137 審美の芽生え

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経営コラム SOLID AS FAITH 第137号
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ご愛読ありがとうございます。第137話をお届けします。

10月に入りまして、恒例の記念号の構成を練っております。寄稿して下さる
方も、既に複数名ご快諾を戴き、安堵しております。未だ努力目標ではあるも
のの、今月末日の発行を目指すこととしておりますので、ご期待下さい。また、
新しい読者の方で、記念号をまだ一度も読んだことのない方には、ブログのペ
ージで、過去5回発行されております記念号の内容をご参照戴けましたら光栄
です。6周年記念号は、当コラム発行の舞台裏を今までにもまして公開する計
画です。

今号のPR欄には、久々に、最近読んだ本の紹介を設けてみました。半年か
ら一年後には、当コラムのネタとして登場する可能性のある書籍群とお考え下
さい。お楽しみ戴けましたら幸いです。

さて、第137話の『審美の芽生え』は、特にオーナー経営者が自社の経営経
験で培った、「経営についての美観」を考えてみました。ご意見・ご感想お待
ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その137:審美の芽生え

「どんなもんかなぁ。経歴も専門知識も良いんだけど、どうしてこの時期にこ
う言う結婚をするのか分からんよなぁ」と、とある会社の社長が私に言う。こ
の会社の技術者の募集に対して人材紹介会社が提示した履歴書と職務経歴書を
社長は見比べながら、考え込んでいる。

「ずっと、日本にいて博士号を取っているから、どういう環境で社会人になっ
たのかとか仕事に対する姿勢みたいなものも想像は付く訳よ。だから余計のこ
と、気になるよな。この年齢でこの経歴で、普通の外国人と結婚するかなぁ。
今回の転職の動機は、『職場や学校でもない所で知り合った中国人女性と結婚
したから、より生活の安定を目指すため』って言うことかぁ。中国人が悪いと
言うのではないさ。ただ、例え面接で彼がどう言う説明をしても、彼の価値観
に共感することはないような気がするんだよな」。
結局、この人材は面接に至らなかった。社長は人材紹介会社に、ただ「職業
観が合わなさそうだ」とだけ理由を伝えたと言う。

深夜の新宿を歩いていると、交差点角のデパートでウィンドウの展示商品の
更新が為されている。路上からじっとマネキンのポーズや衣装の捲れ加減を見
つめる人々。私も物珍しさに足を止めて見入る。ガラス越しにジェスチャーで
も指示が伝わらなくなると、担当者がやにわに携帯電話を持出して、「右のマ
ネキンの照明をもっと柔らかくして」などと呟いている。マネキンの顔に照明
がどのように影を作るべきか。微調整を繰り返すだけで、既に10分以上が経過
している。

マネキンの表情の僅かな違いがどれだけ売上に影響するのか私には分からな
い。多分、あの現場の彼らにも、その金額を算出することは不可能だろう。職
場外で中国人を娶った高学歴技術者が、どこでどのように道を踏み外すのか、
私には分からない。多分、その採用を検討した社長にも、具体的に何がどのよ
うに好ましくないのか説明することは困難であろう。それでも、何かの不安が
彼らをして、自分の判断に拘泥させる。

岡本浩一氏の『上達の法則』には、上級者には独自の美観が形成され、結果
の良し悪しとは別の次元で、美学・美観故の判断が為されるとある。そして、
「上級者は成功失敗のきっかけが読めるようになり、見るべきツボを逃さない」
と。

中小零細企業経営は、そのオーナー経営者の生き様そのものであると感じる
ことが多くなった。教科書で経営学を学んだこともなく、学歴が高くない経営
者も多い。そのような人々の経営判断を聞く時、それを支える美的センスを知
り集められることが楽しく感じられる。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。
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一応、仕事関係!
周囲からよく尋ねられる、最近、読んだ書籍のご紹介!!

●『フライング・ブックス』
山路和広 著  晶文社
ブックカフェの回転を少々お手伝いすることとなり、東京のブックカフェ巡り
をしながら読んだ本です。渋谷の有名ブックカフェについて書かれた本ですが、
零細店のストアコンセプトを煮詰めるプロセスの指南書としても読めました。
ちなみに、著者の店でサインをしてもらって購入しました。

●『ぶざまな人生』
勢古浩爾 著 洋泉社
遥か昔、中島みゆき論を読んで、感激した勢古氏の著書。『まれに見るバカ』
は有名ですが、そちらの方は、読むと、バカは全然「まれに見る」状態ではな
かったので、大半を立ち読みに留めました。ただ、今回は大ヒットです。抱腹
絶倒で、電車の中では到底読めませんでした。書評では賛否両論ですが、私は
好きです。何度も読み返しました。

●『電波男』
本田透 著 三才ブックス
映画でも書籍でも、『電車男』がヒットし、雑誌などでは「非モテ系」の人々
の研究が為されています。流行っているものは、その裏側を見たくなるのが私
の商売ですので、『電車男』は読まず、『電波男』を買ってみました。私は頷
く所しきりで、紹介されている仮説(?)は、結構、若手人材の扱いの上で、
流用できそうに思えました。

●『心を商品化する社会』
小沢牧子・中島浩籌 共著 洋泉社
最近、ちょっとマイブームの洋泉社の書籍です。最近調べている「感情労働」
の参考書として購入しました。共著であることのメリットが感じられない、収
まりの悪さはありますが、「心のケア」や「動機付け」など、商売に関係する
所で、考えさせられる内容でした。

●『北斗の拳』 全15巻
武論尊 作  原哲夫 画  集英社文庫
パチンコをやらない私が、パチンコ店の勉強会や、パチンコ業界の総合アウト
ソース会社でのプロジェクトなどを手掛けさせて戴くことになって、販促にも
活かせ、無理なく近寄れる範囲の周辺知識を固めるために読んでおります。
(以前もソリアズで紹介した通り、靴店の役員を拝命した際には、靴の研究で
はなく、足の研究のためにリフレクソロジー店を巡っていたのとほぼ同様の発
想です。)
無論、別途パチンコ業界の業界誌も読んだりしています(為念)。
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有限会社サイバーローグ研究所の大橋社長が、
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次号予告: 第138号 一般的広範囲(10月25日発行)
ランチェスターの「弱者の戦略」は局地戦の発想で、これを経営に適用する
と、まさに中小零細企業の差別化された特定市場での事業方針を指すものと考
えられます。「中小」、そして、「弱者の戦略」。どうも弱い者が苦肉の策で
取るのが、差別化と考えがちです。その真偽を検証してみました。ご期待下さ
い。(完)