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経営コラム SOLID AS FAITH 第505号
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ご愛読ありがとうございます。第505話をお届けします。
最近『仕事に関する9つの嘘』という書籍を読みました。昨年2020年の6
月に出た本ですので、気づくのに随分時間がかかったことになりますが、非
常に頷く内容の多い書籍でした。中小零細企業の現場に持ち込むと少々ズレ
を感じる想定もありますが、リーダーシップにまつわる幻想や、ワーク・ラ
イフ・バランスの幻想など、現実と乖離した“よくある議論”の嘘を暴く刺
激的な内容です。人と組織の関係を考える上で非常に重要な知見が得られま
す。
前号から始まった『萬屋のもっと深く愛してい』は、中小零細企業での
ICT活用のありかたをテーマごとに取り上げていく内容となっていますが、
第2回の今回は「MA」です。歴史的に見ると、マーケティングは最も管理面
でのICT化が遅れた分野であったと思います。それが漸く、使いこなせる
ツールが多々登場するようになったと感じます。
一方で第499話『地下爆発』でも書いた通り、技術の進歩は目まぐるしく、
既に魔術化してしまって、その原理を知って使いこなせる人材はどんどん稀
少になって行っています。社会でのICTの“魔術化”の位置づけが、中小零
細企業でのMAなどを始めとするICT活用を遅らせてしまっているように思え
てなりません。新連載『萬屋のもっと深く愛してい』が、そのような世の中
のトレンドに僅かでも抗うものであり続けられたら良いものと思っています。
今号は畏れ多くも『仏陀の誤認』と題して、人々の幸福感について考えて
みた内容です。国際比較において、日本は賃金が上がっていないなどとよく
指摘されています。仮に賃金が上がっていても物価がそれ以上に上がれば、
より貧しくなっているということもあるかもしれませんが、それ以前に、今
号で紹介した事実に拠れば、収入面や各種の生活条件によって人間の幸福は
ほとんど左右されていないことが分かります。
考えてみたら当たり前のことではありますが、たとえば採用条件や社内の
動機づけなどの検討の場面では、どうしても賃金や生活待遇的な面に目が行
きやすいことに気づかされます。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂
戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その505:仏陀の誤認
バブル経済がもうすぐ始まる頃、私は20歳で初めて上京した。北海道では
見られないものを見ようと、地図にない「山谷」を訪れて二度ほど泊まった。
これほど多くの日雇い労働者が存在する場所を見たことがなかった。機動隊
が出動する暴動まで間近で見た。その頃の経済状況故か日雇い労働者の稼ぎ
は悪くない。当時月給が10万円ほどの私には、その金額を聞いて、単に蓄財
すれば人生の再スタートは簡単であるように見えた。
しかし木賃宿の生活から旅立って行く者は殆どいないのだと、炊出しのボ
ランティアの男性が教えてくれた。一定額まで稼ぐと多くの日雇い労働者は、
酒かギャンブルかセックスに使い果たしてしまうというのだ。極端な「ケ」
と「ハレ」だけに純化された人生。
「市川さん。社長はビジョンとかミッションとか、ウチのホームページに書
いているでしょ、見ましたよね。けどウチの会社は、社長のおじいさんの代
から続いた建築屋ですから。働いても格好の良いことなんかないし。ただ普
通に働いて暮らす毎日が待っているだけなんですよ。新卒を雇うのに、夢を
与えるって言ったってねぇ。何をしろってことなんだか」。
北関東のクライアント企業の勉強会で幹部が言う。この会社は広範な地域
に支社・支店を作り、安定した経営を続けている。業績が安定しているとい
うことは、相応に変革にも取り組んできたということ。業界で仕事をするの
に必須とは言え、社員には多種多様な資格も取らせてくれる。その他の福利
厚生も充実している。
「彼は、世界中を旅して、人々の生活と人々がその生活にどの程度満足して
いるかについてインタビューしてまわった。グリーンランドからケニアやカ
リフォルニアまで、どこに行っても、彼は、大半の人(ホームレスの人たち
を除いて)が、自分の生活に対して不満足というよりは満足していることを
見出した。彼は貧困のために体を売るしかなく、病気のために将来を奪われ
たカルカッタのスラム街の娼婦にまでインタビューした。彼女たちは、カル
カッタの大学生集団と比較して、実質上満足度が低かったとはいえ、(平均
して)生活を12に分けた各側面において、自分の生活は不満足というよりは
満足であるか、中間である(満足でも不満足でもない)と評価した。そう、
西洋にいる私たちから見ると彼女たちは耐えがたい貧困に苦しんでいるよう
に見えるが、彼女たちも長時間一緒に過ごす親しい友人を持ち、大半の人は
家族との接触を保っている。(中略)若き仏陀が憐れんだ四肢麻痺の人や、
老人、その他の階級の人々と同様に、この娼婦たちの生活も、内側から見れ
ば、外側から見るよりははるかに良いものなのである」。
ジョナサン・ハイトが著した、歴史上で考えられた人間の幸せの在り方を
総覧する『しあわせ仮説』に登場する心理学者ロバート・ディーナーの研究
に関わる一説。時間も場所も言語も文化も立場も超えて、“しあわせ”はし
ばしば誤認されやすいものと得心した。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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『萬屋のもっと深く愛してい』第2回「MA」
インターネットの普及により、購買活動などウェブ上の操作で完了するもの
が増え、見込み客が見えにくくなっています。さらに、限られた予算の中で、
ウェブを利用した告知を何かしら実施しようと、メールマガジンの配信やウ
ェブ広告の掲載などを行なっても、その効果が見えにくいことはよくありま
す。
MAを使うことで、限られた予算の中でもお客様への効果的なアプローチ方法
を探り、集客や売上向上を実現することができるのです。
MAとは、Marketing Automation(マーケティング・オートメーション)の略
です。お客様の購買データなどを残していき、どんどん記録を積み重ねてい
くことで、ウェブで自社サイトに来ている人の分析をしていく仕組みのこと
です。
MAを利用したツールは、お客様の行動を数値化し、予め設定した数値に応じ
て、相手の状況を判断し、個別のお客様に合わせた内容のメールを配信した
り、専用バナーを見せたりするなど、価格によってその機能は異なります。
導入を検討する際は、自社で必要な機能を見極めてから行なうことをお勧め
します。
また、導入する前段階として、自社のターゲットはだれなのか、どのような
手段でどんな情報を発信するのかなどの設計図が必要です。所謂「マーケテ
ィング・フロー」とも言い換えられ、それを作成することでより有効なアプ
ローチができ、集客や売上向上への効果も向上します。
最近では集計したデータを元に、分析結果まで出してくれるツールもあり、
上手く活用すれば非常に便利です。マーケティング・フローの設計などは萬
屋で支援することもできますが、日常業務の中で効果的なMAを実現するには、
自社に導入するMAツールをある程度使いこなせる社員がいるとより良いです。
このテーマについてさらに詳しいご説明が可能です。
ご希望の方は萬屋までご一報ください。
contact@kaisha-yorozuya.support
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』 小林よしのり 著
■『「地図感覚」から都市を読み解く: 新しい地図の読み方』
今和泉隆行 著
■『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』
ふろむだ 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
bizcom@msi-group.org
このメールマガジンは、
インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ )
毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け22年。
マガジンID:0000019921 (ナント、たった5ケタ)
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次号予告:
第506話 『妖精国家』 (2月25日発行)
本来の能力を活用せずに雇用され続けている人々のことを「雇用保蔵者」
と呼ぶようです。企業組織で活用されていない人的リソースについて考えて
みました。
(完)