041 誤ったスピード

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経営コラム SOLID AS FAITH 第41号
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ご愛読ありがとうございます。第41号をお届けします。

交通事故のニュースで「スピードを誤って‥」と言う表現が使われます。流
行のスピードの経営をテレビや書籍ではなく、眼前の経営者から聞くと、何や
ら不思議な気持ちになることがあります。そのおかしな印象を反芻してみて、
それは経営の「スピードを誤って」いるからではないかと気づき、まとめたの
が今回の号です。お付き合い下さい。

みなさまのお気に入りの号の募集は、まだまだ行っております。本文後の案
内をご覧の上、どしどしご一報下さい。よろしくお願いします。
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その41:誤ったスピード

「ほらぁ、青木!出てきてやったぞ!俺を殴ってみろ!」
8年ほど前の或る夏の日、私はこう叫びながら、「青木」と言う男を追い掛
け回していた。「青木」は、その日私の家を訪れた新聞勧誘員である。

私は若く見える。Tシャツに短パンで不精ひげの私を、「青木」は浪人生と
でも思ったらしい。最初は低姿勢で私に洗剤などを持たせて「ねぇ、取った方
がいいよぉ」などと言っていた。私が「読まないから、いいです」と断ると、
突如豹変し、「年上の人間が、汗かいて働いているのに、おまえは何様だ!」
などと私を恫喝し、「家の中に居るから許してやるが、外に出てきたら、ぼこ
ぼこにしてやる!」などと叫んで去っていった。

釈然としなかった私は外に出て、次の「商談」を始めている「青木」に向か
って冒頭のように叫び、その後、住宅街を逃げ惑う彼を4時間に渡り追跡し、
謝罪を勝ち取った。あれから、何度か転居したが、私が会った新聞勧誘員の態
度は大同小異である。

何十年にも渡り談合を続ける企業群。何度クレームを受けようとも、10分も
客を待たせて、尚「こちらでお召し上がりですか」から会話を始めようとする
ファーストフード店の店員。何十人に指摘されようと、セール品の値段がレジ
に反映されないスーパー。税金を恵まれ、支払い利息をゼロに近づけてまで、
高給を維持する金融機関。身の周りを見渡すと、十年一日の如く悪癖は変わら
ず存在する。人はなぜ己のおかしさに気付けないのか。

事業の開発やら撤退・収拾の速さが「スピードの経営」などと言われ出して
数年経っただろうか。顧客にとって企業総体の事業展開のスピードにどれほど
の意味があるだろう。人は過ちを繰り返す。せめて、気付かされたときだけで
も、顧客に害成す過ちを糺すことにこそスピードを持ってあたりたい。
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次号予告:安易な帰結(7月10日発行)
テレビで大手企業経営者のコメントなどを聞いていると、「経済の読み」や
「市場の読み」のあまりの甘さに驚くことがあります。不遜なテーマですが、
そのような事柄をあげつらってみようと思います。