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経営コラム SOLID AS FAITH 第448号
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ご愛読ありがとうございます。第448話をお届けします。
今年も年一回の中小企業診断士登録更新研修を受講してきました。今年は、
約20年ぶりに東京の会場で受講してみました。創廃業と生産性向上の2テー
マで、非常に深みのある分析をたくさん聞くことができました。研修の後、
書店で中小企業白書のハイライトをまとめた書籍も早速購入し、習ったこと
を復習しています。
研修で紹介されたデータにありましたが、オーナー経営者の年齢の最頻値
は過去15年間で約15歳上昇し、既に60代後半です。数年以内に大量のオー
ナー経営者が引退することでしょう。その少なからぬ割合の企業に後継経営
者が存在しないと言われていて、大廃業ラッシュの轟音が近づいて来るよう
に感じられます。2020年からの景気の後退を予測する声がありますが、好不
況に関わらず、明日なき企業群に経済自体が翻弄されそうな気配です。
20代後半に留学していた米国は不景気のどん底で、フロントガラスが割れ
てビニールシートを貼った車が道路を走っているのを見かけたことさえあり
ます。その後、帰国した日本もすぐに「失われた20年」に突入して、ビジネ
ス誌の出版社で取材する経営者の間の最もホットな話題は、「減収増益」の
方法論でした。
「またあの時代が来るのかな」と考えると少々興奮します。2020年から2025
年ぐらいの間は大変革の期間になるのではないかと思っています。弊社クラ
イアント企業には、それまでに為さねばならないことのスケジューリングを
奨めています。限られた時間に可能な限りの備えをすること。そのお手伝い
をする仕事が間違いなく増えています。
今回は『進歩の原理』と題して、動機付けの一面について考えてみました。
「成果主義」は今や組織の現場で普通の言葉になりましたが、その原理を根
本から考え直してみる題材を扱ってみました。一緒にご一考いただければ幸
いです。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返
事の目標納期は5営業日!!
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その448:進歩の原理
「あの副主任のことを市川さんは評価できるって言いますけど、ウチの会社
の方針からすると、やっぱり昇格させられないし、昇給させられないし。評
価できない奴ってことなんですよ。この業界は何にしても数字が明確に出る
じゃないですか。結果の数字が出る以上、その数字がよくない奴を高く評価
する訳には行かないんですよ」。
副主任達の研修を終えた私に対して、店長が或る副主任の評価について語
った。その副主任は私には努力家に見える。スタッフ達の人心の把握に常に
心を砕いているのが窺える。ミーティングも連絡事項の機械的な伝達で終わ
らせない。現場の課題を話題にして、スタッフで自由に考えを言わせてみた
りしつつ、解決方法を皆の合意の下に決定しようとしている。ただ、彼の担
当している昼番の時間帯は元々グループ店舗に比べて稼働が低かった。おま
けに前任者との折り合いが悪くスタッフの退職が重なり、今のスタッフの多
くは経験が浅い。彼が着任してから三ヶ月。少なくとも数字に見える結果は
出ていない。
「私の言っている彼に対する動機付け策は、“昇格”だの“昇給”だのばか
りではないことはご存知の通りですけどね。正攻法の努力しているプロセス
を認めてやらないと、組織全体が結果さえ出せば何をやっても良いような風
土になりかねないのではないですかね。それに、彼のケースもそうですが、
結果を出すための環境は平等ではないはずですから」。
私は聞く耳を持っていなさそうな店長に向かってぼそりと呟いた。
「感情スタイルと左前頭皮質の接近回路についての知見をもたらした心理学
者のリチャード・デビッドソンは、二つのタイプのポジティブな感情につい
て述べている。最初のタイプのものは、目標に向かって前進することに伴っ
て得られる快感情であり、彼は「目標達成前ポジティブ感情」と呼んでいる。
二番目のタイプのものは「目標達成後ポジティブ感情」と呼ばれ、欲求して
いたことを達成した時点で生じるとデビッドソンは述べている。(中略)目
標を追及する際に本当に重要であるのは、その道中であって目的地ではない。
(中略)これは、「進歩の原理」と呼ぶことができるだろう。快楽は、目標
を達成することからよりも、目標に向かって前進することによって訪れる」。
私が何度も読み返したジョナサン・ハイトの『しあわせ仮説 古代の知恵
と現代科学の知恵』の一節。
世の中がそれなりに複雑になってきたらしい。それなら、以前にも増して
結果は出にくく、結果の出し方も既知の方法論には必ずしも従わなくなって
いるはずだろう。AI普及後の人間のマネジメントには、適切な快楽に拠る動
機づけがもっと模索されるべきだろう。
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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】
ご挨拶でも述べた中小企業診断士登録更新研修で
オーナー経営者の高齢化が急速に進んでいることを知りました。
後継者難であと数年以内には廃業する会社が、
100万単位で存在するという説もあります。
景気後退の訪れが予測される2020年は、
好不況に関係なく、大廃業ラッシュも訪れるかもしれません。
後継者が見当たらなくて廃業に至る企業群の陰には、
後継者がいても、中小零細企業型の経営を実践できず、
廃業に至るケースも多々存在します。
弊社代表の市川は、サラリーマン時代最後の数年間、
ビジネス誌を出版する出版社で、
12日間連続型の後継経営者育成セミナーを
企画運営していました。
独立後も後継者が社長になる前の段階から、
継続的に深く入り込んで組織づくりに協力する形の
案件実績が多数あります。
後継経営者が知るべき中小零細企業型の経営。
このたび市川が自分の経験をもとに、
後継経営者育成をテーマとした電子書籍を
出版することになりました。
原稿は既に完成しており、近日中に発売の予定です。
タイトル・発売日は決定次第、改めて報告いたします。
弊社の後継経営者育成に関わるサービスは
弊社サイトのこちらのページをご参照ください。
http://msi-group.org/msi-4successor/
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】
■『ディベートが苦手、だから日本人はすごい』 榎本博明 著
■『日本語はなぜ美しいのか』 黒川伊保子 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
下のアドレスにご意見・ご感想を頂ければ幸いです。
bizcom@msi-group.org
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インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を利用して発行しています。
(http://www.mag2.com/ )
毎月10日・25日発行 盆暮れ年始、一切休まず足掛け19年。
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ソリアズのバックナンバーも各号の全文が読める弊社ブログ。
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次号予告:
第449話 『青い文脈』 (10月10日発行)
どこの書店にもある『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』に描かれてい
る“読めない対象”は教科書だけではなくコンテキスト全般です。企業の現
場でコンテキスト読解力の欠落を考えてみました。
(完)