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経営コラム SOLID AS FAITH 第125号
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ご愛読ありがとうございます。第125話をお届けします。
私は今年の花粉の猛威で、酷い目にあっておりますが、皆様は如何お過ごし
でしょうか。当コラム第2話『生活のリズム』にも書きまとめた通り、私は正
真証明の夜型人間なのですが、強烈な効果の抗ヒスタミン剤を摂り続けている
ため、全然仕事になりません。最低限のメールのやり取りさえままならないぐ
らいになって参りまして、お客様にもご迷惑をかけております。
そのような中、4月に入り、実に昨年の10倍の講座数に挑むことになった大
学講師の仕事が始まりました。初日は早速、1時間半の講座三本を連続で行う
こととなり、前期半年間で、合計500人近くの学生を“教え子”とすることに
なりました。今年は、今までに教えたことのない講義も担当することになりま
した。下のPR欄に簡単な案内を設けましたので、ご覧下さい。
さて、前号の『快い問い』は、いつもの号に比して「分かり易かった」、
「なるほどと(素直に)頷けた」などのご感想を多数戴きました。ご関心・ご
共感を戴けまして嬉しく存じます。今号は、昨年参加した小売業向けの経営セ
ミナーのテーマだった「店の入り易さ」の価値に関して考えてみます。お楽し
み戴けたら幸いです。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想な
どへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その125:選ばれる場所
「新宿系」なる言葉を椎名林檎が社会認知させる15年も前から、私は「新宿系」
を自負している。昔、街にいたナントカ族も知らない。ナントカ横丁で文化人
と飲んだ経験もない。量販店の名前にのみ残る淀橋と言う地名も知らない。そ
れでもこの街が好きである。
その新宿の一角は、同性愛者が集うことで有名である。私が一時期お世話に
なった特許事務所周辺など、男性同士が手をつなぎ、開け放たれた店や路上で
談笑している。虹のマークが多い看板の店々は、お世話になることは無いが、
繁盛している様子である。最近、その近くのビルに、フィギュアの販売をして
いる店ができた。少女の人形の完成体は勿論、腕や足などのパーツ、各種の色
を取り揃えた頭髪や、その類の専門誌が所狭しと並び、いつ見ても客がいる。
万札を数えて支払っている客もいる。
そこに近いデパートには、少女達に人気のゴスロリの店が多数ある。付近の
通りを歩くと、棺桶から出てきたような顔色悪い少女達が闊歩している。売場
に行くと背広の私への視線が痛い。香港の友人達を案内したこともある。絶句
する様子は見て楽しい。母が洋裁を稼業にしていて、コスプレ衣装の制作を検
討することになった。その手の店に行くと、どぎまぎしている私に店員が丁寧
に専門誌のバックナンバー取寄せの手筈をしてくれる。
小売のプロと言う人のセミナーに出た。米国と日本に家を持ち、半年ずつ暮
らして、両国の小売店経営を比較していると言う。兎にも角にも、「真心の接
遇」が選ばれる条件で、その店が視界に入った時点から始めるべきと強調する。
入り易さこそが小売店の生命線であると。酒を飲まない私には地酒の店や立飲
みの店は物凄く敷居が高い。いつも古着のような私服か安背広の私には、男性
用のブランドアパレル店は、大抵、物凄く居心地が悪い。ゴスロリの店もフィ
ギュアショップもかなりのものだ。有名な料亭の名店は大抵「一見さんお断り」
ではなかったか。
留学中に偶然、友人達に日本にいた頃の自室の写真を見せた。友人が「壁際
の赤いハコは何か」と言う。日本人なら誰でも分かる小型冷蔵庫で、私のはワ
インレッドであった。日本には「木目」の冷蔵庫まであった時代、向こうでは
シロモノは本当に白かった。日本の数十倍の面積。日本の二倍の人口。そして、
100万の人口を有する都市の数は日本の半分以下。歩けば15分以内に小売店と
自販機が軒を並べるような暮しをしている米国民は一体何人いるのだろうか。
店が軒を並べていないなら、差別化も必要なければ、拘りも要らない。金を落
すのなら、誰彼構わず集めれば良い。
ポイント制を敷く有名靴店の社長が、「こちらの方針が分からないお客や態
度が悪いお客は容赦なく登録排除する」ことこそ、顧客管理の要諦と断言して
いた。「良いお客」が他の客を嫌うなら、門外漢や不逞の輩を排除すれば良い。
「良いお客」が真心を厭うなら、ぞんざいに対応すれば良い。「顧客指向」は
「『特定の顧客』指向」であると合点する。
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次号予告: 第126号 女王の繰言 (4月25日発行)
「成功体験を捨てろ」と言う話をよく聞きます。発言者の主旨にもよりますが、
私には賛同できないケースも多々あります。私の知る「成功体験を捨て続けて
疲弊した事例」について考えてみました。ご期待下さい。(完)