043 回顧の対象

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経営コラム SOLID AS FAITH 第43号
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ご愛読ありがとうございます。第43号をお届けします。

今年も暑い日が続くようになりました。暑いのが(精神的には)苦にならな
い私は絶好調ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。前書きに混ぜてし
まって恐縮ですが、暑中お見舞い、心より申し上げます。

今回の号は「記憶に残るような企業の良さ」について考えてみました。お世
話になった販売開発研究所の部奈(べな)先生のお話を伺って考えたことをま
とめてみたものです。お楽しみ戴ければ幸いです。

みなさまのお気に入りの号の募集は、まだまだ行っております。本文後の案
内をご覧の上、どしどしご一報下さい。よろしくお願いします。お気に入りの
号のチェックには、本文後に紹介しております「まぐまぐ」のバックナンバー
図書館、「りぶりぶ」をお使い戴くと便利です。
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その43:回顧の対象

私が2年半学んだ大学のある町はオレゴンの片田舎で、卒業したら、死ぬま
でにそこを何度も訪れられないだろうと考えた。帰国前には、友人との時間を
多くとった。地図を書いて渡したりもした。別れのときが迫るに連れて、彼ら
は一様に私に言った。

“I will miss you.”
直訳するなら、「私はあなたを懐かしむだろう」である。「私もです」と答
えるのが教科書的回答。私も2、3度、そう答えて、ふと考えた。本当に私は
この人たちを懐かしむだろうか。「私が懐かしむのは何だろうか」と。

子供の頃の病弱な私を知る人は、大手企業を辞めてまで私費留学した私が、
かつての「病気の問屋」と同一人物とは思えないらしい。大手企業時代の私を
知る人間も、「変わったなあ」と言う。久しぶりに会って「相変わらず、やっ
てるねぇ」などと言うのはここ数年の知り合いだけだ。

一昨年、卒業以来7年ぶりに訪れた大学の町はそれなりに様変わりしていた。
行き付けのコンビニもスーパーも姿を消していた。名前と顔が一致している教
授は数人になった。私の卒業後、成績不良を苦に学校を去った友人の話も聞い
た。私は何を懐かしむべきか。そして、私のことを懐かしむだろうと言った
人々は、再会した私のどこを懐かしんだろう。懐かしむべき対象は私でも友人
でもない。私と友人がそのように生きられた環境のあり方そのものではなかっ
たか。

私が敬愛するある部奈(べな)壮一先生は、中小企業の後継経営者向けの研
修で、「社員が自分の子供に入社を勧められるような会社を作れ」と語る。そん
な会社があったら素晴らしいことと思う。

世の中は変わる。環境適応業たる企業も変わらねばならない。社員と会社の
関係も変わる。「社員が感じる自社の魅力」も個々に違って、それが時々刻々
と変化する。

自社への入社を子供に勧められる社員とその会社は文句なく素晴らしい。願
わくば、父が回顧するその良さが、過去のある一瞬に感じられたものではなく、
常に「会社の魅力」が溢れでる「源泉」そのものであって欲しい。
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変な表現かもしれませんが、自分のことをよく分かっている人が減ってきた
ような気がします。人と企業の「自己を知る努力」について考えてみます。