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経営コラム SOLID AS FAITH 第481号
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ご愛読ありがとうございます。第481話をお届けします。
今年も1ヶ月余りが過ぎて、景況感が大分下向いてきたように感じます。
皆がオリンピック景気の終焉は開催前に到来するものと踏んでいたと思いま
すが、既にかなり下り坂に入っているようです。弊社のクライアント企業の
周辺でも廃業や倒産の話を耳にすることがじわじわと増えています。
元々高齢オーナー経営者の引退に伴う大量廃業は予想されていましたが、
昨年からの消費税率引上げを始めとして、韓国系のビジネスの縮退、そして
今年に入って新型ウィルスの猛威による中国人観光客の激減など、明らかに
景況の悪化材料が増えています。
そして4月からは中小零細企業にも残業時間の上限規制が適用されるよう
になります。真綿で首を締めるように経営環境は悪化していくでしょう。
各々の中小零細企業で、その持てる経営力が間違いなく試されることになっ
ていくものと思います。昨年の当メルマガ20周年記念特別号で告知いたしま
したプレゼント企画『生き残る中小零細組織の鉄則』が、お届け先の方々か
ら大好評であるのは、そうした背景もあるのかもしれません。
今号は増加する廃業・倒産に対して創業を増やす各種の試みがなされる中、
行政の行なう創業支援策の杜撰さを描いてみたものです。創業支援は何をす
るかよりも、誰に対してするかの方が大事であるように思えます。ご意見・
ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5
営業日!!
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その481:公金蕩尽業
「いつかもっとたくさん売れるようになったら、お店とかせめて自分の販売
スペースとか」。
入口から注し込む夕陽があたった明るい笑顔でその60代前半に見える女性
は言った。周囲の3人もそうそうと頷く。汚れたショー・ウィンドウには、
模造紙の横断幕にマジックで書かれた文字が裏返しに「チャレンジショップ」
と読める。名古屋に近い地方都市のしもた屋ばかりが並ぶ嘗て賑わっていた
商店街。空き店舗の活用と新規事業支援による地域経済の活性化の目玉施策
であると、商工会議所の担当者から聞いてやって来た。
チャレンジショップの中はだだっ広い空間をパーティションで四等分した
だけ。そのパーティションに引っ掛けてぶら下げるのが主な陳列方法。4人
の“事業者”は全員中高年女性。会社員の夫と持ち家に住んでいるらしい。
手芸などの制作物を商品として売っている。ハウスカードを持っているのは
一人だけ。手書きの値札こそあるが、POP一つない。
痛くない注射針で一躍有名になった岡野工業株式会社が黒字なのに事業承
継ができず廃業したことがニュースになった。中小企業のオーナー経営者の
最も人数が多い年齢は既に70歳を超えている。その多くが後継者もいず、空
前の廃業の波が押し寄せると広く認識されている。その分、おカミは税金を
投じて事業承継支援や起業支援に打って出る。
「『起業に関心がある人間なら誰でもいい』って感じ。まずは集めることが
できなきゃ話にならないから」と、起業支援コンサルタントが、彼女が講師
を務めるセミナーの主催者達について話す。その主催者は関東の幾つかの市。
税金で運用される起業のための無料セミナー。スローガンは「夢を仕事にす
る」。子供に手が掛からなくなった主婦層の申し込みを意識していて、男女
共同参画などの活動の一部となっていることも多いらしい。
好きなことや夢を仕事にするのは耳優しい。ホリエモンもテレビでそう言
っていたが、最初に始めた新聞配達は彼の好きな仕事だったか。あのチャレ
ンジショップの主婦達は何にチャレンジしていたのか。マーケティングの
「マ」の字も、資金繰りの「し」の字も、生産性改善の「せ」の字も分から
なくて、ほぼ趣味でしかないビジネスが伸びていくコツは何か。このうちど
の程度の確率で岡野工業のような企業が生まれるとオカミは目論んでいるの
か。わざわざ税金を投じて将来の税収を減らす行為ではないのか。疑問は尽
きない。
倒産防止共済と国民年金基金に掛け金を積むなどして、私は節税に励んで
いる。小規模事業者共済の加入も検討している。そんな節税者の存在が霞む
ほど、夢や好きなことを仕事にする当事者も関係者も、地方行政の財布を直
接的に苦しくしているように見える。
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次号予告:
第482話 『人間擬きの町』 (2月25日発行)
日本初のカラー特撮ドラマ『マグマ大使』の表現に肖ったタイトルの次号
は、生産現場での働き方について考えてみます。
(完)