419 地下アイドルのいざない

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経営コラム SOLID AS FAITH 第419号
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 ご愛読ありがとうございます。第419話をお届けします。

 先日珍しく、業界団体的な組織が主催する経営セミナーの講師のお仕事をし
てまいりました。セミナーのお題は、店舗のアルバイト・スタッフの採用です。
人口が減ったから採用が困難になったという意見はよく聞きますが、実際には
就労に対する価値観の変化が最大の理由と弊社代表の市川は想定しています。

 端的に言ってしまうと、「カネのために働く人が激減したこと」によると括
れるものと考えられます。もちろん、「何のために働いているのか」と従業員
に尋ねれば、普通は「喰っていくため」と言う答えが返ってくることでしょう。
しかし、本当のニーズはそこにはありません。(ニーズは自分で意識できない
からニーズ足り得るという考え方もあります。)

 そんな状況の国、日本の地方型・都市型の採用のあり方を述べてみました。
御蔭様で、まあまあ好評であったようです。PR欄にセミナー内容を紹介してお
りますので、ご一読ください。

 最近、誰が吹聴して回っているのか、自分で自分の首を絞めるような価値観
を、美談や美徳として語る人が多いように思うことが増えました。普通の会社
で当り前に働くことを、未だに「個性をすり減らしている」だのと受け止めて
いる人に会うと驚かされます。ところが、単に個々人の単位で会うだけではな
く、“女性教祖様”と“信者”の集団に丸ごと遭遇する機会がありました。
 
 価値が多様化していると言われる現在、働くことに割り振る生活上の優先順
位は、人によってまちまちです。ですから、何かの“自己実現などと称される
事柄” などが仕事より優先されている人を見ても、特に驚きはしません。し
かしながら、働くこと自体に対する否定そのものを、いい大人が主張している
のを見ると、流石に辟易したので、コラムにまとめてみました。一緒に一考く
ださい。本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想
などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その419:地下アイドルのいざない

「良い子ってなんですか。…このままじゃダメですか」。
 駅前のビルのB1に降りて行くと、大きく張りのある声が聞こえてくる。知人
に誘われて来ることにしてみたライブハウス。英語の歌詞の発音が今一つであ
ることを除けば、20代前半の彼女の歌は確かに上手い。私を誘った知人も60
過ぎ。元々この場所に出入している客層の年齢は高く、入口近くの私の席から
ステージの間にびっしりと座っている客の8割は私と同年代かもっと上の男性。
皆、歌い手の言うがままに手を叩き、腕を振り、立ち上がり、飛び跳ねた上
に、隙を見てスマホで動画を撮るなど忙しない。

 途中から入った私が聞いたのは全部で6曲。どれも最初の曲同様に、今の自
分をそのままに認めてほしい気持ちを、或る時は切々と、或る時は声高に、聞
き手に求める内容だった。曰く、「最初は角が尖っていた石も、年とともに丸
くなり、最後は個々に認識することもできない砂粒になって消える」、「一糸
乱れぬ行進をする兵隊さんになるために、努力しなくちゃダメですか」などな
ど、“自分の個性を削る”らしい社会に対する恨み節と、それに甘んじている
大人達の不甲斐なさや醜さを描いて行く。

「この子、数年後に30になっても、この内容を恥ずかしく思わないでいられる
んだろうか」。
 あまりに稚拙な世界観に、熱狂の観客の後姿を見ながら、湧いてくる疑問を
反芻した。
 
 以前、『あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑』と言う、若者が毎日苦労を重
ねて仕事を身につける姿を描くNHKの番組があった。道路のセンターライン引
きや美容院の仕事をする登場人物のエピソードが印象に残っている。第三者に
殆ど同じに見える毎日の仕事は、彼らにとって決して同じものではないだろう。
行った先の道路の状況も、来店するお客の様子も、時々刻々と変わって行き、
その対応が迫られる。組織での仕事の本質は自分が変化し適応できるようにな
る成長そのものであると思う。
 
 テレビ番組だけではない。仕事の本質が否応なく理解できる良質な作品群は
本にも映画にも溢れかえっている。ステージから降りて、「今日はありがとう。
いつも考えていることを歌にしてみたんだ。みんなが共感できて良かった」と
明るく私に語る彼女が、どうやって社会と仕事の構造から目を逸らしつつ思考
を重ねたのか、不思議で仕方がなかった。
 
 スマホの写真や動画を大事そうに見直しているオジサンがたは、「共感」の
あまり、自分の会社人生を唾棄すべきものと認識できたのだろうか。大学時代
に棒を振って練り歩き、夢破れた人々なのかもしれない。仮に本当に共感でき
たのなら、憐憫を禁じ得ない。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

先日、パチンコ業界のシンクタンクさんの主催の経営セミナーで
講師の仕事をしてまいりました。

テーマは、
『~スタッフ採用プロセスを抜本的改革~
 人材不足スパイラルから抜け出せ!』です。

今までの採用常識を捨てるべき3つのポイント…として
○求人広告の「媒体だのみ」「代理店まかせ」
○時給や労働条件に依存した訴求
○選考と就業条件説明にだけの採用面接
を挙げてみました。

もちろん、人口の急激な減少により、
どれほど採用プロセスを工夫使用とも効果が殆ど出ない地域もあります。

しかし、やるべきことをやらずして、
採用される人間の価値観の変化や生活上の都合、
そして働くことに対する根本的なニーズなどを正面から捉えずに、
広告サイズや媒体掲載ページ、時給などの労働条件を
やたらに弄繰り回して徒労に終わっているケースは散見されます。

スタッフ採用の根本からの見直し。
ご関心を賜れましたら、メールにてご一報ください。
 bizcom@msi-group.org

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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『人はなぜ不倫するのか』 亀山早苗 著
■『政府はもう嘘をつけない』 堤未果 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第420話 『備蓄礼賛』 (7月25日発行) 
 性格分析のカードを使ってみて分かった自分の性格。その結果について考え
てみました。

(完)