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経営コラム SOLID AS FAITH 第445号
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ご愛読ありがとうございます。第445話をお届けします。
まずは暑中お見舞い申し上げます。酷暑が続いていて、テレビをつけると
「命に関わる危険な暑さです」と何度も繰り返されています。弊社代表の市川
は暑いのが好きなので、依然として毎日ハイな気分でへらへらと陽気に過ごし
ています。所謂「酸性O型体質」で、蚊に刺されることが多く、刺されるとや
たらに腫れるのですが、今年は殆ど蚊に刺されません。ネット情報に拠れば、
高温になると蚊も短命になり活動時間も短くなるらしく、酷暑は酷暑なりに良
いこともあるものだと感心させられました。
8月に入って、そろそろ10月末日に毎年発行する当コラムの周年記念特別号
の企画を考える時期になりました。今年は19周年記念特別号です。幾つかの
候補となるコンセプト案を用意しつつありますので、その中から近日中に決め
て原稿作成に入ろうと思っております。
今回の『気合と根性』は、中小零細企業の現場の平凡な社員動機づけ策につ
いて考えてみたものです。「どうすれば社員はやる気を出すのか」。この疑問
を持つ経営者は(既に諦念に至ってなければ)非常に多いはずですが、その裏
では人として当たり前の最低限のコミュニケーションが為されていないケース
もよく見つかります。今回は無意識への動機付けにも言及してみます。ご意見
・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5
営業日!!
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その445:気合と根性
「とうとう。リフォームの工事が終わってさ。お互いに丸見えになったぞ。社
員の側からしたら、こっちが見ていなくても、ずっと見られているように感じ
るだろうから、緊張して仕事をするようになるってことなんだろうな。こっち
も変なことができないけどな」。
その社長は会社の事務室と隣接する社長室の間の壁を取り払い、事務所にい
る社員の様子が常に見えるようにした。以前、私が訪問した際にした雑談で、
私が物理的に組織を分けることが、中小零細企業の強みを削り取ってしまうこ
とになると指摘したら、「やっぱりそうか。前から気にしていたんだ」と答え
ていた。今回訪問したら実現されていた。
「監視して社員に緊張感を与えるだけなら、監視カメラを設置するだけでよか
ったんで」。
私が考える物理的分断の排除のメリットは、無意識のうちに行なわれる情報
共有、社長から社員へのリアルタイムでの支援や決裁の実現、そして、適切な
タイミングでの声掛けによる動機づけ。それを社長に説明しなおすと、「声を
掛けたら、社員はやる気が出るもんなのか」と社長は訝し気に私を見た。
多くの社員は承認欲求に絆されて毎日働いていると、私は考えている。社員
の存在そのものを認めるだけでも欲求は満たされる。単なる挨拶でさえ相応の
効果が出る。「さっきの電話対応、さすがだな」などと言えばさらに効果が出
る。そう説明すると、「なるほどなぁ。席で自分の仕事をバリバリやって見せ
るだけではダメなんだな」と社長は頷いた。
細心の脳の研究結果を分かりやすく説明する池谷裕二氏の『脳には妙なクセ
がある』には、「ガンバレ実験」と呼ばれる実験が紹介されている。モニター
を見ながら単純作業をやっている最中の被験者に対して、モニター上に人間の
意識では視認できない速度で「がんばれ」などと表示する。表示した被験者群
は表示が出ないコントロールグループの人々に比して、作業効率が伸びたと言
われている。
1957年に行なわれた映画館で観客にポップコーンとコカ・コーラを買わせる
ようにするメッセージの挿入実験は、サブリミナル効果の事例として有名な反
面、効果に関してはかなり疑わしいと指摘され続けてきた。しかし、「ガンバ
レ実験」は有意な差を生んだらしい。
人は承認されたいどころか、目で認識できないような情報のやり取りの中で
さえ、気遣いを求めている。ポップコーンやコカ・コーラを買う気にならない
人は居ても、気遣いや応援を求めない人は居ない。無意識でさえ人がそれを見
出し自らを奮い立たせるなら、ナマの声で言われる承認や称賛により大きな効
果があるとの想定は妥当だろうと思う。
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次号予告:
第446話 『普遍的幹部』 (8月25日発行)
有名なカッツのスキル・モデルはマネージャーを対象として作られていると
言います。それを中小零細企業の組織に当て嵌めて再考してみました。
(完)