488 創業の覚悟

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経営コラム SOLID AS FAITH 第488号
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 ご愛読ありがとうございます。第488話をお届けします。

 科学的根拠も乏しい数値をもとに法的根拠も乏しい自粛を事業者に迫る全
国的な空騒ぎが漸く終焉に向けて舵を切ったように見えます。テレワークや
数々の新しい慣習が「新たな生活様式」として定着すると主張する人々が増
えています。しかし、付け焼刃の我慢を重ねる無意味な「新たな生活様式」
が辛うじて定着するよりも先に、今回の空騒ぎで図らずも明らかになった
「社会にとって不要不急の企業」と「企業にとって不要不急の働き手」の部
分淘汰が進み始めることと思います。

 元々オリンピック後の不景気と後継者不足、そして人口減少によって、企
業群全般に淘汰圧が増加中だったところへ、営業自粛によって明らかになっ
た「なくてもあまり困らない企業」を集中的な淘汰の力が押し潰して行きそ
うです。そして、リモートワークや自宅待機で明らかになった「いなくても
あまり業務遂行に影響のない人」にも、雇用関係の何らかの見直しがどんど
ん迫っていくものと思います。そしてそれは「働き方改革」の普及とともに
より加速するでしょう。
 
 先日、今回の通称「武漢ウイルス」騒ぎを振り返って、当コラムのシリー
ズの原稿を一セット書き終えました。第491号から第494号まで続く4話シ
リーズ『ハイパー・パイパー』です。その時点で空騒ぎがどの程度収束して
いるか分かりませんが、それについての読者のあなたの記憶がまだ鮮やかな
うちにお届けできれば良いものとは思っています。
 
 今回の号は零細企業のお客様満足の形成方法について考えてみたものです。
多く大手企業・中堅企業は淘汰と合従連衡が進み、経営資源面での中小零細
企業との差は開くばかりです。つまり、中小零細企業の生き残りの方策は減
る方向に向かっています。そんな中で中小零細企業の取り得る戦略の主要な
一つは徹底したお客様満足の追求です。そんなことについてご一緒にお考え
いただけたら幸いです。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご
感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その488:創業の覚悟

 ブラウザの「お気に入り」を広げるより早く、アクセス履歴に簡単に登場
する書籍販売サイトを開いて、書籍を探し出し、その情報をプリントアウト
する。数冊それを繰り返し、ホチキスで閉じて商店街の書店のカウンターに
持ち込む。そこでは一人の店員が「いつもわざわざプリントアウトを用意し
ていただいて助かります」と書籍の注文の手続きをする。
 
 傍らではもう一人の店員が「市川様」と書いた札のついた袋から本を取り
出す。この書店では、取り置きを頼んでいる雑誌やタイトルで指定している
コミックが入荷すると、必ず電話をくれる。コミックの外伝が出ても、その
情報を教えてくれた上で、「ご予約されますか」と尋ねる。取り寄せて貰っ
た本の中を見てから購入か否かを決めても良い。
 
 以前このサービスを頼んでいた町の別の書店が廃業した時、新宿に本店の
ある大手書店で尋ねてみたら、「そのようなサービスは全くやっておりませ
ん」と当然のように担当者は答えた。そんな大手が挑みさえしない緻密な
サービスをこの書店は難なくこなしている。
 
 清掃用品の営業担当者に同行して取引先の納品業の会社を訪ねることにな
った。このクライアント企業と付き合うまで、私は“納品業”という慣行的
業界分類名を知らなかった。学校施設、官公庁、病院などに出入りをして、
そこで必要とされるものは、備品であれ、文房具であれ、各種装置であれ、
何でも納品する地場に密着した小規模企業群。それが私が聞いた納品業の定
義だった。その日訪ねたのは、地方都市の学校専門の納品業者。
 
「最近の若い先生は、私の訪問なんか待たないで、黒板消しだってネットで
注文しちゃうでしょ。おまけに、おたくの清掃用品なんか、車で帰る途中の
ホームセンターに寄って買ってきちゃって、後で経費精算するだけだから。
どんどん売上を食われて行きますよ」。
 全部白くなった髪をかき上げて、初老の経営者が辛そうに語っていた。訪
問後の車中で営業担当者は、同じ箒一本が売れるのでも、ネットやホームセ
ンターより納品業ルートで売れた方が利幅が良いので、納品業の流通を何と
か活性化させたいと教えてくれた。しかし、学校に何かの提案をする訳でも
なく顔を出すだけの商売は、そろそろ成り立たなくなった。そして、前近代
的なローテク経営の後継者さえ見当たらない。

「なるほど。このままじゃ、御社にとっても利の薄い流通チャネルの構成比
ばかりが上昇しちゃうんですね。この前、『ビジネスをつくる仕事』と言う
本を読んだんですよ。内容的には新規事業立ち上げの場面の話なんですが。
けど、多くの先細る納品業の人々が行なわなきゃいけないのも、お客に求め
られる自分の新たな役割を創り出すことなんでしょうね」。
 運転席でまっすぐに伸びた道路の行く末を見つめる若い営業担当者に私は
告げた。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

「ポスト通称『武漢ウイルス』の時代」の
中小零細企業の経営方針は…
「お客様の不要不急にならないこと」です。

常にお客様の「本命」になりましょう。
「本命」に思ってくださるお客様を増やすことを
経営の中心に据えましょう。

「本命」に対するオサエとして
自社を認識しているお客様には

■「本命」として認識していただくか
■(結果的に)去っていただくようにするか
を決めましょう。

※仮にどちらもできなければ、
 お客様として売上のアテにするのを止めて、
「来るのは拒まず、去るのは追わない」ことにしましょう。

お客様満足を引き上げることができる企業は
お客様にアンケートをとったり、
徒に広告を打ったり、
変な社是社訓を掲げてお客様に誇示したり
するような馬鹿げたことに時間と労力を割きません。

やるべきことをきっちりやりましょう。
御社のビジネス・モデルに合致していて
御社のビジネス・モデルをどんどん強化する
お客様満足向上の無駄のない具体策を
こっそりお教えします。

ご相談のご連絡はメールにて。
 bizcom@msi-group.org
 
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『脳をだませばやせられる …』 ステファン J.ギエネ 著
■『クルマ社会・7つの大罪 …』 増田悦佐 著
■『感染症と文明――共生への道』 山本太郎 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第489話 『超AI実験』 (6月10日発行) 
 読解力が話題になる中、無名の中小零細企業には読解力が乏しい人材が吹
き溜まる傾向があるものと想定します。そして、「働き方改革」です。中小
零細企業の人材育成について少し考えてみました。

(完)