5月23日の封切から4日後の水曜日の晩に新宿東南口大塚家具付近のミニシアターの午後8時半の回を観て来ました。午後8時半の回と言っても、他に回がある訳ではありません。1日1回の上映です。その上、封切後僅か1週間で上映終了です。1日1回の上映は最初からと思われますので、たった7回上映されるだけの状況です。
上映館も恐ろしく少なく全国でたった2館です。1館はここ新宿のミニシアターで、もう1館は大阪の十三のあまり(映画.comの)上映館案内でも見かけない立地の映画館です。大阪でも1日1回の上映のようですから、日本全国でたった14回しか上映されない映画ということになります。なぜこんな配給状況なのかとか、これで元が取れるのかとか、そういったことは、上映終了後のトークショーでも全く語られませんでした。
シアターに入ると、私以外に15人ほど観客がいました。非常に限られた上映回数の映画なので、念のためと考え、上映開始の3時間ほど前にネットでチケットを購入しておきましたが、その時点でも埋まりの悪かった席の状況は、実際に行ってみても大きく改善はしていませんでした。ネットで見るとこのシアターには84席ありますから20%ほどの稼働率ということになります。
ざっと見渡して、全員単独客です。女性は多分4、5人しかおらず、少数派です。そのうち1人が目立って若い清楚風の服装にメガネの女子大生のように見えました。彼女以外は女性は中高年だったと思います。男性の方は30代ぐらいが1、2人いましたが、他全部、私と同じ程度か、私よりも上のような年齢層に偏っていたように思えます。
私がこの作品を観ようと決心したのは、偏に主演が山崎真実だからです。彼女が主役の作品はあまりありません。私は山崎真実の主演どころか出演作でもまあまま見ようと思っています。最近劇場で観た中では、2024年の『コウイン 光陰』に彼女が出演しています。記事には私がレアな山崎真実の出演作をどの程度観てきたかがまとめられています。
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この作品をネット上の映画サイトで見るべき作品群の洗い出しをしていた際に知りました。チラシがある訳でもなく、トレーラーを観た訳でもなく、プロモーションを全く見聞きしない中で鑑賞の優先順位を高くして鑑賞作品リストに加えました。理由は偏に山崎真実です。
私は山崎真実が(少なくとも外見上)かなり好きです。私が劇場で観た映画作品の中で彼女の大活躍作品である『電人ザボーガー』の感想では以下のように書いています。
「この映画を見に行くことにした最大の動機は、タヌキ顔の山崎真実です。どうも、映画の出演作が少なく、出ても、あまり良い役が見当たりません。(好きなタヌキ顔系でアイドル系女優(?)では、他にサトエリや三津谷葉子、川村ゆきえなどがいますが、ほぼ同評価です。)『ペルソナ』、『非女子図鑑』と見て、食傷気味です。私の知る限り、テレビシリーズ『ボウケンジャー』の「風のシズカ」役が最高です。通常、戦隊モノには女性隊員の七変化風の展開が見られるエピソードが入っているものですが、山崎真実は悪役幹部であるにもかかわらず、そのようなエピソードがあり、チャイナドレスやらセーラー服、看護師服までころころ衣装を替えます。その次と考えても、OVの『超忍者隊イナズマ!! SPARK』などで、やはり特撮モノが似合います。カルト的人気があると聞く『参議院議員候補マミ』を見てみるべきか検討中ではあります。」
その後、これまた山崎真実を観たくて『西成ゴローの四億円』シリーズ2作をDVDで観ました。このシリーズで彼女は、主人公西成ゴローの元妻の役で、西成ゴローが殺人罪に問われたために大学の教職を捨てざるを得なくなり、娘の重病の治療費のためにSM系風俗嬢になっているという役です。相応に役者然としていて、物語の中でもそれなりにカギとなっている配役で、山崎真実一点に関して言えば見る価値がある2作品でした。
ウィキに拠ると「2024年4月15日発売予定のラスト写真集『カメリア』を以って、20年にわたるグラビアアイドルとしての活動に終止符を打つ予定」とのことで、既に発売されているはずですので、これもゲットしなくてはなりません。
そういったことから山崎真実観たさにこの作品を逃すことなく観に行こうと決めましたが、全く中身が分からないのでは話にならないだろうと、ネット上の映画紹介を取り敢えず読んでみて、この作品は要人警護専門の警備会社の社員たちの物語で『第二警備隊』という作品の続編であることを知りました。この作品が封切になる遥か以前、この作品を鑑賞リストに加えた段階でこの事実に基づき、早速『第二警備隊』のDVDをレンタルして観てみました。
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その後、2012年公開の彼女の主演作『さまよう獣』もDVDで観ました。東京からバスで来て、当て所なくふらりとその山村で降りて、村の老婆の好意に甘えてそのままその村に居つく謎の女の役です。台詞が極端に少ない役で、村の男達を翻弄し、最後の最後で老婆の面倒を看る遠縁の男性と溜めに溜めた上でのやや濃厚な濡れ場が展開しますが、それまでは話さないが故にいつにもまして彼女の言動を凝視せざるを得ない展開になった作品でした。台詞が少ない分、他の表現が求められるので、なかなか「謎の女」然とするのが難しかったように見えました。しかし、レアな主演作だけの価値はありました。
さらに、数本あるDVDのうち、その一部をレンタルで見つけた『参議院議員候補マミ』も観ました。後半から宇宙人話が中心になって、コントにもなり切らないような内容でしたが、ドタバタ騒ぐ天然キャラ的な山崎真実は、単に主演であるというレア作品であるのみならず、より希少価値が高いように見えました。さらに、その後、テレビ版の『ガリレオ』シリーズをDVDで観た際に、ウィキをチェックして、その中に山崎真実の名前を見つけて驚いてチェックして見たら、エピソードによってはワラワラ登場する婦人警官の中の一人でした。たくさんワラワラ居る中の一人というケースもあれば、主人公達が歩く署内の廊下で擦れ違う役だったり、数回登場しているのを見つけました。
そして、最近は今年1月に彼女が出演している『愛のごとく』が封切られましたが、余りに上映期間が短く、劇場鑑賞もできないままに終わりました。その頃に観た『ヒューマンエラー』の感想記事に言及されています。
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この作品を観ようと思い立った最大の理由は、観たい映画作品の夏枯れ状態です。(実際には冬か早春といった季節感ですが、言葉上「夏枯れ」と呼んでいるだけです。)単に観たい映画が少ないだけではなく、主要な大作がない中で、細かな映画作品は簡単に上映が打ち切られたり、元々1週間の上映期間を設定されていたりなど、非常に鑑賞が困難な状態なのです。例えば1月23日封切の『愛のごとく』は、私の好みの顔をしている山崎真実が珍しく映画出演している作品なので、マストと思っていましたが、映画サイトになぜか上映館が表示されない期間があり、その後、「2月13日より吉祥寺アップリンクにて上映」と出たので、それから1週間後に観ようかと上映スケジュールを調べたら、その日が最後の上映日で時間的に間に合わず、それ以降上映は打ち切られたままでした。山崎真実の出演作ながら、あとはDVD発売を願うばかりとなりました。
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劇中で観てみると、「風のシズカ」ほどの活き活き感がないものの、主演作の中では彼女の最高傑作のように思えました。作品全体は映画.comの以下の説明文にも明確に書かれていませんが、長く上演され続けている演劇を基にした作品です。
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人気漫画家のマンションの一室で繰り広げられる人間模様を、ワンシチュエーションで描いたドラマ。
売れっ子漫画家である妻・由美子に頼りながら、3年間仕事もせずに生きてきた坂下潤。ある日、潤は妻と編集者、そして由美子が衝動的に殺してしまった潤の不倫相手であるひとみの死体が、自宅のリビングに並ぶ光景に直面する。この殺人事件を隠蔽したい編集者、状況を知らずに訪ねてくる由美子のアシスタント、さらにひとみを探している謎の男まで巻き込み、さまざまな思惑がマンションの一室で交錯していく。
主人公の由美子を「愛のごとく」の山崎真実、夫の潤を「アギト 超能力戦争」の柴田明良がそれぞれ演じ、八神蓮、駒木根隆介、重松隆志が脇を固める。監督は、AV撮影現場のメイクルームで繰り広げられる騒動をワンシチュエーションで描いた「メイクルーム」でゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリを受賞した森川圭。原作・脚本は、「劇団ブラジル」を主宰し、「RAILWAYS」「事故物件 恐い間取り」の脚本を手がけたブラジリィー・アン・山田。
2025年製作/87分/日本
配給:ハンドメイドビジョン
劇場公開日:2026年5月23日
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この文中に登場する「劇団ブラジル」がこの『軋み』を上演していた劇団で、本作の脚本も手掛けているというブラジリィー・アン・山田が元々舞台作品としてこの物語を作ったということでした。『軋み』(舞台作品の方のタイトルにはローマ字表記のサブタイトルがないようです。)は2008年に初公演で、好評ゆえに映画化の話がその後何度となく持ち込まれたと、パンフでブラジリィー・アン・山田が語っています。そして、クラウドファンディングに拠る資金集めなどで漸く制作されたのが4年前で、通称武漢ウイルス禍のど真ん中というような状況だったようです。それからパンフにも理由が明示されていませんが、かなりの時間を経て上映に漕ぎつけたということのようです。
制作が完了しても、配給が決まらないということは、インディーズ作品の場合、よくあることのようですので、この作品もそうであったのだろうと思われます。その苦戦の結果が、この記事の冒頭に書いたような日本全国でたった14回の上映という結果だったのかもしれません。
今までに観た演劇をベースにした作品の中で、例えば『水深ゼロメートルから』や『愛のゆくえ』などは、映画全編の8割以上が1シチュエーションで、それ以外の映像が非常に限られています。前者では学校のプールが舞台ですし、後者ではモノクロで描き出されるアパートの狭い一室です。それでも、前者では学校の教室、周囲の道や隣接グラウンドなどが一部登場しますし、後者でも周辺の街並みなどが一部登場します。舞台装置が固定された舞台作品のイメージが踏襲されているように感じられ、「ああ、この場面は舞台なら、この登場人物だけにスポットが落ちる所なんだろうな」などと(短い期間でしたが演劇部だった私には一応)想像することができます。
この作品は「8割以上が1シチュエーション」などと言った生温い状況ではなく、完全1シチュエーションで、おまけに1シーン1カットが殆どという、固定的な映像を繋ぎ合わせて、延々と1軒のうちの中を見せられる作品です。1件のうちの中も、リビングとダイニングキッチンなどと玄関に至る廊下の一部だけで、マンガ制作の作業場や山崎真実演じる主人公の自室やその夫の部屋などは(多分二階にあるということではないかと思われますが)全く描かれないのです。演劇的です。それでも演劇であればこのような空間として繋がったリビングやキッチンは舞台上にあって、観客は一方向から見るだけです。しかし、この作品はカメラの配置によって1シチュエーションであるにもかかわらず、飽きさせない視点移動が図られています。
先に挙げた映画.comの文章でもミステリー感が漂っていますし、ネット上のサムネイル画像なども、山崎真実が漫画家として何かの賞を受けた際の(アカデミー賞のオスカーよりも一回り大きく重そうな)ブロンズ像を振り上げて殴り掛かってくる画像などが出回っていますし、映画のメイン画像やパンフの表紙は小さく映り込んだ山崎真実の立ち姿の横からの画像に血の滴りのようなどす黒く赤い粘液のようなものが絡み付くように覆っているデザインでかなりおどろおどろしく見えます。それ以前に『軋み』というタイトルそのものが、非常に不穏なイメージです。
実際に劇中で(後に、本編と思われていた物語は劇中劇であったことがチラリと判明しますが)撲殺のシーンは辛うじてカットされていますし、風呂場で死体を細断して溶かしてトイレに流すプロセスも、「解体屋」の男の血塗れの後ろ姿が描かれるだけで、スプラッタ感はほぼゼロです。全編がこんな感じで、おどろおどろしさやグロさは極限まで抑制されている感じです。
それに対して、この作品の実際のテイストを見ると、吉本新喜劇的なスラップスティックというほどではないものの、少なくとも、藤山寛美率いる松竹新喜劇レベルのドタバタ劇そのものです。犯罪関係のテーマで、狙いどころだけで見たら、狂言誘拐劇に振り回される男達を描いた『スオミの話をしよう』などは同類のテイストです。しかし、有名俳優を多数配置し、主演は長澤まさみで、豪邸内のほぼ1シチュエーションで、延々と狂言誘拐劇の人々の醜態をドタバタと描いて見せて、終わりにはおまけに往年のテレビショーのようなレビューで歌い踊る長澤まさみのシーンまで用意されていますが、『スオミの話…』はどうも空回り感全開です。
それに比べて、この作品は登場人物の掘り込みが深く、相互に深く複雑に関わり合い、ドタバタと泣いたり叫んだり怒鳴ったり、さらに掴み合いになったり罵りあいになっても、相応に理由ある反応が物語の流れに沿って発生しているように見えるので、ギリギリから話回り感を回避しています。舞台演出のように妙に登場人物の言動がまさに「芝居じみて」いて不自然な所もありますが、辛うじて臭みを出さない程度に踏み止まったように見えるのです。
映画のレビューでも激賞する声は多く、短い尺の中のスピード感ある展開で、絞り込まれた登場人物が、元アシスタントや殺されたアシスタントのストーカー男、解体屋、ヘルプで新たに来たアシスタント、メール便配達員などなど、次々と現れる脇役キャラが持ち込む状況変化に右往左往しながら対応する様子が、よそ見のできない展開の面白さを生み出しています。似ている嫌みのないこうしたスピード展開の面白さを持つ、元々舞台作品の映画化作品を上げるなら、やはり『サマータイムマシン・ブルース』が一番に挙げられ、大人の男女が繰り広げるすったもんだという観点では『愛を語れば変態ですか』が近いかもしれません。どちらも私の好きな邦画50に食い込んでいる作品です。それら二作の面白さにはイマイチ到達していませんが、あっという間の87分でした。
先述の通り、終了後に原作者(+脚本)のブラジリィー・アン・山田と監督と音楽担当者の3人によるトークショーが唐突に開始されました。このうちブラジリィー・アン・山田は客席で観客として振る舞っていたようですが、見つかって登壇を促されたというようなことを言っていました。トークショーの中で、映画に比べて舞台の方はかなり長尺で2時間越えと説明されていました。舞台の方を特に観たいとも思っていませんが、少なくとも「タイム・トラベル」に関わるパラドクスがとんでもなく入り組んでしまう『サマータイムマシン・ブルース』の舞台版に比べたら、理解がしやすいかもしれません。
山崎真実以外の主要キャストは舞台経験も多く、妙に表情も豊かで声もハキハキトした大声で分かり易く、所作もオーバーリアクションが多いという、芝居演技そのままな感じがちょっとわざとらしくは感じましたが、そうした濃い人々の中で、負けじと声を張り上げ、落ち込んだり笑ったり激怒したり脅したり土下座したりと、目まぐるしく変わっていく山崎真実の、それも既にモデル時代のキャピキャピ感が全くなくなって安定感ある姿を観ることができたのは収穫だったと思います。
私は舞台から映画化された作品群で結構好きなものがあります。一方でハズレもそれなりにはあり、その中でも結構ハズレ感が激しかった『水深ゼロメートル』の記事で以下のように私は書いています。
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観てみて、あまり面白さが分からない作品でした。面白くない訳ではないのですが、これ見よがしな自己満足的空気を強く感じる作品なのです。元々高校演劇の作品であったものが映画化された作品ですが、演劇から映画化した作品の悪い展開のグループに入るように感じます。
私は元々演劇作品だった映画は、相応に高い確率で面白くなると思っています。比較的最近観た『クオリア』もそうですし、本谷有希子の演劇脚本の映画化作品である『乱暴と待機』や『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』も非常に面白いと感じています。本谷有希子作品以外でも『サマータイムマシン・ブルース』は大傑作ですし、『愛を語れば変態ですか』は確実に私の邦画ベスト100ぐらいに食い込む作品です。他にも『星屑の町』などの例もあります。
一方で不発に終わった作品群も多少あります。変に現実のエピソードを脚色して展開が破綻しかかった『愛のゆくえ(仮)』や、「愛あるセックス」だのを巡る人間関係について芝居じみて棒立ちで叫びあう『はるヲうるひと』などがあります。この作品はどちらかというと、後者に近い感じで、先述のように自己満足感全開で、まるで青年の主張の様な青臭く受け売り感満載の主張を、はっきり述べるでもなくうじうじと醸し出し合うJKと、頭の悪そうな女性教師ぐらいが登場する物語です。(その他にプールの中に入ってくることのない直向きなJKが1人存在しますが、演劇バージョンには存在しなかったキャラのようで、本作でも限られた尺しか登場しません。)
[以上引用↑]
そうしたオリジナルが舞台作品の映画群の中で、この作品は『サマータイムマシン・ブルース』や『愛を語れば変態ですか』には及ばないものの、私の中では本谷有希子作品群に比肩するぐらいの面白さでした。想定通り、最後は夢オチならぬ劇中劇オチで、描かれた殺人劇は、山崎真実演じる有名漫画家が原稿にまとめた物語という位置付けだったと最後で分かるようになっていましたが、それも愛嬌に思えるぐらい好感が持てました。DVDは買いです。
追記:
シアターを出た所にいた監督に、鑑賞前から買ってあったパンフレットにサインをしてもらいました。
追記2:
上映後のロビーの様子を見ていると、多くの観客がトークショー明けの三人に親しげに話しかけており、「身内の上映会」感が濃厚でした。オリジナルの舞台の方の劇団ブラジル関係者なのかもしれませんし、クラウドファンディングの投資者であるのかもしれません。老若男女という感じで広く観客の過半数ぐらいが身内の盛り上がりというような異様な空間でした。