169 ヘイスタック・ネイル

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経営コラム SOLID AS FAITH 第169号
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ご愛読ありがとうございます。第169話をお届けします。

二月に入りまして、私の東京と札幌の往復の航空券手配は、既に4月の日程
を決めて、予約に入る段階になりました。今月末までにはゴールデン・ウィー
クの予定も考えねばなりません。時の経つのは本当に速いものと、痛感致しま
す。

今回の号は、経営者が飛びつく、経営改善の特効薬の実際について考えたも
のです。タイトルが少々おかしな英語ですが、誤植でもなければ勘違いでもあ
りません。ご堪能戴ければ幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちし
ております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その169:ヘイスタック・ネイル

中小企業経営者向け情報誌の編集部。校正を行なう深夜のオフィス。
「やっぱり、『優秀な人材はこうして獲ることもできる』では、だめですよね
ぇ」と、私が机越しに言うと、編集長は『優秀な人材はこうして獲る』と一言
強い口調で返す。確かに自分が読み手でも、記事のタイトルが『獲ることもで
きる』では、そそられない。

4月に編集未経験で入社して、中小企業の中途採用について6月号の特別企
画12ページを任されることとなった。中小零細企業のUターン採用の成功事例。
零細企業の人材紹介活用事例。合わせてUターン専門転職雑誌の編集長、スカ
ウト専門会社社長と、慌しく取材を重ねて記事はほぼ完成した。取材を重ねれ
ば重ねるほど痛感するのは、どの方法も全く万能ではなく、特に企業側のその
手段にかける覚悟が中途採用の主要な成功要因であることだった。せめて、採
用者の決意を表現する『こうして獲る』で納得することとした。

経営セミナーも書店に並ぶビジネス書も、それらが商品である以上、売れね
ばならない。『女性活用が会社を伸ばす』、『ホウレンソウが会社を変える』
だの。冷静に周囲を見渡せば、性別に関係なく誰がバリバリ働いても潰れる会
社は潰れるし、ホウレンソウを徹底しても、資金繰りが怪しくなる会社もある。
それでも、声高なコピーに踊る経営者は多く、タイトルが売上げを大きく左右
することを、私も身を以って知っている。

子供に初めて虫眼鏡を持たせると、一頻りウロウロして、何でも覗き始める。
人間、金槌を持つと、何でも釘に見えて来ると言う。金槌を持つと何かを叩き
たくなる心情は分からんでもない。コンサルタントの先生も過去の成功体験を、
クライアント企業の課題に当て嵌めたくなるのは、当然至極である。

営業日報の書き方をきっちり直すことを力説するばかりの或る先生のキャッ
チフレーズを、『収益改善は、日々の営業活動の見直しから』としてみたら、
セミナーは経営者を多数集めた。製品の強みの見直し、営業ツールの改善、顧
客のニーズを再設定。何でもちゃんとやれば、収益は改善する。特性要因図を
描けば、営業日報のあり方など、ほんの小骨に過ぎないだろう。叩くべき主要
課題が他に存在する可能性はそれなりに高い。それでも、話者の魅力なのか、
話の純粋な面白さなのか、ノートをとる経営者、ウンウンと頻りに頷く経営者
が散見された。アンケート結果も悪くない。

弱者の戦略は弱みを補うのではなく、強みを伸ばすことに集中すべきと習っ
た。ならば、中小零細企業経営の実態は、磨き抜かれた強みと放置され山積み
の経営課題の集積であろう。多分、数多ある経営課題の中には、僅かな釘も混
じっていたのだろう。そうでなくては金槌の使い方のセミナーが好評な筈はな
い。ただ、釘だけには効果万点の、その有難い金槌も、自分で買って来て、き
ちんと釘に当てねば成果が出ないことまで、セミナーの場で理解するのは難し
い。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。
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≪近況報告 最近の読書≫
最近読んだ本で、私にとって影響力の大きかった作品を紹介致します。
皆様の選書の参考になりましたら幸いです。

● 『Web2.0が殺すもの』 宮脇睦 著  洋泉社
Web2.0礼賛の書籍を複数読んだ後で、
この本を読むと、眩暈を伴う爽快感です。

● 『下流喰い 消費者金融の実態』 須田慎一郎 著  ちくま新書
読んで、「はあ、そうか」と思い、
文中に登場する西新井駅に赴きました。書いてある通りでした。

● 『放送禁止映像大全』 天野ミチヒロ 著  三才ブックス
子供時代からの謎の幾つかが氷解しましたが、
表現一般に関して、かなり考え込んでしまいました。
表紙デザインも見る者に刺さります。

● 『日本人の忘れもの 1?3』 中西進 著  ウェッジ
当コラム165話『風の感じ方』にも書きましたが、愛読しています。
日本語の表現に見る思想・思考が、本当に勉強になります。

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次号予告:
第170号 『人狼のマージン』 (2月25日発行)
最近、「できる社員」の条件について話す機会があります。主要な条件の一
つは、不確実な未来の結果に向けて努力を続けられることではないかと、私は
思っています。小学校の教科書に載っている物語をベースに考えてみました。
ご期待下さい。(完)