166 自分のどんぶり

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経営コラム SOLID AS FAITH 第166号
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ご愛読ありがとうございます。第166話をお届けします。

いよいよ今年最後の発行となりました。前号の冒頭に書いた年の瀬の雰囲気
はいよいよ本格化して参りました。

中島みゆきの『十二月』と言う曲に依れば、「自殺する若い女がこの月だけ
急に増える」のであり、「大都会の薬屋では睡眠薬が売り切れる」月であると
のことです。この通りかどうか私は知りませんが、格差社会やワーキング・プ
アなどのタイトルの、週刊誌の特集などを見る限り、若い女性のみならず、死
に急ぐ人は増えているようですし、何らかの癒しの手段に強く依存しなくては
ならない人も増えているように見えます。

そんな中、大学での来年の講義のテーマは『職業と人生』と決まり、キャリ
アや人生の選択肢について考える講義内容について、案を練っている最中です。
単に用意できた順に発行しているので、全くの偶然の結果ですが、来年の第一
号は、学生の進路相談にのった話から始まります。これからも、当コラムは、
特に中小零細企業のオーナー経営者とそこで働く人々について、考えて行きた
いと思っております。末永くお付き合い下さい。

さて、今号は、『自分のどんぶり』と題して、中小零細企業の人事考課につ
いて考えてみたものです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。
頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その166:自分のどんぶり

提携している個人事業主と共にタクシーを降りて、いつもの顧客企業の社屋
に向かおうとすると、徐に彼が「市川さん、タクシーで『お釣り要らない』っ
て言うんですか。エライ金持ちみたいじゃないですか」と言う。
「ああ、何かこう、話が弾んだ感じがあって、50円以下ぐらいのお釣りだった
ら、取っておいて貰う位の感じにしているけど。その人が良い感じでも嫌な奴
でも、メーターでさ、まさに機械的に決めて全部同じ値段っておかしくないか
なとか思って」などと応える。

「でも、あんまりそういうこと言わないでしょ、普通」
「まあね。俺ぐらいの安背広で、貧乏っぽいサラリーマン風の人間から、言わ
れることは向こうだってあんまりないと思うよ。現実にそんな裕福な訳じゃな
いから、50円以内ぐらいの目安なんだけどさ。まあ、だけど、そんな風体の人
間から言われるから意外感があって、逆に、『おおっ』って言うような嬉しさ
があるかもしんないじゃん」と会話は続く。

米国の田舎に二年半留学していても、貧乏だったので、レストランのような
所にはあまり行かなかった。旅行にも行かないのでホテルにも殆ど泊まらない。
だから、今でも私は、その手の場所でのチップの相場が分からない。旅行ガイ
ドを見ると、支払額の一定割合を目安としている。現地の貧乏学友達は、「メ
ニューの説明がよく分からなかったから、これぐらいだろ」などと言いながら、
テーブルの上にコインを重ねていた。明らかに見た目で分かる貧乏学生からも
それなりの金額を手にできたら、それは小さな感動を店員に与えるだろう。そ
こそこの身形の人物が、僅かなチップしか残さなかったら、その心証はかなり
悪いことだろう。これが、当り前のチップの払い方なら、店員は自分のサービ
ス・レベルを否応なく意識するはずである。

「いやあ、どんぶり勘定、結構じゃないんですか。結局、変な評価制度の物差
しを作って、社長が全然評価できない奴に高いカネ出すことになったら、社長
は納得できないでしょ。結果を出そうが出すまいが、社長が良いと思える社員
が、社長の会社で高く評価される。それで何が問題なんですか。人数が少ない
んですから、社長がそれぞれの社員の嬉しいことを把握して、その都度、小さ
な嬉しいことを何か付け加えるだけで、多分、不公平感なんか吹っ飛びますよ」。
最近多い「やる気を引き出すために公平な人事考課制度を実現したい」と言
い出す零細企業経営者に向かって、私が告げる考えはいつもこれである。

或る週刊誌で『好き嫌い人事がいい』なるタイトルの記事が載った。オーナ
ー経営者が率いる中堅規模の企業事例が多い。企業の所有も舵取りも全責任を
負うオーナー経営者。人事評価がその主観に依るのは当然であろう。結局は経
営方針も社風も、オーナー社長個人の価値観が組織に投影されているだけなの
だから。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。
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≪年末特別企画≫
先日、ネタノートから、ソリアズ原稿をどんどん作成。
現在の発行準備完了の原稿ストックを一気にご紹介!!

1月発行号:
第167話 『生の教え』
学生の進路相談から考える、事業成立の土壌
第168話 『必然のリサイクル』
大学進路指導担当者との会話に見出した若年失業対策

2月発行号:
第169話 『ヘイスタックネイル』
巷に溢れる各種事業改善の処方箋。その効能のほどの検証
第170話 『人狼のマージン』
小学校の教科書に出てくる話に学ぶ、できる社員の条件

3月発行号:
第171話 『砂山の運搬』
雑誌のネタから考える、やりがいのある仕事の実態
第172話 『治水浄化』
コーチとの会話から、中小企業でのメンタルケアの位置づけを検証

4月発行号:
第173話 『多次元物差』
よく尋ねられる書籍の選び方。そこからまとめてみた商品選びの視点
第174話 『砕けた力』
指示と示唆。強制と動機付け。社内コミュニケーションのあり方

5月発行号:
第175話 『余命の堆積』
企業という「人格」の、親であるオーナー経営者からの独立を熟考
第176話 『改善のホンネ』
ISO取得、IPO。仕組み作りにおける経営者のホンネを分析

6月発行号:
第177話 『いきものの仕事』
意思疎通、動機付け。関係性管理が内包する巨大なリターン
第178話 『安価の衝撃』
携帯電話料金など、安価強調型のサービスのもたらすものを検証

7月発行号:
第179話 『フダンのコシ』
ビジネスを育てるチャンス。それをモノにできる者の条件を検証

以上、来年分も既に半分以上原稿準備完了。どうぞ、ご期待下さい。
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次号予告:
第167号 『生の教え』 (1月10日発行)
2007年の第一号は、大学の教室で、風俗産業への就職を考える学生の相談に
乗ったことから考えた、事業が成立する背景や土壌についてまとめたものです。
ご期待下さい。(完)