630 木塊中の仏 =軋む未来=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第630号
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 ご愛読ありがとうございます。第630話をお届けします。

 ゴールデンウィークが迫っています。業種によっては書入れ時、他の業種
では年間最長規模の休業期間、そして、企業組織によっては4月入社者が最
も高い確率で退職を決める時期です。心して向かいましょう。

 前号のご挨拶でも戦争関係の事情による中小零細企業の経営環境変化につ
いて少々言及しました。経営環境の変化は次々と起きます。ジワリと徐々に
変化していくケースもあれば、或る日突然怒涛のように覆い被さってくるこ
ともあります。

 先日ダイヤモンド・オンラインで鈴木貴博による『ドンキの「オリンピッ
ク買収」に震えるのはイオンじゃなくてセブン…コンビニから収益の柱を奪
う「驚異の戦略」とは?』という長いタイトルの短い記事を読みました。ボ
ーッとしている日常を送っていてドン・キホーテのオリンピック買収も小さ
な驚きでしたが、ドン・キホーテの「ロビンフッド」という新業態の話も初
耳でした。
 
 ドン・キホーテは「驚安の殿堂」ですが、ロビンフッドは「驚楽の殿堂」
で、記事によれば食品スーパー部分がメインの新業態のようです。深夜まで
営業するスタイルでドン・キホーテの買い物の楽しさをベースに夜のご褒美
スイーツ市場までごっそりと持って行くという著者の主張には一応頷かされ
るものがあります。東京で行く先々で時々見かけるオリンピックが(ドン・
キホーテの発表によれば全店一気ということではないようですが)ロビンフ
ッドに変われば、周辺の商店街のパパママショップで大打撃を受ける所はそ
れなりに多いのではないかと思えます。店舗にはわざわざ行く理由が必要に
なった時代だからです。
 
 数年前に近隣にできたトライアルを観に行って、スマートレジカートを押
して買い物をする来店客の様子と数の多さに見入ってしまったことがありま
すが、私の知っている幾つかのオリンピックが遠くない将来にロビンフッド
になったら、そのような新認識の体験が再びできるのではないかと思えてい
ます。そして、こうした店舗の付近の零細店の案件を引き受けたなら、どん
な有効策を案出できるかという難題をシミュレーションして頭の体操にして
みたりしています。

 今号から全2回のシリーズ『軋む未来』をお届けします。流行の生成AIは
驚嘆すべき能力を発揮するのは周知の如くですが、(フィジカルAIなどの具
体的な適用例の登場までは)一般生活の中で個人が生成AIにさせるべきタス
クはあまりないように思えてなりません。ネットでは生成AIを使えなければ
石器時代の原始人的な煽りも多々見ますが、どうも現実的ではないケースも
散見されます。便利に使える所はどんどん使っていくことに全く異論はあり
ませんが、見落とされ易い利用上や運用上の条件や問題もきちんと理解され
るべきだと考えています。

 全2回のシリーズの第1回は『木塊中の仏』と題して、生成AIによる「アイ
ディアの壁打ち」の話です。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴し
たご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!

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その630:木塊中の仏 シリーズ 軋む未来(1)

「あ~。壁打ちか。スカッシュみたいな感じかな。あ、あれは相手がいるか」。
 私はAIの効能を説明してくれた若い知り合いに応じて言った。AIが発達
し有り触れるぐらいに社会に浸透し、日常のビジネス作業にも役立つように
なったと、猫も杓子も喧伝している。展示会でデモを見ても、ネットの動画
で見ても、確かに凄い。たった数年前には夢としか言えなかったようなこと
がどんどん実現している。それで、取り敢えず、自分にはどんな使い道があ
るだろうかと彼に尋ねると、アイディアの壁打ちを真っ先に挙げた。
 
 私が巨大電話会社の二年間の幹部研修の中のORの講義でリニア・プログ
ラミングの発想を知ったのはもう40年以上も昔。広い領域に線分を一つ。そ
れであちらとこちらに領域が分かれる。2本目を足し、3本目を足すと、囲ま
れた領域は明確に浮かび上がる。誰でも図を見れば分かる当然の事実。しか
し、この線分が条件で、その線分に囲まれた領域にしか、条件を満たす自分
が取り得る選択肢はないと説明された際の衝撃は大きかった。
 
 中小零細企業の経営資源は一般に乏しく、できることは限られている。自
社が有利な環境を選んで居座り、自社の数少なく顕著でもない淡い強みを活
かして、何とか勝つしかない。リニア・プログラミングで仮にこれを図式化
できたなら、この時点で既に線分は10本近くになっていて、全部の条件を満
たす範囲は猫の額ほども残っていないだろう。
 
 私はブレストを自分が企画運営するクライアント社内の社員勉強会で殆ど
行なったことがない。読解力が総じて低い社員のアイディアは陳腐で無責任
であることが多い。一方で実現すべき戦術が存在し得る領域は極端に狭く、
社員のアイディアや閃きと思い込まれているものは、殆ど瞬時に意義を否定
される運命にある。時間をかけて無い知恵を披露させられ、全否定されるだ
け。これでは単に社員の動機づけを損なうだけに終わってしまう。
 
 AIのアイディア壁打ちの機能を試してみたら、よくもこんなにという程に
瞬時に数々のアイディアをズラリと提示してくれる。モニタの横の彼が、
「凄いですよね」と満足げにリストを見つめる。確かに凄い。相手が人間で
はないから機嫌を取る必要もない。陳腐で無責任なアイディアを遠慮なく否
定できる。そして一方で、リストを一望して、ここに稀少な経営資源を集中
させるリスクに見合う選択肢が含まれているのだろうかと、つい訝る。
 
 或る日クライアントの社長にこの壁打ち相手の機能の話をし、「フォード
は馬車の機能向上を事業方針に採用しなかったじゃないですか。あんな結論
にAIと相談して至れるのかなとか思うんです」と告げた。「それ以前に、で
きないことばかりリスト化されるのを一人でパソコンを睨んで見てたら、鬱
になってしまうわ」と社長は大声で笑った。

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次号予告:
 第631話 『基礎成分』 シリーズ『軋む未来』 (5月10日発行)
 シリーズ『軋む未来』の第2回目は「文章作成」について考えてみます。
安易に語られ過ぎるAIによる文章作成の現状を少々考えてみました。

(完)