1月中旬の封切から約1ヶ月。2月の三連休の真ん中の日曜日、バルト9で深夜12時20分の回を観て来ました。バルト9では前の週まで(記憶が定かではありませんが)「“Z”叫応援上映会」のような名称の皆で叫びながら観る回が1日1回あったはずですが、今週は通常の上映が1日4回あるだけになっていました。応援上映会の類は、『シン・ゴジラ』か何かの映画でそのようなものがあると、存在だけは知っていたので、多少関心が湧きましたが、やはり、集中して映画を観たいと言うことと、マジンガーZと言う作品自体が、嫌いではないものの、物凄いファンでもなく、絶叫するほどに自分がマジンガーZを応援したくなるとは思えなかったので、通常上映会を観ることにしていました。
兜甲児がマジンガーZを操縦しての激闘を終えてから10年と言う設定と、トレーラーで見て鑑賞前から知っていましたが、兜甲児自身は、その後、『グレートマジンガー』でも『UFOロボグレンダイザー』でもかなり活躍しており、その間の話と10年経過の時間軸はどうなっているのかは非常に気になる所でした。
バルト9のロビー階の小さなシアターに入ると、狭い場内に観客は四人しかいませんでした。全員オッサンで平均年齢もほぼ私と同じ感じぐらいに見えました。最後列に陣取ったのは私ともう一人のおっさんでした。
私はマジンガーZと言う作品のファンの域には入っていません。リアルタイムの放送の頃にも小学校高学年になっていましたが、他の何かの番組なりSFものなりにハマっていたのか、毎週見ていたような記憶がありません。以前、バルト9で自分も含めてたった二人しかいない観客で観た『ロボットガールズZ』から関心を持ち、DVDでテレビアニメ・シーズをレンタルして全巻をじわじわと見ました。見たストーリーの半分ぐらいは記憶にあったので、まあ、その程度の思い入れ度合いだったのだと思います。
各種のロボット・アニメの色々な意味での定番を作った金字塔的作品とは、見返してみて思うものの、今から見ると中途半端なちゃっちさは気になります。私は当時から永井豪作品は非常に好きでしたが、コミックのベスト5を挙げるなら『デビルマン』がダントツ一位で、続いて『キューティーハニー』、『バイオレンスジャック』、『ゲッターロボ』、『けっこう仮面』になります。『マジンガーZ』は寧ろ雑誌の連載作品として親しんだ気はします。その続きの『グレートマジンガー』や『UFOロボ グレンダイザー』はアニメでまあまあ見ていましたが、特段ファンと言うほどの印象はなかったように思います。
マジンガーZをさらに見直すことになったのは、永井豪が現在(断続的なようですが)連載をしている『激マン!』です。永井豪の過去の作品創作の経緯を描いた作品ですが、その第一部が『デビルマン』で、第二部が『マジンガーZ』です。彼にとってのこの作品の重さが分かるテーマ選択だなぁと思います。この二番手に挙がったことで、テレビ・シリーズをDVDで見終ったばかりの『マジンガーZ』の(私の中における)付加価値は大きく向上したように思います。
そんな中で、テレビ・シリーズ終了の段階から10年後の世界を描くと聞いて、続きを観てみたいと言う風に思ったのが、この作品を観に行こうと考えた最大の動機です。観てみて、物語の構成や設定は非常に楽しめましたし、良作と思いますが、結果的に10年後の世界観と言う所には、あまり納得が行きませんでした。10年後の世界として無理がある理由が二つあります。一つは、明らかに時代背景的に10年後ではないことが挙げられます。マジンガーZ終了時点は、リアルで行くと1970代前半で携帯電話もない時代です。その10年後にいきなり自動運転の現状の自動車とは大きくかけ離れた形状の乗り物が走り回る時代になっていることには、無理があり過ぎます。何が10年後になったのかと言えば、主人公達が10歳を取っていると言うことのようです。
もう一つの10年後と思えない理由は、冒頭で書いたように、『マジンガーZ』の後続二作品の世界観が含まれていないことです。『グレートマジンガー』の世界観は一応引き継がれているどころか、或る意味、マジンガーZの引き立て役として、本作にグレートマジンガーはバリバリ登場します。操縦者の剣鉄也もヒロインの炎ジュンもガッツリ登場するどころか、夫婦になっていて、炎ジュンは妊婦で劇中で出産までします。その意味では『グレートマジンガー』は引き継がれていると言えますが、『…グレンダイザー』の方は完全無視のようです。
「完全無視のようです」と書いたのには理由があります。マジンガーZの登場キャラのボスが劇中でラーメン店を経営していますが、そこに来ている若い母と娘はボスからかなり親し気に話しかけられています。映画紹介サイトのこの作品の登場人物欄でも名前が出てこず、パンフにも登場しませんが、もしかすると、『…グレンダイザー』の登場人物である可能性もあるものと思ったからです。
ちなみに、剣鉄也と炎ジュンの所帯染みた感じには驚かされます。二人は戦後でもあまり見ないようなベタな商店街に沿った木造のアパートの二階の2、3間しかないようなベタな部屋に住んでいるのです。あの外見の剣鉄也が畳の間の木製の窓枠近くに腰かけて、商店街を見下ろしながら、「これが好きなんだ。ジュンもこれでいいだろ?」的な発言をします。メトロン星人が畳部屋の卓袱台を挟んでウルトラセブンと対峙する。あのシュールさにかなり近いイメージの場面です。なぜこういうキャラの性格付けをしたのか私には全く分かりませんでした。そして、この木造アパートは、『グレートマジンガー』放映時から確実に時間が止まっているように思えます。
いずれにせよ、劇中では、「10年前のあの戦いで…」のように執拗に登場人物が口にする重大な世界的な事件があったことになっています。それは、マジンガーZの最終回の戦いであったようです。その後のグレートマジンガーの戦いはどう認識されているのかは分かりません。まして、宇宙からエイリアンが大量に飛来してきた長い戦いがあったはずで、本作の主人公の兜甲児もかなりの関与度合いでした。さらに言うと兜甲児はグレートマジンガーやグレンダイザーの戦いに参画していない間は、米国で研究者稼業をしていたはずです。10年でこれらの戦いがそれなりに続いているはずであるのに、この作品ではその存在が無視されていると考えるべきでしょう。
この10年後の世界観がかなり眉唾である点を除けば、特にマジンガーファンのような人々には、非常に楽しめる作品だと思います。物語設定も上手くできていますし、今は光子力研究所所長になった弓さやかと兜甲児のじれったい恋愛物語も上手く折り込まれています。ガンダムで言うとジムのようなマジンガーZの量産機のようなロボット軍団を率いるシローの言動も、非常に物語にしっくりきます。さらに、今は亡きもりもり博士なしの二人の博士の立ち位置や、人情大将のボスとその部下たちのキャラもきちんと原作から踏襲されているように感じられます。この作品のオリジナル・キャラも上手く物語のカギとなって溶け込んでいます。
出てくる夥しい数の機械獣はマジンガー時代のものばかりで、これまたファンの興奮はそれなりになるでしょうし、ちょっと金属資源の無駄遣いが気になって仕方ないほどに、ブレストファイヤーや光子力ビーム一発で十体近くの機械獣が破壊されてしまいます。マジンガーZは100話近いエピソードがあり、1話に複数体の機械獣が登場しているケースがあるので、元々かなりすごい数の機械獣のレパートリーがあるはずですが、それでさえ足りないのではないかと思われるほどの夥しい数の機械獣が登場しては破壊されて行きます。シューティング・ゲーム並みのカタルシスが延々続く戦闘シーンにあるものと思います。
マジンガーZの最終回のように、最終決戦の直前には、一旦ズタボロにマジンガーZは追い込まれ、そこから大逆転劇に至る展開も爽快感を生みます。(それも、『ドラゴンボール』の全世界から気を集めて大きくする元気玉のように、全世界の人類の協力を得ての大逆転劇です。)永井豪が生んだアニメのマジンガーZの世界観の延長線上で丁寧に構築された物語であるようには思えました。CGで描かれたことがかなりはっきりと分かってしまうポリゴン的風情のマジンガーZも、(人間が中心のアニメですと大抵少々辛い感じに思えるのですが、今回は)それほど違和感が湧くものではありませんでした。
鑑賞後、パンフレットを購入に行ったら、完売になって入荷予定はないとのことでした。数日後、偶然、錦糸町に行った際にそこの映画館で上映しているのを発見し、パンフレットだけ購入しました。妙に詳細な1000円もする分厚いものでした。作品DVDは一応買いかなと思います。
追記:
上映前の近日公開作品の紹介で突然、私が最近嵌っているドラマの『仮面ライダーアマゾンズ』の劇場作品のトレーラーが流れ始めて、驚かされました。エヴァのように、テレビ・シリーズの完結は映画で観ることになる様子でした。観なければなりません。