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経営コラム SOLID AS FAITH 第442号
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ご愛読ありがとうございます。第442話をお届けします。
入梅と共に雨がちになってきました。暑いのが好きな弊社代表の市川は、
その先の特に暑くなると言われている今年の夏を非常に楽しみにしています。
市川が書いた就活についての電子書籍の第二弾はぽつぽつと日々売れていま
す。ご関心、心より御礼申し上げます。第二弾は第一弾よりも内容が広範で、
地方都市の就活の在り方や派遣などの非正社員の選択肢などについても言及
しています。働くことそのものについての考える材料にもして戴けたら幸い
と存じます。詳細はPR欄をご覧ください。
今回の号は『自尊過多』と題して、働く者が持つ自信や自尊心について考
えてみました。モチーフとなっているのは、市川がサラリーマン時代最後の
数年に立ち上げた、元大手企業幹部人材を中小零細企業へ紹介する人材紹介
事業の中の一場面です。単純に紹介するだけでは、全く案件が成立しません
でしたが、その最大の原因は、人材側の過剰な自信でした。
自信があることは悪いことではありません。自尊心なく人生を送ることが
良いと考えている訳でもありません。しかし、経営の今回には常の変化が必
要である以上、経営に携わる者には、経営の現状にも自分の能力にも常に懐
疑を抱いている必要があるように思えます。そのような論点を一緒にご一考
ください。ご意見・ご感想お待ちしております。頂戴したご感想などへのお
返事の目標納期は5営業日!!
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その442:自尊過多
今から20年前でもかなり旧式なテレコのスイッチをガチャリと私が押すと、
スピーカーからゴモゴモと男性の雑談の声が静かな部屋に響き渡る。椅子の
背凭れを背中で押すように踏ん反り返って聞いていた50代後半の男性たちは、
だんだんと前傾姿勢になり、拳を握り締め、表情を強張らせて行った。時間
にして10分弱。「それでは、次の社長です」と一旦止めたテープをまた私が
スタートしようとすると、「こんなことをして、何になるんだ。人を馬鹿に
して何が楽しい」と叫んで立ち上がり一人の男性が部屋を駆け出て行った。
彼らは一部上場企業の部長級だった。自社グループの人材系子会社かアウ
トプレースメント会社に希望退職応募後に籍を移して再就職の道を探ってい
た。バブル崩壊直後。彼らを受け容れる大型組織は二部上場企業でも見つか
ることはなかった。中小零細企業のオーナー社長向けのビジネス誌出版社に
勤めていた私は、そこで読者企業向けの人材紹介事業を立ち上げることにな
った。売り捌くなら高い方が良い。リストラで溢れ返っていた大手幹部経験
者を中小零細企業に売るビジネスモデルを考えた。
中小零細企業のオーナー経営者には不評の「尊大な態度」や「評論家魂」
を人材から払拭する「加工」が必要になる。自誌の「求められる幹部」の記
事を用いてグループワークを数日行なってから、シンパの読者企業にインタ
ーンに三日間ほど行ってもらった。
「中小企業の経営はほんとに穴だらけだ。私が元の職場でやっていたことを
話したら、社長は感銘を受けていた。条件で見合うか分からないが、中小企
業で私たちの活躍の場はたくさんあると分かった。転職してこうした中小企
業を助ける立場になっていきたい」。
彼らはインターンの感想を口々に言っていた。私が録音してきたのはイン
ターン先の社長の本音。社長たちは総じて「全然使えないので、くれても要
らない」と評価していた。参加者の半数は社長の評価を受け止められず脱落
する。残りはゼロからやり直す覚悟を決めて、中小零細企業での働く姿勢を
努力して身に着け、二か月以内に再就職を決める。
その日、新規の引き合いをくれた企業の社長を訪ねた。50人ほどの社員数
で入社五、六年の20代後半の社員数人を幹部に育てたいという。自信をつけ
させてやりたいんですよと気さくなスポーツマンタイプの社長は、明るく語
った。私の浮かない顔の理由を社長が尋ねるので、ベンチャーでもない小さ
な会社の組織づくりの観点ですがと、口を開いた。
「その若い社員さんたちは、仕事の質としては漸く一人前の元気な社員と言
う感じですね。その状態で自信を持たれると、慢心して伸びなくなりますよ。
褒めておだてなきゃいけないのは、入社一年じゃないでしょうか。幹部は社
長以上に危機意識を持っていないと」。
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次号予告:
第443話 『閑居の本質』 (7月10日発行)
ES対策に社員の休日を増やしたいという社長との会話を再現してみました。
(完)