465 リュウグウノツカイ

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経営コラム SOLID AS FAITH 第465号
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 ご愛読ありがとうございます。第465話をお届けします。

 最近、機械学習についての書籍を数冊読みました。以前の見知ったMA技術
のように、経営に使うのだとしても大手企業でなくてはコスト的に無理だろ
うと考えていましたが、書籍の中に紹介されているサービスも、ビッグサイ
トの展示会で紹介されているサービスも、その一部は、十分、中小零細企業
でも受け容れられる価格体系で提供されています。
 
 おまけに『日経ビジネス』の記事を読んでいると、機械学習をきちんと使
いこなすデータ・アナリストなどの仕事も、入口レベルの実用的知識だけを
取り敢えず身につけるなら、10回の研修で、素人から育成して行なえるよう
になるとあります。特に中小零細企業でもそれなりに大きなサイズのログが
貯まりやすいB2Cの商売などでは、日常のビジネス展開にAIが簡単に導入さ
れそうです。曜日や天候、時間帯ごとの売上なども、長年の勘に頼ることな
く、AIがそこそこ的確に予測してくれる時代は、もう始まっていました。
 
 単純な或る品目の予想合戦を1回試してみるだけなら、中小零細組織にお
いて、人間でもAIでもそれほど違いは出ないのかもしれません。しかし、そ
れを店内の全品目、毎日の仕入などの場面で確実に的確な予想を網羅的に出
し続けることは人間には困難であるのは間違いありません。レジの自動化な
どもじわじわと進んできました。キャッシュレス対応や顔認証システムによ
るデータ収集力の向上も進めば、より一層AI導入は楽になっていくことでし
ょう。そして、これらを使いこなせるか否かは、端的に言うと、オーナー社
長の「懐具合」ではなく、組織の人間の「頭とスキルの具合」によって決ま
ることでしょう。
 
 切り口は大分異なりますが、そうしたB2Cビジネスを行なう店舗のなかで
もリアル店舗の生き残りについて考えることが増えてきましたので、その際
の基本の商圏分析の方法論をPR欄で紹介しておきました。よろしければご高
覧ください。
 
 今回の号は、見通しのきかない深海のような世界になりつつある経営環境
について考えてみたものです。タイトルのリュウグウノツカイは深海魚の一
種で、漁業関係者の間では「災いの予兆」とも「豊漁の兆し」ともみなされ
ているのだそうです。見通しがどうであろうと、不確実性がどうであろうと、
組織はその経営環境に適応しなくては生き残れません。そんなことをクライ
アントの社長と話した流れをまとめてみました。ご意見・ご感想お待ちして
おります。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その465:リュウグウノツカイ

 VUCA。インターネット以前の時代などに比べて、今の時代の状況を指す
と言う表現。Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity
(複雑)、Ambiguity(曖昧)の4つの頭文字をとったものだという。これ
が企業の置かれた経営環境ならば、合理的な判断ができようはずもない。不
安定で不確実な上に、複雑で曖昧な情報を元に、相応に妥当な経営判断など
到底無理だと思われる。上場企業なら、世の中のどこにいるかも、どんな価
値観かも分からない株主に経営判断の妥当性など納得させられる訳もない。
そんな道理で、利益も配当もほぼゼロのようなアマゾンの株価でさえ上がる
ということなのだろう。
 
 不確実性なら全然新しくない。今から30年以上前、私が自分の稼いだ金で
高校に通い始めた頃、無理して買った『不確実性の時代』に既に書いてあっ
た。西欧ではとっくの昔に実存主義が「神は死んだ」と言い出して、迷える
子羊は迷うことさえできなくなった。量子力学は戦前から成立していて、光
は波動でも粒子でもあると曖昧模糊とした結論に至った。環境や経済やらの
問題で、「複雑性の科学」が議論され始めたのも随分と昔の話。脳神経学も
2000年以前から、人間の意思判断など存在しないと解き明かし始めて、シロ
クロつけられる世界は殆ど消えてなくなった。出揃ったVUCAの要素がネット
で皆に広まったのが今ということなのかもしれない。それは経営環境にも見
て取れる。

「ああ。本当に何が起きるかよく分からない世の中になりましたよね。昔か
ら“風が吹けば桶屋が…”みたいに、みんな繋がっていたのかもしれません
が、今となっては海外の不景気がいきなりこっちにも飛んできたりする。零
細企業でもそんなことに振り回されてる」。
 クライアントの零細企業の社長がぼやく。

「そうですね。見通しが全然悪いし、何をやるのが良いのかはっきりしない
し、おまけに中小零細企業でさえ、何か変なことをするとすぐネットで暴か
れて袋叩きにされるから、万事気が抜けない。けど、変化が激しくて皆が予
想できないのは同じなのでチャンスは結構いろいろ転がっている。機動性高
く、オーナー社長の信じるままに勝手なことができる中小零細企業にはチャ
ンスだとも言えますけどね」と私は何となく応じた。

「何だっけ。不景気やら後継者不足で大分会社は淘汰されるんだっけ。まる
で深海の深みにどんどん沈んでく競争みたいな感じじゃないか。自分だけの
真っ暗闇の中、どんどん水圧で弱い部分から押しつぶされそうになるし。け
ど、そこに適応した生物だけが生き残れて、深海にはミネラル豊富な海水も
膨大な海底資源も手つかずで眠っている」。
 スキューバが趣味のはずの社長の言葉に、太古の海の深海魚の淘汰と適応
に思い至ったが、最近読んだイラスト満載の『わけあって絶滅しました』し
か頭に浮かばなかった。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

インターネット上での販売が世の中に定着して久しくなって、
小売店舗の経営は非常に苦しくなりました。

単なる物販の観点で見るなら、ネット通販の世界は圧倒的な有利です。
 ■陳列において物理的なスペースがありませんし、
 ■集客にも地理的な制限が一応ありません。
 ■営業時間も所謂24-7状態です。
 ■提供する商品情報や関連情報も掲載量は事実上無制限です。

インターネットを通した体験を売るサイトを取り急ぎ除外すると、
インターネット物販は結果的にブツを後で届ける形になりますから、
 ▲非常に少額のモノや
 ▲非常に高額のモノ、
 ▲さらに危険物や薬物などの取り扱いが難しいモノ
などの取り扱いは困難です。

そうすると、リアル店舗は…
 ●それらのインターネット通販で扱えない物品を販売するか、
 ●ネットでは提供しにくい何らかのサービスを販売する
しか生き残りの道がなくなってしまっています。

もちろん、ネット通販とリアル店舗を対立軸で捉えるのではなく、
オムニチャネル的な発想が理想的なのは間違いありません。

ただ、そうであるなら余計のこと、
「お客に対する接点の一つとしてのリアル店舗」の
弱点や限界を知っておく必要があります。

リアル店舗が持つ最大の制約は、商圏です。

弊社ではリアル店舗の商圏分析を数多く手がけています。
新規開店の戦略案出の際の商圏分析。
既存店の事業戦略見直しのための商圏分析。
いずれも多数の実績があります。

売れないエリアや買わない人への販売努力は、
「労多くして益少なし」です。

リアル店舗の可能性を評価するとき、まずは商圏分析が必要です。
その考え方をウェブページにまとめてみました。
是非ご一読ください。

http://msi-group.org/msi-retail-trade-area-analyses/
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『行動学入門』 三島由紀夫 著
■『AI 2045』 日本経済新聞社 編
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
 bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
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次号予告:
 第466話 『イェル・ケ・クク』 (6月25日発行) 
 社会の情報化が進むと共に、どんどん働き手に求められる“当たり前のス
キル”も膨張しているように感じます。どんどんコモデティ化していくスキ
ル群について考えてみました。

(完)