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経営コラム SOLID AS FAITH 第432号
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ご愛読ありがとうございます。第432話をお届けします。
弊社では「季節のDM」と呼んでいる毎年恒例の大判寒中見舞いは、手配り分
も含めて漸くほぼ全部をお届け終えました。あとは、今月末に訪問の予定にな
っているクライアント企業さんに手渡しする分の数通が残っているだけです。
雑誌『SPA!』の連載対談をパロって、『ソリでいいのだ!』と題した弟子と
の対談を載せてみました。以前当コラムの記念特別号で書いている「死すべき
技術としての経営」の実際をテーマとしています。社員向けの研修などを請け
負っている講師やコンサルタントの方々から「考えさせられる」との感想を幾
つかいただきました。
日本のすべての会社がそうではないでしょうし、海外のすべての会社がそう
ではない訳でもないとは思いますが、企業で働く人の(漠然とした定義にすぎ
ませんが)“質”は、平均値でみる限り、間違いなく日本がダントツに優れて
いると弊社代表の市川は思っています。まあまあまともな人が集まっている組
織において、組織構成員が凡事を徹底すれば、企業経営と言う考え方の必要性
がどんどん低くなっていく。その現象は弊社が関わる多くの零細企業で観察す
ることができます。
組織の中を「まあまあまともな人間」で満たす。その目標を経営の軸に置い
た企業は、経営のすべての面において、無理や負荷が激減していくように思え
ます。そんな弊社代表の市川の言葉がストレートに読んで下さった方に伝わっ
たのだとしたら幸いです。
今回お届けする第432話は、営業活動における無駄、特に無駄な出会いにつ
いて考えてみたものです。合理的で効率的な営業活動は、作戦として分かりや
すく妥当でもありますが、何か疑わしく感じられます。ビジョンやキャリア・
オブジェクティブを掲げる美しい就活に代わり、クランボルツの計画的偶発性
理論が台頭してきたように、営業活動においても、偶発性を計画的に創造する
必要があるように思えるのです。一緒にご一考賜れましたら幸いです。本文に
対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事
の目標納期は5営業日!!
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その432:出会いのその後
「やっぱり、今回の展示会もハズレでしたよ。ほんの2、3枚は何とか集めまし
たが、展示会のテーマからして違ったみたいです。ピンと来る展示がないです
し、話した相手の方も、分かってない感じでした。来年はもうこの展示会はパ
スでいいと思いますけどね」。
営業活動の勉強会でビッグサイトの展示会に名刺交換に行った若い社員が報
告した。この会社はパイプを製造する町工場。世に出回る大量生産のパイプは
規格で形状が決まっている。この会社は規格外の形状や素材のパイプを短納期
・少量生産するのが強み。
しかし、問題はパイプが生産財であるが故に、いざ需要が現実に発生した場
面でなくては、買い手側でさえ自分達が規格外のパイプを必要としていること
を認識しないこと。何かの機材類を製造する企業を一軒々々訪問して、ドア口
に来た人間に「規格外パイプ要りませんか」と尋ねたとしても、受注はほぼ間
違いなく覚束ない。
照明器具のシェードに使うパイプを作ったので、照明の展示会に行けばLED
技術ばかりで、パイプが見当たらない。浄水器の一部のパイプを作ったので、
エコ系の展示会に行けば、バイオマスやら発電設備ばかりで、パイプが見当た
らない。何とかパイプ形状の部品を展示品の一部に見つけても、既に規格品で
安くやっていると聞かされて落胆する。
「あのさ。ブリコルールってフランス語の言葉があって、ありものの道具や材
料で器用に棚とか作るような「日曜大工」の意味ね。フランスのレヴィ=スト
ロースって哲学者が、南米のジャングルの所謂“原住民”的な人々がジャング
ルを歩いていて、『何かの役に立つかもしれない』と漠然と判断できたものを
収集して回る様子をそう呼んだんだわ。
で、一応、やっぱり、そう言う経験を重ねたから、直感的に役に立つモノを
色んなものから選別できるようになるのかもしれないけど、拾い集めたモノが、
一応後で予想外の何かに役立つらしい訳よ。問題はそう言う可能性も、拾い集
め始めなければ実現しないこと」。
私は内田樹作品に頻出する話を聞かせたが、若い社員は怪訝な顔をしていた。
この会社は過去にモノ作り系の展示会に自らブースを出していた。しかし、
来場者も出展者も減ってきたので、出展を止めて既存の展示会に名刺集めに行
くことにした。そして、その名刺集めもハズレ名刺が多いと役に立つ展示会を
しぼることを考え始めて数年経つ。
その間ジワリと新規の引き合いは逓減し始めたことを私は知っている。「何
年か前の展示会でお会いしたのですが…」と言う引き合いがポツポツと来る裏
には、役に立たないように見えた多数の出会いから始まる縁の醸成がきっと静
かに進んでいたのだろう。
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次号予告:
第433話 『痛む脛』 (2月10日発行)
大手企業のCSRランキングが発表されているのを聞いて考えたことをちょっ
とだけまとめてみました。
(完)