450 メタ憂慮

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経営コラム SOLID AS FAITH 第450号
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 ご愛読ありがとうございます。第450話をお届けします。

 まずお詫びですが、前号の予告欄で第450話のタイトルを『メタ杞憂』とし
ていましたが、発行前に変更致しました。新タイトルは『メタ憂慮』です。
文脈とタイトルを比較検討してみた所、“杞憂”ではなく“憂慮”がより適
切と判断したためです。過去にも発行直前までタイトルを推敲したケースが
1、2度ありますが、また発生しました。大変失礼致しました。

 前号からご案内している周年記念特別号も今年で19回目です。発行前の最
終校正段階に入りました。PR欄にご案内している通り、中小零細企業の身の
丈の情報セキュリティ対策がテーマとなっていますが、過去19号の中で実用
性が高さではトップ3に入るぐらいの内容で、情報セキュリティマニュアル
としても活用できるレベルになっています。是非ご一読の上、社内でご活用
ください。
 
 今回の『メタ憂慮』は、変化の激しい経営環境の中で憂慮のほとんどない
管理者たちの状況を憂慮する社長の構図を描いてみました。最近は会社で行
なう読書会の支援をする案件が幾つかありますが、それらすべてで参加者が
自然に自社や自分の現状と今後について危機感を抱くようになります。しか
し、クライアント企業以外で私が知る多くの会社では、社員や管理者のみな
らず、社長までが「昨日の延長の今日。今日の延長の明日」を過ごすことに
甘んじ、繰り返し起こる同じ問題や悪化した問題に一方的に振り回されるこ
とを経営と呼んでいます。

 徒に危機感を煽って不安を嵩じさせることにメリットはありませんが、問
題は早いうちに構造的な対策を打てば緩和・解消します。小さな一手を早く
打つことで大きなダメージを回避できる可能性が広がるのです。組織全体を
俊敏に保つこと。そのためにはまず現状に危機感を持つことが一番であるよ
うに思えます。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへ
のお返事の目標納期は5営業日!!

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その450:メタ憂慮

 往年の田舎の縁日のような人込みを掻き分けてビッグサイトの展示会の内
部に踏み入ると、我先に露出度の高い格好の女性達がにじり寄ってくる。AI
関係の展示会が年に何度も開かれるので、時たま見学するように心掛けてい
る。とうとう避け切れずに手渡されてしまったチラシはMAサービスのもの
で、目が釘付けになり、私は歩を止めた。
 
 ウェブ活用を社員に探求させているクライアント企業がある。アクセス解
析まで一通りできるようになったら、その先にはMAのような段階しかない。
しかし、MAサービスの価格は中小零細企業の俎に載らない。「まあ、MAを
使った大手さんに対して、またぞろ、中小零細企業は知恵を使ってローテク
の工夫を…とでもいう感じか」と考えていた。
 
 そのチラシに書かれた価格は月額1桁万円だった。3Dプリンタの価格漸減
どころではない。いつの間にかMAが中小零細企業に手の届くものとなって
いた。MAの活用には、十分なウェブ活用体制も勿論必須だが、仮説と検証
のサイクルをきちんと回せる社員が揃っている必要もある。これで「飛ばす
中小零細企業」はどんどん加速し、「右往左往する中小零細企業」は自社の
弱点も分からないままに淘汰される可能性が広がったと思えた。
 
 その日の夜、「危機感がない若手管理者を揺さぶってくれ」との消費者向
け製品の製造業の会社の社長の依頼で、社内座談会を開いた。10年後には社
長の持病が再発していて後継者難になっているかもしれない。『限界費用ゼ
ロ社会』にあるように3Dプリンタが多くの製造業の会社を根幹から揺さぶる
可能性がかなりある。現在の優れた製造ノウハウも10年後には担当者の高齢
化で失われる可能性もかなりある。IoTなど社内の誰も知らない。異業種交
流会に行く人間も、ビジネス書を買い読みする習慣がある人間も社内に見当
たらない。
 
 表情だけはやけに明るくしながら、私が5人の参加者に説明すると、まだ
「安定した会社で真面目に働いて恙無く過ごしたい」とでも思っていたのか、
全員絶句して俯いた。「どう思いましたか」と私がゆっくりと尋ねると、奮
起するように一人が「けど、そういう暗い話ばかりではない未来だって可能
性はあるんじゃないでしょうか。そういうことで不安にばかりなった所で
しょうがないですし」と顔を挙げて言った。もう一人が「そうだ。なるほど」
などと頷く。なるほどと私も迎合して会を終えた。
 
 私が会の様子を簡単に報告すると、社長は小声で答えた。
「ああ。何が危機感を湧かせるかって、危機感のない管理者ほど危機感を湧
かせるものはないよな。『不安になるから悪い可能性を考えない』か。そん
な人間には上に立って貰う訳には行かんな。今時、リスク・マネジメントに
関心がないなら、すぐに降格しないとな」。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

今年も恒例19周年特別記念号の発行まであと6日。
今年のテーマは…

●13周年記念特別号:中小零細企業のIT活用
●17周年記念特別号:人工知能と中小零細企業経営
と来て、中小零細企業とIT活用シリーズ第三弾として、

『中小零細企業の最低限情報セキュリティ対策』です。
普段、ITインフラや情報管理についてのテーマが
ほとんどない当コラムですので、
周年記念特別号で取り組むことにしました。

例年通り、今年も10月末日発行です。
ご期待ください。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『「地政学」は殺傷力のある武器である。』 兵頭二十八 著
■『ぐにゃり東京…』 平井玄 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第451話 『注文の多い牛丼店』 (11月10日発行) 
 タイトルの通り、色々と指示が細かく存在する牛丼店に迷い込んだ話です。
宮沢賢治の作品と異なり、やたらに多い注文(=指示)は従業員に向けたも
のですが。

(完)