446 普遍的幹部

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経営コラム SOLID AS FAITH 第446号
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 ご愛読ありがとうございます。第446話をお届けします。

 行きつけの歯科医が廃院し、弊社代表の市川が近隣の別の歯科に掛かり始め
た所、一本の奥歯の根が腐っていたのを「治療が必要です」と宣告されました。
15年以上前に既に発見されていたのですが、その発見時点で歯茎を横から切開
して該当箇所を抉ってみても完治しませんでした。けれども、特段痛む訳でも
なく、特段食事などに支障がある訳でもなく、治そうとすれば歯科医では抜歯
するしか選択肢がない中、「QOL重視」的な発想で日常生活を維持できるなら
敢えて抜歯などの手段を追求しないことにしていたものでした。

 宣告してきた歯科医に市川は「抜かずにできる範囲の治療であるなら行ない
たい」との旨を伝えましたが、所謂「根の治療」を一定期間行なっても治らず、
逆に中途半端に刺激したことで、突如激しい痛みと腫れが収まらなくなってし
まいました。まさに恐れていた通りの「寝た子を起こした状態」になってしま
ったのに、その歯科医は「医師は治療するのが当たり前で、治療は完結しなく
てはならないから、後は抜くしかない」と、患者の意向を無視した主張を繰り
返すので、相手にするのを止めました。

 抜歯以外の選択肢を探っても多くの歯科医や口腔外科医が「抜歯するしかな
い」と言う中、「歯茎を横から深く抉り、腐った歯の根を削り取り、さらに顎
の骨の該当部も削り出す手術」の実施に同意する口腔外科医を唯一見つけまし
た。術後に酷く腫れることや痛みも一週間程度続くこと、再発の可能性もゼロ
ではないことを含んだ上で受けた手術は成功し、完治に至りました。

 抜歯すれば人生初の入れ歯になっていたところですが、永久歯を抜かずに済
ませることができました。「8020(ハチマルニイマル)運動」と銘打って、
「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」とポスターを貼った診察室で、
抜かずに済む歯を「治療の名の下に抜かねばならない」と執拗に主張する何人
もの歯科医の欺瞞的な姿勢に、色々なことを考えさせられました。今後当コラ
ムのネタとしても活用できそうなエピソードが多数入手できた貴重な体験とな
りました。

 今回の『普遍的幹部』は、中小零細企業の組織に有名なカッツのスキル・モ
デルを当て嵌めてみる考え方をまとめてみたものです。一緒にご一考いただけ
れば幸いです。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへの
お返事の目標納期は5営業日!!

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その446:普遍的幹部

「まあ。あの人は長くいてくれているけど、パートだぞ。幹部の話を聞いたの
に」。
 或る社長と幹部教育について話をしていて、自社には幹部がいないというの
で、私は先方の現場にもう15年も勤めるパート社員の主婦を名指しした。パー
ト社員なのに幹部。私の指摘に社長がかなりの違和感を持っていることが表情
から読み取れた。

 私が考える幹部の条件は、社内において社長の代弁者・代行者たり得ること。
役職や給与の多少は全く関係ないと思っている。件のパート社員の女性は、社
屋地下にあるライン作業のすべてを把握していて、ライン末端に現れる完成商
品の品質に対して社長と全く同じ評価が下せることを私は知っていた。逆に、
「執行役員」の制度もなく、昇格の終着点として「取締役」になっても、やる
ことはルーチン作業ばかりで、不測の事態には狼狽するばかりのような、中小
零細企業に散見される古参人材を私は幹部と見做さない。

「そういう“幹部”の人達には、超基本レベルで良いので経営の基礎を教える
と本人も喜ぶし、社長も楽ができるようになりますよ」と私は社長に勧めた。

 中小零細企業の社員のスキル構成を考える際に、私はよくカッツのスキル・
モデルを用いる。テクニカル・スキル、ヒューマン・スキル、コンセプチュア
ル・スキルの三分類だけなら、ただの定義。それを役職や立場毎にどれがどれ
ほど必要か、簡単に図示した所が、スキル・モデルのモデルたる由縁である。
或る会社の勉強会でスキル・モデルを説明したら、休憩時間にスマホで検索し
てみた参加者から、「市川さん、カッツのスキル・モデルはマネージャーのス
キル分類と書いてありますよ」と指摘を受けた。

 果たして10人前後の組織にマネージャーは存在し得るのか。私のクライアン
ト企業の組織図を書くと、やたらにシンプルな文鎮型の指揮命令系統が浮かび
上がる。多分、マネージャーを意識してカッツが作り上げたスキル分類が、中
小零細企業の組織構成員に構造的に非常によく当てはまるのは、彼らが全員社
長の真下に位置付けられているからだろう。

 大好きなミンツバーグは名著『The Nature of Managerial Work』の中で、
マネージャーは組織本来の役割を果たしていず、組織の欠陥故に存在すると喝
破している。役職や就業形態や報酬の多寡に拠らず、多くの者が社長の代弁者
・代行者たり得る組織。役職や就業形態や報酬の多寡に拠らず、多くの者が組
織の構造上の欠陥の補修に知恵を巡らせることができる組織。そんな理想に近
づいた実質的に無階層な中小零細企業組織には、社長と社長のクローンのよう
な人材が増えてくるということなのだろうと、私は考えている。

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次号予告:
 第447話 『続・動機の圧搾』 (9月10日発行) 
 2006年に書いた第152話『動機の圧搾』に登場する「頭の中のタンス」の仕
組みが最近の脳科学の発達によって明らかになってきたようなので、それを検
証してみました。

(完)