21周年記念特別号 後篇

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経営コラム SOLID AS FAITH 21周年記念特別号
『自然派宣言』
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序(前後篇共通) 『ザ・コンサバ・ライフ』

後篇 『企業組織と女性のキャリア観』
 第五章:寄ってはいけない大樹の陰
 第六章:女性の非活用(1) 女性の社会進出編
 第七章:女性の非活用(2) 女性のキャリア形成編

後篇 あとがき

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☆注意:お読みになる際には、枚数がかさみ恐縮ながら、プリントアウトの
上お読みになることを、心よりお奨め申し上げます。
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序(前後篇共通) 『ザ・コンサバ・ライフ』

 自分が所有しているものを、どんな風に使っても、それが合法で、おまけ
に公序良俗にも反していないのなら、特に大きな問題がありません。持ち主
が自由にできます。では、農業用のトラクターの持ち主が一人いました。ま
だ成人する前に相続でもらっていて、農業を継いでもいません。トラクター
の持ち主になりましたが、「俺は消防団員になりたいんだ」と言って、トラ
クターにドラム缶か何かを据え付けて水を入れ、消防車代わりに使っていた
ら、どうでしょうか。どんなふうに使っていても本人の自由ですが、効率も
悪いでしょうし、余計なコストもかかりそうですし、仮に他の団員は消防車
を持っていたら、それと伍して消防活動をするのにはかなり無理があること
でしょう。それでも、そうしたいのなら、それは本人の勝手です。

 構造主義という言葉があります。大雑把に言ってしまうと、世の中には
「構造」というものが存在していて、それによって私たちの考え方やモノの
見方や、行動そのものも規定されている…といった考え方です。例えば、母
国語で考えをまとめる以上、母国語で表現できない考え方はもともと発想の
中に浮かぶことがほとんどありません。普通こういったことを意識しません
が、私たちは「構造」によって決められたことの範囲を抜け出ることが非常
に困難なのです。困難なことに挑めば、そこには必ず無理が生じます。トラ
クターで消防活動をする人間は、かなり色々な無理が必要であることでしょ
う。

 人間には色々な「構造」が覆い被さっています。その最たるものが、遺伝
子的に決まっていることや脳の働き方などです。人間が今の形になったのは、
諸説ありますが、概ね200万年前ぐらいです。ホモ・ハビリスと呼ばれる、
初めてのヒト属の生物種の段階からです。それ以前に存在していた、チンパ
ンジーから明らかに分岐して人間に近くなった猿人と異なり、ホモ・ハビリ
スは石器も使っていました。私たちはクロマニヨン人らの新人類の末裔と考
えられていますが、その新人類の登場でさえ20万年前です。

 私たちの文明が成立したのは、概ね紀元前5000年前ぐらいです。つまり、
私たち人類の歴史をクロマニヨン人の時代から計算すると、文明が存在して
いるのは歴史のラスト3.5%に過ぎません。私たちの体の構造が決まってから、
文明生活をしている期間を計算すると、0.35%にしかならないのです。仮に
人類の歴史を1年と計算すると、前者は二週間にも満たない時間です。そし
て、後者は大晦日1日ちょっとの時間でしかありません。ほとんど丸一年を
通じてカラダとしては最適化された生活をしていたのに、最後の一日で、突
如として違うことをやろうとしても、無理が生じるのは当たり前と誰もが気
付くことでしょう。

『経営コラム SOLID AS FAITH 21周年記念特別号』は、『自然派宣言』と題
して、私たちのカラダ全般の仕組みや長く続いた太古の社会の仕組みに、逆
らうことの少ない現代社会での生き方を色々と考えてみます。それは、手放
すことのできないトラクターを持っている以上、農業をやろうという、普通
に考えて最も無理のない生き方なのです。

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後篇 『企業組織と女性のキャリア観』

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第五章:寄ってはいけない大樹の陰

☆☆
 先程紹介したロビン・ダンバーという人類学者は(中略)
 霊長類の大脳新皮質と平均的な群れの大きさとの間に相関関係があること
に気づき、38種類の霊長類の脳の大きさに占める大脳新皮質の割合と平均的
グループ規模とから回帰方程式を作成。そして、平均的な人間の新皮質の割
合から、人間が円滑に安定して維持できる関係は148人(四捨五入して150
人)だと推定した。
 そして、150という「ダンバー数」を超えると、グループの団結と安定を
維持するためには、より拘束性のある規則や法規や強制的なノルマが必要に
なると考えられている。
(中略)

 たとえば、フェイスブックのCEOの右腕ともいわれるクリス・コックスは
「2005年にフェイスブックに入社したときには社員は100人より少なかった
…他のベンチャー企業のCEOとも話すことだが、150人という数を超えると、
奇妙なことが起こり始める。コミュニケーションや意思決定のためにより多
くの組織上の仕組みを必要とするようになる」と言っている。

 動画配信サービスで契約者数が世界で1億人を超えているネットフリック
スの元人事担当者も、同社に入社した98年(当時、社員は30人しかいなか
った)を振り返って、「(150人を超したら)リーダーは、自分たちはどこ
に向かっているのか、何をしようとしているのかを、定期的に明確にする必
要が出てくる」と、企業の戦略、規範、価値を従業員に浸透させることが難
しくなると語っている。
■『経済の不都合な話』 ルディー和子著

☆☆
 19世紀末、社会学の創始者の一人であるエミール・デュルケームが、学術
的な奇跡を成し遂げた。彼はヨーロッパ中、そして世界中からデータを集め、
自殺率に影響する要因を研究した。彼の発見は、一言でまとめると束縛であ
る。どのようにデータを解析しても、社会的な束縛や絆や義務が少ない人ほ
ど、より自殺する率が高かった。(中略)デュルケームは、人には人生に意
味と構造を与えるために、義務と束縛が必要であると結論づけた。(中略)
100年間のさらなる研究により、デュルケームの診断が正しかったことが証
明されている。もし、誰かがどれぐらい幸福で、どれぐらい長生きするかに
ついて予測したければ(カッコ内説明略)、その人の社会関係を調べるべき
である。強い社会関係を持つことは、免疫システムを強め、(禁煙する以上
に)寿命を延ばし、手術からの回復を早め、うつ病や不安障害に対するリス
クを軽減してくれる(中略)社会的サポートを与えることに関する研究によ
ると、他者の世話をすることは、援助を受けるよりも、しばしば有益である
ことが分かっている。私たちには、他者と相互作用し、結びつきを持つこと
や、持ちつ持たれつの関係や、所属することが必要である。
■『しあわせ仮説 古代の知恵と現代科学の知恵』 ジョナサン・ハイト著

★★★
 大手企業組織内の人間疎外の構造は、チャップリンの代表作『モダン・タ
イムス』の古典的事例に始まり、多くの創作物のテーマとなっています。ダ
ンバー数の発見は、その人間疎外が起きない組織規模を定義したと考えるこ
とができます。それは、多分、太古から人間が共同体として生活していた際
の自然な集団規模と一致しているのかもしれません。
 人間は小さな共同体での暮らしが基本です。そこでは、個々の個体が共同
体から求められた役割を果たしつつ、個人の自由など謳歌する余裕もなく、
協力して生活を営んでいたと考えられます。その結果、集団内の人間関係に
よって束縛される方が、人間には望ましい状態であることになったのだと考
えられます。
 大手企業組織内には、無機的な拘束はあっても、個々の存在を尊重した上
での役割や責任による束縛はあまりありません。学校の一学級と同じぐらい
の組織規模の中小零細企業では、濃密な人間関係が否応なく内部の人間に強
いられることになります。デュルケームによれば、それこそが、人間にとっ
て望ましい環境に近いことになります。
『モダン・タイムス』では主人公達は大手企業組織からキャバレーの小組織
の職を得て生きていこうとしますが、犯罪歴からその立場を捨てざるを得な
くなります。そして、自由を求めて旅立って行くのです。けれども、それは
大いなる勘違いの選択であった可能性が高いようです。

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第六章:女性の非活用(1) 女性の社会進出編

☆☆
「生命が出現してから10億年、大気には酸素が徐々に増え、反応性に富む酸
素は様々な元素を酸化するようになり、地球環境に大きな転機がおとずれた。
気候と気温の変化もよりダイナミックなものとなる。多様性と変化が求めら
れた。
 メスたちはこのとき初めてオスを必要とすることになったのだ。
 つまり、メスは太くて強い縦糸であり、オスは、そのメスの系譜を時々橋
渡しする、細い横糸の役割を果たしているに過ぎない。生物界においては普
通、メスの数が圧倒的に多く、オスはほんの少しいればよい。アリマキのよ
うに必要なときだけ作られることもある。
 本来、すべての生物はまずメスとして発生する。なにごともなければメス
は生物としての基本仕様をまっすぐに進み立派なメスとなる。このプロセス
の中にあって、貧乏くじを引いてカスタマイズを受けた不幸なものが、基本
仕様を逸れて困難な隘路へと導かれる。それがオスなのだ。
 ママの遺伝子を、誰か他の娘の所へ運ぶ「使い走り」。現在、すべての男
が行っていることはこういうことなのである。アリマキのオスであっても、
ヒトのオスであっても。」

「これは厚生労働省が公表している主要死因別死亡率の一覧表である。10万
人あたりどの死因で何人が死ぬかを男女別に見たものである。(中略)
 どの原因でも男性が際立って多く死んでいることがわかる。悪性新生物
(がん)は先に年齢別に詳しく見てきたとおりであり、このように標準化人
口をとってもその傾向は同じだ。心疾患、脳血管疾患でも高い。肺炎のよう
に病原体が外部から侵入してくる病気についても男性の方が2倍以上も死に
やすい。
 つまり男はがんになりやすいだけでなく、感染にも弱い。不慮の事故と自
殺についても男性が3倍近い。ただしこの二つの死因につては環境因子の影
響が大きいかもしれない。男性の方が危険な仕事に従事しているケースが多
いだろう。社会的ストレスが大きいといった環境的要因も考慮すべきではあ
る。
 それでも男性はより危うく、より脆いことは確かなのだ。ここには示され
ていないが、女性の死因で男性をわずかに上回っているものがひとつある。
それは老衰だ。女は男よりも長く生きながらえ、そして天寿を全うするので
ある。」
■『できそこないの男たち』 福岡伸一著

☆☆
 空間認知力が高い男性脳の拡張感覚は、バイクや車や道具にまで及ぶ、と
前述した。自分の神経系の一部のようにメカや道具を操る感覚である。それ
はある意味、妄想力だが、結果、奇跡のようなことが起こる。1000分の1秒
のような人間業とも思えない単位の時間を征服し、手指の感覚一つで0.何ミ
クロンという精度を生み出していく。
 この妄想力は、女性相手にも発揮される。そもそも男性脳は、女性の顔な
んか詳細に観察していない。いくつかのポイントを注視し、そのポイントを
勝手につなげて、全体像を脳裏に描くのである。
 見えない(見ていない)部分を脳が勝手につないで、全体像を見て気にな
ることは、女性脳だってする。たとえば、アルファベットKの左下のブロッ
クが隠されていても、私たちは、それがKであるように見る。
 しかし、男性脳と女性脳は、そもそも注視する点が違う。男性脳は、空間
全体を素早く把握するために、空間全体をまばらに見て、全体を把握する。
特に奥行き方向をしっかり注視する。遠くにあるもの、動きのあるものを認
識するのに長けたものの見方である。
 一方、女性脳は、ものの表面をなめるように見て、針の先ほどの変化も見
逃さない。比較的近くにあって、動きが緩慢なものを注視するのに向いてい
る。
 このため、女性は、異性の顔も綿密に観察している。「この人、イケメン
風だけど、鼻の下が間延びしている。眉毛の生え方が好みじゃないかも」ぐ
らいは瞬時に把握する。
 対する男性は、姿勢の良さや、立ち居振る舞いの美しさをしっかり見抜く
ものの、顔の評価は、比較的鷹揚だ。ふっくらしたくちびると、優しい目尻
と、あでやかな髪などの三点セットで美女だと思い込める。注視した点をつ
なげた妄想で見ているんだものね。」
■『アンドロイドレディのキスは甘いのか』 黒川伊保子著

☆☆
 男女の社会的な性差を示す「ジェンダー・ギャップ指数」で日本は121位
と世界最低クラスだが、男女平等がもっとも進んだ北欧諸国でも女性の平均
的な収入は男性より低い。#MeToo運動発祥の地アメリカでも、政治家や企業
の役員になる女性は男性より少なく、ヒラリー・クリントンは「ガラスの天
井」と批判した。
 男女が完全に平等なら、収入も経営者の数も同じになるはずだ。--こう
考えるのなら、法律上は平等でも「見えない差別」があるのだから、それを
変えていかなくてはならない。
 それに対して、競争に対する志向にちがいがあるとしたらどうだろう。
 あるひとは競争が大好きで、寝る間も惜しんで働くのを生きがいにしてい
る。別のひとは競争に興味がなく、趣味に没頭したり、家族と過ごす時間の
方がずっと大事だ。その結果、この2人の収入に差がついたとしても、誰も
これを「差別」とは思わないだろう。
 やっかいなのは、さまざまな調査で、「男は競争を好み、女は競争を避け
る」という結果が出ていることだ。だとすれば、男女の「格差」は本人の自
由な選択の結果ということになる。すなわち、なんの問題もないのだ。(中
略)
 これは進化論的には、次のように説明できる。
 ヒトの脳のOSが設計された旧石器時代には、男は「狩猟者」で、仲間と競
争しながら素早い判断で獲物を仕留めるように進化した。それに対して女は
「採集者」で、仲間と協力しながら、食用になる植物を選ぶように進化した。
■『女と男 なぜわかりあえないのか』 橘玲著

★★★
 よく管理者以上のポストに女性が少ない企業組織の状況を差して「男性社
会の論理」で動いているということがあります。橘玲の説明に拠れば、男性
は競争する「狩猟者」で、いつも集団から物理的に遠いところにいます。そ
れに対して、女性は「採集者」で協力して集団を構成しています。ダンバー
数を越えた人間疎外の大手企業組織を「男性社会の論理」と呼ぶのは、一面
でしか正しくありません。確かに男性の論理による競争の場所になっていま
すが、本来の社会は女性が集まる集団の方です。男性は散り散りに分かれて
競い合っているので、集団から追い出された立場なのです。
 追い出した女性の方は、本来生物の“あるべき存在”で、男性の方はあく
までも必要に応じて仕方なく作られた“紛い物”の生物です。男性は女性に
使役され、集団の外で勝手に競争するように仕向けられています。勝ち残っ
た男性だけが集団に戻り、強い遺伝子を女性にばらまくことができるのです
から、男性は女性によって選別されていると見做せます。
 女性の役員が少ないのなら、どんどん女性の起業家が創業すれば良いだけ
です。既存の中小零細企業においても、オーナーの一存で柔軟に働き方を決
められますし、個別対応の福利厚生の余地も広がります。役員にも就任しや
すいことでしょう。
 黒川伊保子が解説する男女の大きな相違を全く度外視して、紋切り型の
「女性の社会進出」という言葉が語られる時、その「社会」は多くの場合、
大組織のみを指しています。しかし、ダンバー数を超えた大組織は実は男性
が本来の生物集団から追い出されて競争を続ける場です。本来の人間のあり
かたからすると、そんなところを「社会」と見做す方がおかしいとも考えら
れます。
「(大手)企業における女性の活用」、「社会への女性の参画」のような表
現をよく聞きます。本来女性が社会そのものですから、活用も参画も必要あ
りませんし、活用や参画させられる立場でもないはずです。この表現ほど女
性の本来の立場を否定し女性を貶めているものはないように解釈できるので
す。
 平塚雷鳥は有名な「元始、女性は太陽であった」という言葉を残していま
す。元始のみならず、女性は今でも、生物の基本であることに変わりないの
です。

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第七章:女性の非活用(2) 女性のキャリア形成編

☆☆
「そういう意味でも、私は、結婚の相手なんて誰でもいいと思ってしまうの
です。こういうと、大変誤解されて、ひどい発言だ、と言われますが、最終
的にどんな人と結婚しても、そんなに大差はないのではないかと思うところ
があります。結婚に大切なのは、この人と生活してこうと思う意思ではない
でしょうか。この人と、作り上げていくのだ…と。ただ、誰かといっしょに
暮らしていく、という決定をするのは、とてもエネルギーのいることです。
そこで好きな人と結婚するのならば、好きだ、という勢いにのって決定しや
すい、というところはあるでしょう。そして、やっぱりとても好きな人と暮
らすことはとても楽しい。けれども、なかなか自分で好きな人を見つけられ
ない人もいるし、見つからない人もいるでしょう。見つからないから一人で
いればよい、というのではなくて、ご縁があった人とは結婚してみたら、と
言っているのです。」

「一人の男としては全員まるで違うけれど、制度的な「夫」というものにな
ったら、そんなに個性なんか発揮しようがないから、どうしたってみな似た
ようなものになる。一人の人間として見た場合、スケールの大きいやつと器
の小さいやつはものすごい社会的能力の差があるけれども、いい夫と悪い夫
の差はそれに比べるとほんのわずかですよね。(中略)
 学生たちに「早く結婚しろ」とせっつく理由の一つは、いい男から順番に
売れていくからなんです。いい男ほど結婚が早いというのはぼくの経験的確
信なんです。だって、どんな女の子とでもそこそこハッピーになれる才能が
ある、というのがいい男の条件なんだから。」

「「結婚しろ」というのは、具体的にいうと、オトナになったら、誰でも性
交渉の相手を持っていた方がいいでしょう、ということです。もちろん、性
交渉の相手は多様であるだろうし、一対一でなくてもよい、という考え方も
あるでしょう。ただ、マジョリティには「結婚」というのがいちばん手っ取
り早く、まわりも納得し、安定しているし、地域に貢献できるし。」
■『身体知 カラダをちゃんと使うと幸せがやってくる』
 内田樹・三砂ちづる著

☆☆
「誕生後も卵子は、自滅して数が減っていき、思春期までに出生時の10分の
1に減少。つまり、初潮を迎える時には、当初700万個作られた卵子はすでに
20万個に減っているのです。そして女の子が初潮をむかえ、脳下垂体から分
泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の刺激を受けるようになると、卵子は順
番に長い眠りから目を覚まし、成熟のプロセスを再開します。」

「「買ってきたばかりの新しいミカン箱をあけた時は、箱一杯に新しいミカ
ンが入っていて、どのミカンも食べられますよね。でも、時間が経てば、数
は減っているし、残っているミカンも傷み出して食べられないものが出て来
ます。これが、年齢が高くなった人の卵巣なんです。その箱のミカン全部が
だめではなく、探せば、いいミカンがあります。ただ、だんだん探すのが大
変になっていきます。」」

「それによると、どの年齢でも、妊娠しやすい日は排卵日の5日前から排卵
日当日までの計6日間で、最も妊娠した人が多かったのは「排卵日の2日前」
でした。
 そのベストの日にセックスがあった場合、19~26歳の女性はなんと半数以
上が妊娠しました。ところが、その値は女性の年齢が5歳上がるごとに確実
に低下。35歳を越えた女性では、3割しか妊娠しませんでした。35歳以上の
女性は、20代前半の女性に較べると、妊孕性が半分になっています。」

「アンチミューラリアンホルモン検査は、卵子の在庫にあとどれぐらいのゆ
とりがあるかという「未来」がわかります。未来を知ることは、人間にとっ
てとても怖いことに違いありません。しかし、未来を知っていれば、現在の
身の振り方が変わることもあります。(中略)
 早い人では30代でもう卵巣の様子が違ってくるということは、かつての日
本がずっとそうしてきたように、女性の生殖能力の区切りはやはり30歳なの
かもしれません。今、30歳ではパートナーがいない人もたくさんいるのが現
状ですから、みんながそれを知ることが幸せなのかどうかはわかりませんが
…。
 若い人が産み時をプランするためにアンチミューラリアンホルモン検査を
受けるケースは、表面的には、まだないようです。しかし将来は、しばらく
は避妊してキャリアに生きようと考えた若い女性は、まず自分の卵巣の状況
を調べることが常識となる日が来るのかもしれません。」
■『卵子老化の真実』 河合蘭著

☆☆
「動物はメスがオスを選ぶのが原則。メスは一度妊娠したなら、出産、子育
てと次に子を産むまでに随分時間がかかる。メスは一生に産む子の数に限り
があるので、どうせ産むなら質のよいオスの子を産みたい、ということで慎
重に相手を選ぶ。
 片やオスは、一度射精しても、すぐに精子が回復し、条件さえ整えば、無
限と言っていいくらいに子を作ることができる。よって数打ちゃ当たる方式
でどんどんメスにアタックすべきである。
 浮気の場においてもこの原則に変わりはありません。男は事あるごとに浮
気を試みるが、女は滅多なことで浮気はせず、しかもこれぞと思った、少な
くともダンナよりもいい男しか相手にしない。
 それもたいていは排卵期で(何しろ浮気の目的はダンナよりいい男の遺伝
子を取り入れることで、ただの楽しみではない)、アリバイづくりのために
無意識のうちにダンナとも交わる。そしてこれまた無意識のうちに、浮気相
手にはより受胎の可能性の高い日を、ダンナにはそれよりも低い日を用意し
ている。もし女自身がそれを知っていたなら、自分がしようとしていること
が、いかに恐ろしいかと気づき、とてもではないが実行できなくなってしま
うようなことを、無意識のうちに行ない、可能ならしめているのです。
 これらはベイカーらが一九八九年、イギリスの女性誌『カンパニー』で、
三六七九人の女性(下は一三歳の女の子から上は七二歳のおばあちゃんまで)
にアンケート調査した結果から明らかになりました。」

「女に、月経周期の記録とともに、どのくらい遠出をしたか。と一人で過ご
した時間とを記録してもらう。すると、彼氏がいるかどうかで、全く逆の現
象が起きてしまう。
 彼氏のいる女は、排卵期にはより遠出し、一人でいることが多い。片や彼
氏のいない女は、非排卵期に遠出し、一人で過ごすことが多いのです。
 また、彼氏のいる女は、排卵期に彼氏と過ごす時間が少ないのに対し、非
排卵期にはちゃっかり彼氏と過ごしているのです。彼氏のいる女は、もし浮
気して子ができても、その子を引き受けてくれる軟弱な男を一人確保してい
るので、排卵期に大いに男漁りの冒険に出掛けるというわけ。
 彼氏のいない女は、もし行きずりの男と交わり、子ができてしまったら大
変なので、排卵期には大人しくしている。しかし、非排卵期には大いに活動
して、彼氏候補を探そうというわけです。その際、交わっても子ができにく
いのでその点は安心して行動できます。」
■『女は男の指を見る』 竹内久美子著

☆☆
 なるほど、すぐに結婚したがる男というのは、ケータイ小説の男に顕著に
みられる傾向の一つである。『星空』というケータイ小説は、出会って二ヶ
月で翼(男)が主人公の流奈に「俺は流奈と結婚するぅ~!!」と、結婚の約
束をしている。ちなみに翼は十八歳、流奈は十三歳にも拘わらずである。
『恋空』のヒロの場合も、まさにその典型をなぞっている。『恋空』におい
てヒロが美嘉に結婚の約束をするのは、二人が付き合い始めて約三ヶ月が過
ぎた高校一年生の十二月のこと。美嘉がヒロに妊娠を(先ほど取り上げた図
書館でのセックスのときの成果である)を打ち明けたその返事が事実上のプ
ロポーズだ。
(中略)
 妊娠をモチーフに扱う小説が「妊娠小説」であるなら、ケータイ小説のほ
とんどは「妊娠小説」である。しかし、その多くは表面的には「望まれる妊
娠」である場合が多い。ケータイ小説のヒロインの恋人たちは、多くの場合
ヒロインの妊娠を望み、育てるための自己犠牲を口にするのだ。」
■『ケータイ小説的。“再ヤンキー化”時代の少女たち』 速水健朗著

★★★
 少子化に歯止めがかからないと言われ続けています。「若者は将来に不安
があるから子供など作っていられない」とか、「そんな不安ある社会を作っ
ている政府が悪い」などと政府の少子化対策の不備を論う論調をよく耳にし
ますが、多分大きな間違いです。太平洋戦争後期、B29が頻繁に東京を焼き
尽くし、未知の大量破壊兵器ピカドンが二都市を焼失させた直後でも、たく
さん子供は生まれていました。
 東名阪以外の地域では、ダンバー数を超える大手企業の構成比も、核家族
の構成比も東名阪に較べて一般的に見れば少ないでしょう。つまり、職場も
家も小さな共同体状態の傾向が強いはずです。そのような地域では、ヤンキ
ー化が進み、本来の受胎に適した年齢での結婚や出産の傾向も見られると、
速水健朗は指摘しています。
 子育ての経済的負担が問題とも言われますが、それも特に東名阪に多い核
家族のケースがより強く意識されているのかもしれません。本来、生物とし
ての人間は、集団で子育てを行なっていました。それどころか、男性のみな
らず女性も、次々とより優れた遺伝子を求めてセックスを行なうようにでき
ていると竹内久美子が説明しています。小集団の中の完結した人間関係なら
次々と受胎の相手を見つけることも、その結果の育児も、達成しやすくなる
ことが想定されます。
 一方、大都市圏では悪条件ばかりです。働き場所は人間選別競争の場であ
る大企業。暮らす場所は物価も高く、小さすぎる集団での生活が強いられる
核家族。さらに、前述のような非大都市圏から主に大学進学の段階から大都
市圏への移住。そのまま競争の場の大企業に女性がキャリアを求めると、最
も出産に適した時期を逃しやすい展開になります。
 そして大都市圏を中心に、「競争」の概念は結婚にまで波及し、本来、良
い遺伝子を次々と得ていくようにできているのに、マッチングの難易度も上
がります。これでは少子化になるのは必然です。
 生物の存在目的は「種の保存」そのものでしかありません。そのようにで
きている脳と肉体のありようを無視した生活をすれば「存在の維持」が難し
くなるのは当たり前のことなのです。
 女性が出産適齢期に出産を済ませてからキャリア形成に臨むことを三砂ち
づるも著書で再三推奨しています。そのキャリア形成はダンバー数以下の組
織で行なうのが望ましいでしょう。その際の子育ても、非大都市圏なら、充
実した託児体制があるでしょうし、自営業や小規模企業などで職住超接近を
実現すれば、かなり容易になるはずなのです。
 このような大枠の原則に向き合わない少子化対策は、それが喩えどれほど、
個人の自己実現や社会の共同参画を意識したものであっても、殆ど効果を生
まないことでしょう。それは人間の本来あるべき姿から離れた生活のありか
たを前提としていると考えられるからです。

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後篇 あとがき(奥田美幸)

ソリアズをご覧の皆さま、こんにちは。

会社の萬屋 企画改善請負本舗の奥田美幸と申します。小さな会社での組織
づくりや組織改善の実現のお手伝いを行なうべく、2019年5月から市川の下
で弟子修行をしており、今夏、個人事業主として独立を果たしました。大変
有難いことに、11月25日に発行されました『経営コラム SOLID AS FAITH
500話発行記念特別号』から当コラム(通称『ソリアズ』)での連載を担当
させていただくこととなりました。ぜひ次号以降もお楽しみにしていてくだ
さい。今回は、10月末に発行された『経営コラム SOLID AS FAITH 21周年記
念特別号 前篇』のあとがきに引き続き、後篇のあとがきも担当させていた
だきます。

この年に一回の特別号は、所謂「お祭り号」で、経営を取り巻く環境や経営
につながる考え方、ソリアズのタイトル分析などの切り口で掘り下げた内容
を扱っており、経営そのものについて書かれている通常号とは異なった内容
となっています。前後篇共通のタイトルである『自然派宣言』とは、遺伝子
レベルで決まっていることに逆らうのではなく、人間として本来のあるべき
姿でいようとすることを意味しています。後篇はそれを前篇とは異なる切り
口の『企業組織と女性のキャリア観』というテーマ(、そしてタイトル)と
なっています。

新卒で入社した会社は、入社した当時社員数が 50名ほどのベンチャー企業
で、本文による「小さな共同体」でした。同期入社者は 24名いましたが、
私も含め、その多くはより制度の整った(働きやすいと思われる)環境を求
め、大手企業のグループ会社や中堅企業に転職しています。転職後の元同期
に話を聞くと、同僚との関係性の希薄さに嘆く者も少なくありません。それ
も『モダン・タイムス』の主人公達と同様、“勘違いの選択”だったと捉え
ることができそうです。

リクルートワークス研究所の 2021年卒の大卒求人倍率調査によると、全国
の民間企業求人数は 68.3万人、学生の民間企業就職希望者数は 44.7万人と
いう結果が出ています。就職活動に苦戦している学生が多いようですが、需
要超過という結果から、自分の思い入れに拘泥しなければ、就職先を見つけ
ることができると考えられます。

少々極端かもしれませんが、結婚も同様と捉えることができます。就職希望
者数と同様、供給過多にはなっていないので、結婚に対する自分の理想に拘
泥しなければ、相手はいると一応言えます。既婚者の知り合いに結婚を決意
したきっかけを聞くと、一緒にいて不快でなかったことが決め手だったと言
います。アラサーになり結婚に焦る友人が増えていますが、自分の周りにい
る一緒にいて不快でない人に、結婚を提案してみたら意外と上手くいくのか
もしれません。

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発行:
「組織と人のコミュニケーションを考える」
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