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経営コラム SOLID AS FAITH 第642号
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ご愛読ありがとうございます。第642話をお届けします。
今年も残すところ2ヶ月あまりになりました。秋はどんどん過ぎて冬が訪れ
ます。今年1年に終わらせなければならないことも追い込まねばならない時期
になっています。12月は「師走」と言いますが、師以外はそれよりも早くから
奔走しなければならないかもしれません。
10月末日は恒例の周年記念特別号をあなたにお届けします。今年は27周年
です。既にご案内している通り、今年の内容は副業社員雇用の実務的な問題を
扱います。前号の第641話『盲従の形』で、言わば前振りとして副業社員雇用
の問題を描きました。周年記念特別号ではその問題の構造や対応策などをさら
に掘り下げてみます。
周年記念特別号と毎100話発行記念特別号は通常号と異なり「お祭り号」の
位置づけで、必ずしも中小零細企業の経営の場面を扱っていない内容としてき
ましたが、今回は周年記念特別号では初めての実務的な内容です。読んでお楽
しみいただくのではなく、自社の従業員管理上のリスク管理の論点として、ご
活用いただければ幸いです。
今回の号は『マルチバース』と題して、中小零細企業の現場ではほぼ話題に
もならない「キャリア安全性」について考えてみたものです。一時期「心理的
安全性」がやたらに流行り、まさに猫も杓子も「心理的安全性」と唱えるよう
な状態が生まれたことがあります。その「心理的安全性」が有用な組織運営の
切り口になり得た場所は、全世界のトップ中のトップ人材を集めたグーグル社
(アルファベット社)の現場であったことは忘れられがちで、中小零細企業の
現場に当て嵌まるのには非常に無理のある話でした。
その齟齬が露呈して、「心理的安全性」が廃れると、今度は「キャリア安全
性」が巷間に広がるようになりました。そこで「キャリア安全性」がどのよう
なものかを考えつつ、それが中小零細企業の現場にどの程度適用できるのか想
像をめぐらせてみた内容です。是非、ご一読ください。ご意見・ご感想をお待
ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その642:マルチバース
「心理的安全性」と出元のグーグルとは社員の質がまさに雲泥の差の中小零細
経営者もしたり顔で言い募る時期が漸く終わったようだ。中小零細企業の現場
には殆ど当てはまることもなく、それ以前の幾つかの動機づけなどに関わる理
論で十分説明がつく課題や問題が山積みの現場で、幾ら「心理的安全性」と唱
えても何の御利益もなかったのだろう。
その流行が過ぎたら、今度は「キャリア安全性」が重要になったらしい。自
分の仕事はキャリア形成に資し、今後習得できるスキルは高価値であるのか。
その不安が解消しないと社員は職場を去るらしい。クランボルツの計画的偶発
性理論は中小零細企業の現場でもかなり有効だと思える。自力で偶発を引き起
こす一定以上の努力がなければ、キャリア価値の増加は見込めない。そして私
の過去のクライアント企業から去った人々の多くは、そうした努力はおろか常
識的な見通しもなく転職し、キャリアを一層凡庸に変える。
独立前の私の最後の職場は中小零細企業のオーナー経営者が読むビジネス誌
の出版社。私はそこには転職する1年以上前に内定をもらった。それから毎月
その月刊誌を受け取っては、伝説的編集長からの課題の回答を提出し、その評
価を聞かされるという作業を続けていた。「今月号の第一特集のマーケティン
グ戦略論は読者の関心を惹起できるか。仮にできないとしたらどのような改善
策があるか」。そんな類の毎月の問いの答えを考え続けた一年。その“通信教
育”で得た感覚値は、私の中小零細企業観の強固なインフラとなった。
編集会議で出た記事案を評価する課題も混じることがあった。紙面の常連コ
ンサルタントが仕入れたばかりで未消化の概念や、インターネットもない時代
で検証が難しい「海外で流行」と噂のカタカナ経営用語。それらを鵜呑みにし
て、読者が分かろうが分かるまいがお構いなく、紙面を小奇麗な模式図で埋め
れば、読者はすぐさま離反する。私の入社後の編集会議でも、古株編集者達が
「コンピテンシー」、「BPR」、「エンパワーメント」などと受売り知識を披
露しては、編集長から冷笑される場面が何度となく発生した。
キャリア安全性が低い企業群は概して過剰にホワイトな企業群で、新卒入社
者は優秀な者から離職していくと、自称人事系コンサルタントのネット記事に
あった。そういうこともあるのだろう。ものの本には、今時の学生達は、学生
時代に「スタートアップ企業で2年間働いた」とか「インターシップの中で新
製品のローンチ・プロジェクトに参画した」などの経験があり、それを無視し
た素人扱いでキャリア安全性が毀損されるらしい。
先端物理学的な時空間の違いでもあるのか。私の眼前に現れる新卒学生はバ
イト経験すら覚束ないどころか、自己PRを律儀に唱えることにさえ必死である
ように見える。
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
MSIグループ 市川正人
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次号予告:
第643話 『視界不良』 (11月10日発行)
就活中の学生達にとって会社の実際を知る手段はインターンシップであると
いわれるようになって時間が経ちました。その実態を考えてみます。
(完)