『特別上映版 ワールドトリガー 2ndシーズン』

昨年のクリスマス当日からの公開作品です。約二週間経った木曜日の深夜12時過ぎ、正確には金曜日の午前0時40分の回を観て来ました。スタートから終電過ぎの時間で、おまけに、通称「武漢ウイルス」へのテスト陽性者が増加傾向であることによる緊急事態宣言下です。観客は私も含めてたった5人しかいませんでした。

23区内でどれぐらいの上映館があるのかチェックし漏れてしまいましたが、それほど多くないこととは思います。少なくとも新宿ではバルト9、1館だけです。そのバルト9では1日7回もの上映が行なわれていて、私が観に行った回が最終回でした。ウェブの映画紹介文章を見ると、「期間限定上映」ということでしたが、この日が最終上映日だったので、他館でも同日に上映が終わっているはずで、深夜帯で観るこのバルト9での回が全国でも最終の上映であったかもしれません。

観客が殆どいないロビーには1時間近く前に着き、開場までそこでPC仕事をしていました。館の方も暇であるせいか、通常10分前にかかる開場アナウンスが12、3分前に入りました。PCをシャットダウンして、バルト9で比較的頼むことの多い、ケイジャンチキンとペプシNEXを買いにカウンターに行きました。

カウンターに来ている客は私だけです。会計を済ませた時間は、レシートによると24時32分で、待っているのは私だけでしたが、いつまで経っても注文品が用意されません。注文時にも会計時にも「少々お待たせしますが大丈夫ですか」や「お客様の映画の上映は何分からですか」などの問いは一切なく、まるまる8分以上、他に誰もお客のいないカウンターで待たされる結果となりました。その間、二度、「間に合いそうにない」と苦情を言いましたが、「もうすぐです」の繰り返しばかりで、カウンター内のスタッフは何等きちんとした対応をしようとはしませんでした。

さらに、注文したものを受け取って、誰も入口に居ないシアター3に入ろうとした所、急いでいる私に、別のスタッフがあとから追いついて来て、「念のためチケットの確認を…」と迫ってきました。一刻を争う中で、そのようなことが必要なら、最初から入口に居ればよいはずですが、そうではありませんでした。その上、チケットを確認した後に、さらに狭い通路でそのスタッフは私の前に回り込もうとするので、「もう始まるから急いでいるんだよ」と言ったら、「じゃあ、特典は要らないということですね」と、それまで全く何の説明もしなかった特典のカードを出して見せて突然そう告げました。

「そういうものがあるのなら、もらうよ。だから早く行かせてくださいよ」と言ったら、「じゃあ、要るんですね」などと言って、カードを私に渡し、ただ去って行こうとするのです。つまり、「お前が急いでいるのだから、特典のことを知ることができないのも、特典を受け取れないのも、おまけの勝手であるのだからな」という前提なのでしょう。非常に不愉快なスタッフです。これほどギリギリになったのは誰のせいかと考え直し、私が去って行くスタッフに「これ(フード類のこと)で散々待たせるからこういうことになるんでしょうが…」と告げたのですが、スタッフは振り返りもせず、私の発言を無視して去って行きました。当然ですが、この間、二人のスタッフはどちらも、「申し訳ありません」などと言いはしませんし、「お急ぎでしょうから、映画終了後にカウンターにお越しください」などとも言いませんでした。

気が狂った対応もあるモノだと思い、気持ちを立て直すのに少々時間がかかりましたが、たった45分しかないのに、1500円もする作品の鑑賞を何とか落ち着いて行なうことができました。ちなみに、少々年始で仕事がバタついていたので、4日後の11日にバルト9運営会社の非常に見つけにくい問い合わせフォームに事の経緯を書き込みました。(改めて見てみて分かりましたが、バルト9の劇場のサイトには問い合わせや苦情の連絡の方法が見当たりません。すべて本体の運営会社に行かなくては見つからないのです。)

苦情の分類にはしましたが、謝罪を要求するのではなく、「御社としては来館者に対して当たり前の接遇の中のことであるのか、是非お聞かせいただきたいと考えています」と結んでみました。14日の夜7時半に返信が来て「この度は、当館従業員の不遜な態度と、不十分なご案内により市川様を不愉快なお気持ちにさせてしまいましたことを、心よりお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。」との謝罪を軸に、抜けのない大手企業的な非常に丁寧な対応の内容が書かれていました。当日の異常な対応に対して「お客さん、何怒ってんの。別に普通でしょ」とか言われたどうしようかと思っていましたが、まともな神経の会社のようで、安堵しました。(何を要求している訳でもありませんので、そんな謂れもありませんが、ただのクレーマー扱いされなかったのも、まあ安堵ネタではあります。)

そんなこんなの慌ただしい状況で最後列の座席について見渡し(、終了時にもやや明るくなった所で確認すると)、私以外の4人の観客は全員単独客で、男女きれいに半々でした。女性は30代ぐらいでばらつきが少なく、男性は平均なら間違いなく女性より上で、私も含めて年齢的ばらつきが大きいように感じました。

この『ワールドトリガー』は私がかなり好きなマンガ作品です。2013年に連載が開始されて、3年目にして作者体調不良のため休載になりました。今から振り返るから休載ですが、それがそのまま消えてなくなってしまうのか、復活の余地があるのか、全く分からないままの状態で、ほぼまる二年が過ぎました。私はコミックの出版状況を知るのに「ベルアラート」というサイトを使うことがありますが、他の消えてなくなる作品群はベルアラートでも連載中のステータスから外されますが、『ワールドトリガー』はコミック次作の発行が「未定」となっただけで、消えることがありませんでした。

作者の体調不調は「頚椎症性神経根症」という診断で、復帰も危ぶまれる状態になったのは、この作品があまりに売れすぎて繁忙を極め、おまけに編集部がアニメ放映開始に合わせて、コミック2ヶ月連続新刊発行し、さらに、誌上でもブーム盛り上げのために、カラーページを乱発するようになって、作者に滅茶苦茶に負荷をかけたからだと言われています。作者も編集部もこのポイントについて明言していることは非常に稀ですが、事実関係としてほぼ本当だと私も認識しています。

このファン不在の煽りマーケティングの結果の休載、連載中止も危ぶまれる状況は、ファンとして非常に腹立たしく、「商品/サービス購入=ロイヤルティ投票」の原理から、実質30年以上読み続け、ネットのない時代の留学中も『ジョジョの奇妙な冒険』だけ切り抜いて、1ヶ月に一度実家から4話を郵送してもらっていた購読を、『ワールドトリガー』の連載中止が決定したら、辞めてやろうと決意して、(ベルアラートの表示を心の支えにして)二年間毎号読み続けていました。

そして、とうとう2018年に連載が再開し、5話を『週刊少年ジャンプ』に掲載した後、作者に負荷を掛けないよう『月刊ジャンプスクエア』に場所を移し掲載されることになり、現在に至っています。私が買い続けているコミックのタイトルは幾つもありますが、コミックの巻数で言うと現在回続けている中では『ジョジョの奇妙な冒険』に次いで二番目です。『ジョジョの奇妙な冒険』ほどではないと思いますが、マニアックなファン層に支えられている傾向が強い作品だと思います。設定はファースト・ガンダム程度の複雑さを持つ程度ですが、連載スタート時点から一切変わらない世界観の中で、膨大な数の登場人物がいて、彼らの性格や特徴、相互の人間関係が全く矛盾のない状態で維持されている非常に稀有な魅力を持つ作品です。

私が愛読している2016年発行の『ワールドトリガー オフィシャルデータブック』でも作中の組織「ボーダー」の登場隊員は100名以上存在しますが、私は全員の顔と名前(少なくとも苗字だけ)と所属隊名、さらにポジション(アタッカーやスナイパーなど戦闘時に果たす役割)もほぼ完ぺきに記憶しています。さらに、主人公の一人である三雲修は戦闘能力的に必ずしも恵まれていない条件の人間なので、如何に勝つかを常に模索し、持てる力をその戦略の実現に集中させるという姿勢で、戦闘の戦略のみならず、私の商売の経営にさえ通じる、ランチェスター的な戦略論やクラウゼヴィッツの戦争論などが、かなり明瞭な形で戦闘に採り入れられていて、唸らせられます。

この作品のアニメにはいつもの如く、全く関心が湧きませんでした。私の中でその傾向が少々変わって来たのは、昨年秋に劇場で観た『BURN THE WITCH』からです。このブログの感想にはこのように書いています。

「私はコミック作品から入ることが多く、それで十分に知っている作品のアニメはあまり見る気が湧きません。声優の声の質がこちらの持っているイメージに合わないことが主たる理由です。たとえば、『ジョジョの奇妙な冒険』は、かなりファンである方だと思いますが、全くアニメに関心が湧きません。まず一般に人気と言われている第三部がそれほど好きではないということも理由ですが、それ以上に、特に承太郎の声が私にはあまりにも低すぎるように感じられるからです。

あとは、効果音や何かの戦闘技が炸裂する際のエフェクトなども、違和感が湧くこともよくあります。たとえば『鬼滅の刃』も私は結構初期の段階からまあまあ展開を語れるほどの理解をしていますが、アニメのPVを見た瞬間に、主人公ら三人の声を聞いて湧いた違和感が非常に大きかったので、全く関心が湧かない状態でした。さらに、PVをどこかの店頭のモニタで少々観ていたら、剣術の技がコミックのコマの中で静止画で演出される場合では問題を全く感じませんでしたが、アニメで観て波やら風やらが実際に迫ってくる状態の演出にはかなり無理を感じました。

こういうことがどうも気になるので、コミックでそこそこ好きになった作品のアニメ作品はあまり見る気がしません。寧ろ、実写化作品の方が余程乗り気になりやすいと思います。そういう意味では、今回の作品を観る気になったのは、或る意味例外的ですが、幸いにしてこの作品はまだ『週刊少年ジャンプ』での掲載回数も少なく読み込むほどの量でもなく、その結果、キャラクターのイメージも明確に私の中にでき上がっていませんでした。

アニメになったこの作品を見て良かった点も幾つかあります。一つはリバース・ロンドンの街並みは、かなり美しい背景映像となって描かれていて、コミックの際に比べて世界観がより鑑賞に足るように思えました。さすがに、『まどマギ』のような芸術性はないものの、背景風景の美しさは十分あります。

もう一つ、アニメで観たメリットがあります。少なくとも私には連載で読んだだけでは細かい設定がが拾いにくい内容でした。たとえば、シンデレラと呼ばれる伝説のドラゴンが遠目に見ると羽から鱗粉のようなものをまき散らすと、それらが大爆発を起こすこととなっています。ところが遠目に見た鱗粉のようなものは、実際には結構サイズが大きく、スマホ大ぐらいあります。誌上で読んだ際には(私があまり注視していないということが主要因とは思いますが)その辺のサイズ感が分からないままでした。つまり、私には遠目でシンデレラが鱗粉をばらまき周囲で大爆発が起きているのと、何かスマホ大の塊が主人公達の鼻先に飛んで来て、主人公達が大騒ぎをしているのが、関連のある出来事の様子には見えなかったのです。それが今回のアニメで明確にその攻撃の構造が分かりました。

主人公達の上司は昼行燈のようなおっさんですが、実際には視認さえ難しいような離れた所から問題のシンデレラを一撃で打ち倒せる『幽遊白書』の霊丸のような技を繰り出せます。本部の建物の中から、ガラス窓を貫通してシンデレラを仕留めます。この昼行燈風のおっさんはその実力を隠しておきたいようで、そのガラスには弾痕が小さな穴になって残っていて、そこになぜか分かりませんが付近にあった段ボール箱を積んで穴を誤魔化しておきます。コミックでは、おっさんの後ろに窓脇の段ボールが見えるだけで、それが何を指しているのか分かりませんでした。アニメでは、その段ボールを避けて弾痕が発見されるシーンがきっちり盛り込まれているので、ここでも私は「ああ。そういうことだったのか」となりました。

他にも、登場人物達がぼそりという伏線めいた一言なども、かなりの量が私にはイミフなままに掲載作品は通り過ぎていたように思います。それらの殆どは今回のアニメを観て氷解しました。「ああ、こういうことだったのか」が観ている間に10回近くあったように思います。」

『BURN THE WITCH』のような、原作マンガにストーリー展開が非常に忠実であるという前提で、アニメを観ても声優の声質や映像上の効果に違和感があまり湧かず、さらにアニメで観るから余計に理解が深まるようなケースもあるということが分かったのが、この時の最大の収穫であるかもしれません。そこで、今回はかなり予習をしました。

動画サイトでTVアニメの動画を見て、声優の声質に違和感が湧かないかもチェックしましたし、物語の忠実度も検証しました。今回の劇場作品は『映画.com』によると、「2021年1月から開始となるテレビ放送に先駆け、第1話と第2話に劇場オリジナル映像を加えて期間限定上映。」とのことなので、完全に私の知っている物語であることを確認してから観に行くこととしました。

非常に不思議なのは、ほとんどの映画紹介サイトのサムネイル画像には主役級の空閑遊真のアップ画像ですが、実際には劇中にほぼ全く登場しません。最初と最後に三雲と空閑の二人がペープサート風のキャラで登場する寸劇がありますが、そこに登場するだけです。少々ダマシ的に感じられますが、ファンなら本作が『ガロプラ編』と聞いただけで、そこに二人の活躍の場がないことはすぐにわかるので、まあ好とするかと思えます。

映画を観てみて、話し動く登場人物達は新鮮でした。登場人物の多さ故に、一人ひとりの発言量が極めて少ないということも、声質に違和感が湧きにくい理由かもしれませんが、全体を通して、「ああ。アニメではこんな風になるんだ」とか「シールドの色ってこういう感じなんだな」とか、小さな発見や感嘆が細かく連続するような45分間(実際の本編部分はもっと短いはずですが)でした。

特に女性隊員では、私が好きな那須玲隊長が好きなのですが、登場場面が偏っていて、出てこない時にはずっと出て来ません。その彼女が動き話す場面が(45分の中では比較的)ふんだんに見られたのが最も大きな収穫かもしれません。

観る価値は十分あったと思います。しかし、DVDで欲しいかと言われればかなり微妙です。ふと考えなおしてみると、TVアニメでは原作コミックには存在しないオリジナル・ストーリーの『逃亡者編』があることに気づきました。この劇場作品のDVDは必要ありませんが、違和感なくアニメ作品が観られることを確認できたので、TVアニメのDVDのうち『逃亡者編』の部分だけ入手したいと思います。