435 愛憎の設計

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経営コラム SOLID AS FAITH 第435号
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 ご愛読ありがとうございます。第435話をお届けします。

 最近、「これはヤバい」とどうしてもすぐ読みたくなる書籍に弊社代表の市
川は巡り合います。つい先日は成毛眞著の『AI時代の人生戦略 「STEAM」が最
強の武器である』がドハマリでしたし、その中に紹介されていた『限界費用ゼ
ロ社会』も読後数日考え込んでしまいました。AI関係で言うと『AI vs. 教科
書が読めない子どもたち』も劇薬級です。AI以外の分野なら、『新版 動的平
衡』も人間観が大きく変えられる一冊です。

 先月から或る会社の社員の方々が自腹で弊社に読書会の企画を依頼してくだ
さいました。表層的な情報を受発信するだけならキュレーションのアプリでも
簡単にできることでしょう。世の中そのものの行間を読み、背景を読むことが
必要であろうとの私の考えに共感して下さった結果のご依頼でした。

 こうした大仰に言うと「見えている人」と「見えていない人」の差は拡大す
るばかりであるように感じられます。「貧富と言うよりも、教育とか知見の格
差の方がよっぽど危機感が湧くよね」とは、弊社のクライアント企業経営者数
人の共通した意見です。大雑把な構造でみると、経営者も含め「見えている人」
を組織内に増殖させるご依頼をいただくことが増えています。

 今回お届けする第435話は、最近新卒採用の広告などでも散見されるアット
ホームな企業風土について考えてみたものです。中小零細企業でも組織がその
構成員である社員やスタッフとの距離感を計りかねているケースを時々目にし
ます。酒場の与太話の延長ですが、そのような構造を含むケース・スタディを
ご一緒にお楽しみ戴けたら幸いです。本文に対するご意見・ご感想をお待ちし
ております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その435:愛憎の設計

「社員旅行だよ。社員旅行。今時、そんなアナクロなことしている会社無いで
しょ。そんなバカなことにカネをかけていたら、簡単に会社が潰れるって」。

 行きつけのバーでママがカウンター席で私の隣にいた40代後半の女性に、私
が中小企業診断士だと明かしたら、彼女が最近管理職として転職した先の中小
企業の社員旅行制度を糾弾し始めた。酔っぱらいの主張は聞き流しつつ、「ア
ナクロとはまたアナクロで最近聞かないよなぁ」などと思っていたら、しつこ
く私の同意を求めてくる。ママまで「どうなんだい」と尋ねてくるので、仕方
なく話をすることにした。

「酔っぱらいの人にも分かりやすいように言いますが、私の知る限り、業績が
相応に伸びている優良企業で社員旅行をしている会社は結構ありますよ。私の
行っている老舗の床屋のチェーンも年に1、2回、研修旅行と称して、研修と
BBQ大会セットの旅行とかに出掛けているし。結構簡単に例が浮かぶぐらいで
すよ。課長?とか言うお話ですから、いっそ、社長に「アナクロです」って意
見して止めてもらったらいいんじゃないですか。まあ、会社は社長のもんです
から、自分が辞めることになる可能性も否めませんけど。店舗に合った客が選
別されるのと同じで、会社のやり方に適応する社員が結局残る訳ですから」。

「いやね。私だって、新卒の子達が最近よく言う“アットホームな職場の雰囲
気”とか認めない訳じゃないんですよ。で、そういう会社に入りたい子が増え
ているんでしょ。けど、社員旅行なんてねぇ。家族的経営を目指すんなら、も
っと計算づくできちんとそういうのを作らないとダメだと言うことを私は言い
たいんですよ」。

 部長代理と判明した彼女が、私の答えを“アットホーム経営”とかいうもの
と摩り替えて、剰え自分の主張も摩り替える。縁も所縁も、ましてや銭金の関
係もない人の憤懣を癒す趣味はない。愚昧な管理職を誤って雇うオーナー社長
への採用改善提案をする欲求を抑えて、「計算づくの家族的経営」の話をきっ
ちり聞かせてやることにした。

「私が人材派遣会社にいた頃、後輩の30代前半の女性が、有名な中古品扱いの
チェーン店のマネージャーの男性と付き合っていたんですよ。或る日、彼女の
家に彼の上司が訪ねて来て、『●●君と別れるか、ウチに転職してくれ』と
言って来たらしいですよ。何かそのチェーン店では幹部の動機づけを図るため
に社内結婚を社内方針として推進しているらしくて。彼女も転職したら幹部候
補にしてやるとか言う話でした。まあ、結局、飽きれて別れちゃったらしいで
すけどね。こう言う色恋沙汰までベタに設計するのが、計算づくの家族的経営
なんじゃないですかね。そう言う会社が望ましいと言うお話なんですね」。

 目以外はにこやかな表情で私は言った。彼女は席を立ち、ママは呆れて苦笑
していた。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

10年ぶりの大更改を終えた合資会社MSIグループのウェブサイト。
弊社代表の市川がクライアント企業の勉強会でよく使う
経営用語をズラリと一覧にしてみました。

米国の大学で経営の基礎やマーケティングの基礎、
そして、組織心理学の基礎を習った市川の
原典での定義に忠実な考え方であったり、
本来大手企業で言われる言説を
中小零細企業の現場に反映させた結果であったりと、
「普通の本に書いてあるのと違う!」と言われることの多い
市川の中小零細企業向け経営用語集。

読んでいくと、大手企業とは全く異なる
中小零細企業の組織運営の鉄則のようなものが
なんとなく見えてくること請け合いです。

是非、ご一読ください。
 http://msi-group.org/category/msi-glossary/

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『「年金問題」は嘘ばかり』 高橋洋一 著
■『アンドロイドレディのキスは甘いのか』 黒川伊保子 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第436話 『次世代タンス預金』 (3月25日発行) 
 近い将来、財産はカネではなく信用に変わると説いている書籍を読みました。
既に遥か昔からそうなっている気もする主旨について、少々考えてみました。

(完)