622 不可聴域

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経営コラム SOLID AS FAITH 第622号
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 ご愛読ありがとうございます。第622話をお届けします。

 本年もとうとう最後の発行となり、例年通りクリスマス当日にお届けする号
です。あと数日で本年も終わります。所謂「オールドメディア」の世界では、
判で押したように一年の終わりに年を振り返ると「激動の一年」などと表現さ
れています。そんな中でも、本年は政治劇に端を発した大きな変化が日本全体
どころか世界を席巻するほどの変化に拡大した真の「激動の一年」でした。現
政権の「責任ある積極財政」の方針は、ジワリと今年から経済を動かし、来年
にはさらに大きなインパクトが見える形になることでしょう。

 人件費の上昇は中小零細企業を恒常的に苦境に追いやる力となっています。
しかし、不法合法に関わらず外国人労働者を引き入れつつ、日本人には残業を
規制して副業を奨める異常な労働政策にも見直しの手が及んでいます。総じて
プラス材料は微増しているように見えます。
 
 企業は外的要因によって潰れないという考え方があります。通称武漢ウイル
ス禍があろうとも、世界的大恐慌が来ようと、経営体質が優れた企業は生き残
り、そうではない企業は淘汰されます。ならば、企業が消えてなくなるのはそ
うした外的要因によるものではなく、既に内包されていた淘汰のタネが、外的
環境の変化によって芽吹くだけだと考えることが一応できそうです。先述のよ
うな僅かとは言え経営環境が改善するのであれば、今生き残った会社には、多
少なりとも望ましい経営環境が待っていることになります。
 
 まだまだ当分世界的混乱は続く中で、経営環境だけの視点で見ると、国内の
中小零細企業群は総じて恵まれています。「ピンチはチャンス」などと自身を
鼓舞する経営者を目にすることがありますが、その多くのケースにおいて、少
なくとも世界規模で俯瞰するなら、なかなか「ピンチ」などお目にかかれない
ように思えます。ただチャンスが訪れていると考えた方が良いでしょう。面白
くなってきました。

 今年最後の号は『不可聴域』と題して、今や若者の話とは全く言えなくなっ
たコミュ障について考えてみました。ヒット作家のヒット映画の話も登場しま
す。年の瀬の慌ただしさから暫し離れて是非一緒にお楽しみください。ご意見
・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は
5営業日!!

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その622:不可聴域

「まあ展示会の展示棚だからもっと簡単で良いのかもしれないけど、好い機会
だから、店舗什器のショールームとかを見て、そうした什器の勉強をしてきて。
店員さんも当然業界の人だから滅茶苦茶に詳しいし」と私はクライアント企業
の若手幹部の女性に告げた。

 彼女は展示会出展のプロジェクトを社内で回している。社長からの評価も高
いので、色々な接点の機会を与えるのは刺激になるだろうと社長からも言われ
ている。私が薦めたのは店舗什器の専門ショールーム。翌週彼女にショールー
ム見学の感想を聞くと、「『こんなところもあるのか』とショールームの存在
自体が勉強になった」と語っていた。しかし「店員さんに色々聞いてみた?」
と尋ねると、「特に話すことも見つからなかったので」と何も聞くことなく店
内を見て回って帰ってきたらしい。
 
 週刊誌を捲ると退職代行の記事がまた載っていた。本当に嫌ならそのまま
「飛んでしまう」こともできそうなものだが、律儀に何かは告げなくては辞め
られないらしい。それでも、話をするのは嫌という微妙なジレンマの結果、退
職代行の出番という話。ネットで労働者の権利は広く知られるようになり、今
時何か揉めたら労基やユニオンなど駆け込むところは山程ある。下手にネゴに
なったら「非弁行為」で退職代行は出番がなくなるので、私には面倒な選択肢
に見えるが、世の中的にはそうでもないらしい。
 
 人に話すこと、というよりも、人に話しかけることに心理的な障害を感じる
人が増えていると感じる。電話で簡単に済む話をわざわざメールやLINEで打っ
て、返信を待つ時間をかけようとする若手社員や、社内で会えば言えるのに、
わざわざチャットワークに書き込んで相手が見ていないようだとのんびり推測
している派遣社員を私は知っている。
 
 新垣結衣と夏帆のセット見たさに『違国日記』を劇場に観に行った。非常に
丁寧に作られた上質な作品な上に、無粋で変人めいたガッキー単体でも愉しめ
た。原作者のヤマシタトモコを私は全く知らなかったが、劇場でもそうであろ
う人々が多々見受けられたが、コアなファンが厚く存在するらしい。調べてみ
ると「違国日記完結記念」として『ユリイカ』まで出ていて驚いた。その解説
文章は目を引く。
「ヤマシタトモコが描く人と人は、分かり合えず、傷つき合い、打ちのめされ
ることを繰り返す。それでもと垣根を超えようとして他者へと手を伸ばす愚直
な登場人物…」。

 分かり合えず、探り合い、傷つけ合い、打ちのめされ合う人々。人に話しか
けることに障害を感じるなら、そうなるのは当然だろう。劇中の登場人物の台
詞には「秘密。」、「聞くな。」、「この話は終わり。」が頻繁に登場するこ
とにも得心できる。

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次号予告:
 第623話 『自己都合』 (1月10日発行)
 多くの中小零細企業において生き残り策が検討されています。その策の多く
は顧客不在のままに決められることが多いように思われます。新年最初の号で、
それらのありかたについて考えてみたいと思います。

(完)