061 燃え盛る松明

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経営コラム SOLID AS FAITH 第61号
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ご愛読ありがとうございます。三ヶ月ぶりに通常号に戻りまして、第61号を
お届けします。通常号の再開第1号は、後継者の決定に関してまとめてみたも
のです。お楽しみ下さい。

私にとって初めての仕事であった200人の大学生を相手にして“就労観”を
教える講義も、無事、成功裡に終わったようで胸をなでおろしております。あ
とは、200枚のレポートを読んで採点するのみです。「転んでもただ起きない」
感じですが、そのレポートの内容をベースに、今回の講義のエッセンスを何か
の形にまとめたいと思っております。その結果を読者の皆様にも提示してみた
いと思っておりますので、続報をお待ち下さい。
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その61:燃え盛る松明

自己資金250万円で留学して、生活費と学費の両方を切り詰めるために、気
の狂うほどに勉強し、2年半で4年制の卒業資格を得ることができた。入学と
同時に、寮に入った。当初、英語の練習になった二人部屋も、存分に勉強でき
ないことがすぐに分かった。一人部屋に移れば、寮代が嵩む。

1年後、寮を出て、大学の講師の家にホームステイさせてもらうことになっ
た。アームストロング夫妻と子供二人の住む家は、米国の一戸建てとしては大
きなものではない。それでも夫妻は、「家が大きくて寂しいから」との理由で
私を同居させ、金銭は一切受け取らなかった。帰国の際に、「どうしてもこの
恩に報いなければ気が済まない」と迫ると、二つ言いつけられた。一つは「私
達を忘れないこと」。そして、「苦境の中で努力している人を自分で見つけて、
私達に返す分の力で協力すること」であった。

「市川君には後継者っているかい?別に会社を継ぐとかって意味だけじゃない
んだ。君の持っている知識とか、経験とか、ノウハウとか、人脈とか、それを
誰に渡すかを決めているかってことなんだけどさ」。あるコンサルタントが、
連れて行ってくれたバーで私に聞く。

「この年になるとね、昔、人から教えてもらって始めた仕事に一段落がつくん
だよね。で、そのしくみやら、人脈やらを、君みたいに若い人に伝えなきゃっ
て思うのさ。聖火リレーみたいな感じね。前の人からもらった松明をもっと燃
え盛るように自分がして、そして、もっと燃え上がらせちゃうような人を探し
て渡すの」と彼は言う。

ある中小企業経営者に会った。大手企業に修行にやった息子がなかなか戻っ
て来てくれないと言う。3K職場の小さな組織。息子には面白みに欠けるのだ
ろうと社長は想像している。息子はなかなかの「やり手」らしい。後継者には
相応しい。松明はきっとその手でより盛んに燃え上がるだろう。

社長の希望は叶うだろうか。松明の寓話によると、松明をより燃え上がらせ
られる者と言えども、今、燻っているだけの松明を受け取るほど、奇特ではな
いらしい。
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発行:
「企業から人へのコミュニケーションを考える」
合資会社MSIグループ(代表 市川正人)

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次号予告: 第62号 情熱の用途(8月10日発行)
中学生の頃から読み親しんだ小泉八雲の珠玉の文章の中で、一つ釈然としな
い話がありました。『かけひき』と言うその話の気になっていた部分が、近頃、
ある社長の様子を見ていて閃く如く解決しました。多少凝った展開にしてみま
した。ご期待下さい。