482 人間擬きの町

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経営コラム SOLID AS FAITH 第482号
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 ご愛読ありがとうございます。第482話をお届けします。

 新型肺炎の感染拡大が留まる所を知らず、街を歩く人の数が激減していま
す。新宿界隈でも元々東口側に大型バスで大量に乗り付けていた中国人観光
客が消え、さらに日本人の買物客まで減って、何か特別な祝祭日の様相を呈
しています。

 弊社代表の市川は、子供時代に当時の法定伝染病に二つも罹り、何度も隔
離されていて、おまけにインフルエンザは勿論、ストロフルスや麻疹、三日
麻疹などなど数々の伝染病に罹っています。病弱の自覚が強くあるので、幼
少期から外出後の嗽・手洗いの習慣がガッツリできており、今でもコンビニ
行ってきただけでも嗽・手洗いをします。そのせいか、はたまた各種の免疫
が体内にズラリと揃ったせいか、過去20年間でほとんどワクチンを打つこと
なく、インフルエンザにも罹らないで過ごしています。
 
 新型肺炎も潜伏期間中にも感染するという異次元の感染力が事実上手に負
えない状態ですが、感染しても発症率もそれほど高くなく、致死率に至って
はかなり低いようです。密室にたくさんの人が長時間詰め込まれたような状
態を避け、よく食べよく寝て、嗽と(できればアルコールでの)手洗いぐら
いでかなり発症に至らずに済ませられますし、発症しても少々重めのインフ
ルエンザぐらいのことでしかありません。殊更に避けようとする理由が見当
たりません。

 オリンピック景気の終焉と韓国人観光客の減少、そこへさらに、新型肺炎
で消費が落ち込み、真綿で首を締めるように「働き方改革」も企業体力を削
ぎ落します。企業の経営環境としては踏んだり蹴ったりの状態がどんどん強
まりますから、生き残るだけの体力がある会社が先に倒れた会社の市場を獲
得して、より生き残りの基盤を作る展開になるのだろうと考えられます。日
本の生産性向上の議論では、取り分け生産性の低い中小零細企業が悪玉のよ
うに言われる論調がありましたが、生産性も含めた総合的な経営体力が試さ
れる時代になったようです。

 今号は『人間擬きの町』と題して、人間疎外の職場について考えてみまし
た。生産性自慢の多くの先進国の企業現場では、決まった仕事だけを期待さ
れている労働者がたくさんいて、そのような働き方の方がデフォルトです。
そのような“就労”のあり方を切り取って描いてみました。ご意見・ご感想
お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その482:人間擬きの町

 針葉樹林が広がるオレゴン州の工科大に留学して4年制の学位を得た専攻
は“Industrial Management”。その科目の一つ、“Production Management”
では、近隣で最も大きな工場を見学に行く授業がある。伐採された針葉樹を
材木に加工するその工場では、ガタイの大きな男達が上半身シャツ姿で、加
工ラインに向かっていた。
 
 幾つものラインの各々に沿ってライン・スーパーバイザーが行き来する。
ラインの数だけ存在するライン・スーパーバイザーは、担当ラインの工員達
の作業を監視するのが仕事。工場の壁面の一際高い位置にはファクトリー・
スーパーバイザー。彼はライン・スーパーバイザーが怠業しないよう監視し
ている。
 
 工員達は所定の作業をただ反復する。材木の流れが滞っても、これ幸いと
手待ちを決め込む。何か気を利かせもしないし、元々求められてもいない。
現場改善に自分達が取り組むQCの小集団活動など想像したこともないだろ
う。定時になるとタイムカードを押して、一目散に去っていく。明日の準備
もしないし、床清掃や機械の点検を行なう者もいない。6年半勤めた日本最
大の電話会社では社員にQC活動や5Sを叩き込む。その際に「見本」として見
せられる動画には、現場力高い日本の工員の様子が描かれていた。「日本の
工場なら、こんな牛馬のような働き方なんかあり得ないだろうに」と当時の
私は思っていた。
 
 非常勤講師として自分が大学で教える立場になって、嘗て見た材木工場の
人間疎外の現場の話をすることがあった。授業の後、一人の女子学生が教壇
に近づいて来た。
 
「先生。私は工業団地の近くに住んでいますが、高校時代からバイトは全部
近隣の工場でした。親も工場で働いていて、近所は全部同じような感じです。
幾つかの工場で働きました。大きい工場でも50人ぐらいの人が働いています。
どの工場でも正社員の人もパートの人も、決められた作業しかしていません。
材料の板を右から左に運ぶだけとか、凄く単純な作業を最初から最後までや
るだけです。毎日同じ仕事を黙々とするだけで、ペースが遅いと嫌味を言わ
れたりする工場も結構あります。それって、さっきの材木工場と同じですよ
ね。先生の言っていたQCや5Sとかも、見たことも聞いたこともありません」。

 電話会社の現場のQC発表を地域の大会で行なった時、競った工場のQCチー
ムの発表内容は皆素晴らしかった。しかし、中小零細の製造業が寄り添う工
業団地では、その町ごと全部牛馬の如く働かされて何の疑問も持っていない。
多分、町中の人々にとってすべての労働はそんなもので、そうではない仕事
があるなどと想像さえしないのだろう。自分達の働き方が「人間疎外」と呼
ばれることがあることも、きっと知る由もない。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

お客のニーズの充足方法はどんどん遷ろっていきます。
当然、他社のビジネス・モデルもそれらを追いかけて遷ろいます。

だから、
「同じことをただ続けていたら、
 それはどんどん時代から取り残されるのと同じだ」
という企業経営の考え方をよく耳にします。

全くその通りです。
マーフィーの法則にある
「すべてがうまく行っている時、
 必ず何か悪いことが起きている」は、
ほぼほぼ真理です。

冒頭のご挨拶でも書きましたが…

▲オリンピック景気の終焉
▲韓国系の収益の減少
▲新型肺炎によるインバウンド需要の実質的崩壊
▲新型肺炎による国内消費の落ち込み
▲働き方改革による人件費系のコストの増大
▲スマホの普及浸透による消費の減少
▲地方を中心に進む人口減少による経済の縮退

などなど挙げればキリのないほど、
経営環境は悪化の一途です。

今こそ、自社のビジネス・モデルの見直しを断行しましょう。
まずは、「売上はすべてを癒す」です。
こんな時だからこそ、根本的な売上追求策を断固実践しましょう。

●弱った競合他社は追い詰めて、そのシェアを奪いましょう。
●お客目線で自社の商売を見直し、より大きな利便を実現しましょう。
●ICT各種を導入して、販売コスト/販促コストをカットしましょう。
●お客をよく観察・研究して、新しい切り口を見出しましょう。

全部、弊社で最近多くのクライアント企業さんで手掛けていることです。

メールにてお気軽にご一報ください。
 bizcom@msi-group.org

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『捨てられる銀行 3 …』 橋本卓典 著
■『なぜ、御社は若手が辞めるのか』 山本寛 著
■『迷走する超大国アメリカ』 小竹洋之 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第483話 『作業者の姿』 (3月10日発行) 
 海外のMBAコースでも必須ケース・スタディとなっているという日本の鉄
道車両清掃作業を見て考えたことをまとめてみました。

(完)