んでいると、「砂が落ちて山が低くなる」と作業員の人々に怒
られた。作業員の手やブルドーザーで砂は山から山へと積み直され、最後には、
ダンプカーで運ばれて、いずこかのテトラポットや防波堤の材料となると聞い
ていた。

数年前の『SPA!』に、『「本日も、ますます仕事がつまんねー」の実態』
と題された面白い特集が掲載されていた。朝の4時から店に入り、人と殆ど話
すこともなく、日替わり弁当を作り続ける弁当チェーン店店長の毎日などが紹
介されていた。弁当詰めの作業も延々と続き、壁に白米と梅干が見えることも
あると言ったその店長は、確か退職に至ったと記事にあったように記憶する。
余りの面白さに特集の中の記事の幾つかを私はかなり詳細に暗記している。そ
して、私の周囲に「退職希望者」や「やり甲斐渇望者」が現れるたびに、繰り
返し記事の内容を紹介している内に、どんどん記憶は強化されてきた。

私が敬愛する深代惇郎が書いた天声人語には、ドストエフスキーによる「最
も残酷な刑罰」が紹介されている。囚人に砂を或る地点から、別の地点に運ば
せる。それが終わると、またもとの地点に運ばせる。作業は何らの結果も生ま
ないままに、延々と反復される。このような無意味な労働を強いることが、最
も残酷な刑罰であるらしい。小説を読むのが苦手な私は、中学生の頃、『罪と
罰』ぐらいは読んだような気がするが、記憶も曖昧でストーリーさえよく思い
出せない。

スコップやブルドーザーで、崩れかけた砂山の外形を整えたり、中途半端に
砂が減ってしまった山同士をまとめたりする作業を、毎日繰り返していた人々
が、子供の頃には身近に居た。その作業員の人々は、砂山の運搬を発狂するほ
どに苦悩しながら進めていたか。1キロ単位のジャガイモを寸胴に入れてかき
混ぜて、料理とは呼べないような工程で弁当を毎日作り続ける店長と、見かけ
上、最も残酷な刑罰と文豪に定義される作業に似た仕事を続けていた人々。こ
の違いは何であるのだろう。

「他にもっと、自分が活かせる仕事があると思うんです」などと言い出す社員
が、私のクライアント企業でも出現する。遭遇するたびに、弁当作りよりもや
り甲斐ある砂山運びに思いを馳せる。
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次号予告:
第172号 『池水浄化』 (3月25日発行)
カウンセリングやコーチングなどの、所謂「心理主義」的な対策の中小零細
企業への適用を、或る本の読後感も交えてまとめてみました。お楽しみ下さい。
(完)