449 青い文脈

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経営コラム SOLID AS FAITH 第449号
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 ご愛読ありがとうございます。第449話をお届けします。

 今年も10月に入って残すところ3か月を切ってしまいました。年末の繁忙
に備えるクライアント企業も目にするようになりました。10月に入ると、当
コラムの発行においては恒例の周年記念特別号の最終仕込みが始まります。
今年も例年通り、10月末日の発行予定です。13周年記念特別号では中小零細
企業のIT活用を考え、17周年記念特別号では話題の人工知能の中小零細企
業のかかわりについて大胆予測をしてみました。

 当コラムの通常号では中小零細企業のITインフラやIT活用について取り
上げることが少ないのですが、目覚ましい技術進展により可能になる、今ま
で考えもしなかった生産性向上の方法論など、その影響を見ないで済ませる
訳には行きません。通常号の中で触れにくいIT系の話を周年記念特別号でカ
バーすべく、今回の19周年記念特別号は、中小零細企業の情報セキュリティ
を扱ってみることとしました。なんとなくなおざりにされていたり、惰性で
「セキュリティ・ソフトを入れてあるから、まあ大丈夫」と判断したりする
など、企業の情報セキュリティについて緩い認識しか持っていない中小零細
企業は多々存在します。今の時代に最低限折り合いをつけるための中小零細
企業版の情報セキュリティ最低限対策を根本から考えてみたいと思っていま
す。
 
 今回は『青い文脈』と題して、文脈の読取について考えてみたものです。
世の中では『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』という書籍が大ヒットし
ています。弊社代表の市川も発売当初からの読者ですが、その説明するとこ
ろのインパクトの大きさに驚嘆して、当時クライアント企業経営者の多くに
その話をしていました。書籍では教科書の中身を文字で読んで理解できない
話が中心ですが、現実生活の中では、文脈(=コンテクスト)が読めないケ
ースとなって問題化しているように感じられます。中小零細企業の現場に見
られる「文脈が読めないこと」による事象について一緒にご一考賜れればと
思います。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお
返事の目標納期は5営業日!!

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その449:青い文脈

 ゲームセンターの階段を上がって事務所に入ると、ミーティングが終わっ
て女性スタッフ達が現場に出た後に残った店長と副店長が話していた。業界
不振が言われる中、この店は女性スタッフの接客によって業績挽回を狙って
いる。30代前半の副店長は数ヵ月前に異業種から転職してきた。賃貸物件仲
介の不動産店の主任だったという。成果の数字を追いかけるようスタッフ達
を叱咤するのが管理者の仕事だったらしい。だが彼の経験則は全く奏功しな
かった。ゲームセンターの“ふわふわした女性スタッフ”が彼のスタイルに
反発したり面従腹背したりするようになったからだと店長が以前説明してく
れていた。
 
「入社してから俺なりに常連さんの話を聞いてきましたけど、常連さんは女
性スタッフを目当てに来てなんかいませんよ。ゲーセンはやっぱりゲームの
盛り上がりです。お客さんがそう言ってんだから。タラタラした女性スタッ
フは叱りつけて辞めさせればいいんです。本を読むのは大事だと思うんで、
今この本を読んでいますけど、給料をもらって仕事をするのに、結果を出す
覚悟のない人間は存在すること自体がおかしいと書いてありますよ」。
 カバンから取り出して見せたのは、彼が尊敬するというホリエモンの本だ
った。

 お客のニーズを知る努力は良い。読書習慣も素晴らしい。読んだ内容を自
分の実践に活かす姿勢がまた称賛に値する。けれども男性客は普通「オンナ
が好きで来ている」と本音を言わない。ホリエモンの会社の社員は、辞めさ
せても多分代わりが幾らでも見つかる。彼に気づかせるべきことをどちらか
が指摘するか、店長と私は黙って駆け引きしていた。
 
「企業はビジョンを持つべきだ」。「企業には社会的使命がある」。「企業
は社会的貢献を常に意識すべきだ」。「社員は好きな仕事で才能を開花させ
るべきだ」。「人間は褒めて育つものだ」。「人間は動物と同じで厳しく指
導しなくてはダメだ」。「お客の意見には耳を傾けるべきだ」。「誰でも歓
迎する入りやすい店が良い店だ」。「社員を残業させるのは良くない」。

 紋切り型の経営鉄則が氾濫している。誰が何を言いふらしてどのように儲
かっているのか、実際の所は分からない。けれども、そうした似非鉄則を真
に受けて、徒労を重ねる人や失敗の傷口を広げ続ける人を最近よく見かける。
クライアントからの要望で増えてきた読書系の勉強会も、こうした情報リテ
ラシーの向上が期待されているのだろう。
 
 或る日、サービス向上がテーマのパチンコ店の勉強会で、来店客にはまず
コーヒーを出して、じっくりと雑談するという靴店の事例を紹介した。する
と、「なるほど。コーヒーを出すのが良いんですね。ウチも開店前の行列の
お客様に缶コーヒーを配りましょう」と主任が真顔で言い出した。店長は
「文脈読め…」と頭を抱えて呟いた。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

今年も恒例19周年特別記念号の準備が最終段階に入りました。
今年のテーマは…

●13周年記念特別号:中小零細企業のIT活用
●17周年記念特別号:人工知能と中小零細企業経営
と来て、中小零細企業とIT活用シリーズ第三弾として、

『中小零細企業の最低限情報セキュリティ対策』です。
普段、ITインフラや情報管理についてのテーマが
ほとんどない当コラムですので、
周年記念特別号で取り組むことにしました。

例年通り、今年も10月末日発行です。
ご期待ください。

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『人間さまお断り…』 ジェリー・カプラン 著
■『マンガでわかる統計学…』 大上丈彦 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
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次号予告:
 第450話 『メタ杞憂』 (10月25日発行) 
 ポジティブ思想の蔓延のせいか、自社の事業の現況に危機感をほとんど抱
いていない中小零細企業の幹部や社員を比較的頻繁に目にするようになりま
した。それに対する経営者の思いを描いてみました。

(完)