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3月最終日の木曜日の夜。阿佐ヶ谷の商店街の中にあるラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショーで観て来ました。ラピュタ阿佐ヶ谷は私が20歳の時に上京した頃から既に存在していて、私は下高井戸の映画館同様に、住宅街の中にポツンと“文化性”を背負って存在する映画館に当時から強い好感を抱いていました。ただ、その後の私は、サラリーマン時代でも、余暇時間にはそれなりにやることがあり、なかなかラピュタに足を向けられないままに数十年が過ぎました。
独立後の札幌から頻繁に上京する生活を始めた後に、一年ほど阿佐ヶ谷駅南口直ぐの民宿(/下宿?)を定宿にしていたことがあります。その頃も、昼間の時間はクライアント先に行っていて、新宿から阿佐ヶ谷の距離でさえ不便に感じることが多い状態で、なかなか営業時間中のラピュタに行くことはできないままでした。民宿から地下鉄丸ノ内線を利用することもあり、パール商店街など駅の南側の商店街には愛着が湧くほどになりましたが、北側に行く用事は意外にできませんでした。
今でも、中央線沿線のサブカル的文化で言うと、中野や高円寺よりも、私にとっては、仙川からもバスであっさり行きやすく、京王線から井の頭線で入り込みやすかった吉祥寺や、短い月日の限られた時間とは言え“住んだ”ことのある阿佐ヶ谷が、一番に連想される街です。
新宿のミニシアターで映画を観た際に、『残酷!妖艶! 大江戸エロス絵巻』とでかでかと書かれ、商家の若旦那風の男と全裸の女性が仲睦まじそうにしているシンプルなデザインながら、異様なチラシに目が留まりました。手に取ってみると、若旦那と女性の目線の先には、女性の手のひらに載った小判があり、さらによく見ると、その女性はひし美ゆり子でした。ひし美ゆり子が全裸で出演する映画の存在を私は知りませんでした。正確に言うと、ウィキや後述の自伝を読んで「知ったことはある」のですが、その存在が映画(・DVD)鑑賞の選択肢に上がってくることは一度もありませんでした。
このチラシを持ち帰り、読み込んでみて、ラピュタ阿佐ヶ谷で60年代後半から70年代前半にかけて、東映が連発したエロス時代劇の異色作品の数々をシリーズとして上映する企画がこの、『残酷!妖艶! 大江戸エロス絵巻』であると分かりました。私は、63年生まれで、小学校低学年の頃に住んでいた家には内風呂がなく、ほぼ毎晩行く銭湯に怪獣映画やSF系のオドロオドロしたポスターが貼られていたのをぼんやり覚えています。そして、そのような映画ポスターと並んで、この手のエロス系映画が子供がいるところでもなんらの社会的批判に曝されることなく、貼り出されていたこともなんとなく覚えています。
DVDどころかビデオもない当時、映画は映画館で観るかテレビの“映画番組”で観るしかありませんでした。ですので、小学校に上がる前後の私には、これらのエロス系時代劇を観る機会は当然なく、それらの作品群に関心を持って個々に記憶することさえありませんでした。
私が敬愛して止まないSF名作『ウルトラセブン』の放映は67から68年で、私は悔しいことにギリギリでリアルタイム世代ではなく、その後、何度もテレビ再放送が繰り返されたのを見て、どんどんファンになりました。そのヒロインで、ひし美ゆり子(当時は菱見百合子)演じる友里アンヌ隊員は、巨大ヒーローと地球防衛組織の構図のSFモノのヒロインの絶対的モデルとなったと言っても過言ではないほどの、強烈に印象に残るキャラクターでした。この強烈な印象の呪縛はその後もひし美ゆり子のキャリアを縛り続け、テレビドラマ化された自伝『セブンセブンセブン わたしの恋人ウルトラセブン』(ドラマタイトル『私が愛したウルトラセブン』)などを生むと同時に、ウルトラマンレオにさえ「運命の再会! ダンとアンヌ」と言うようなタイトルの回があるぐらいです。
私が持っている『万華鏡の女 女優ひし美ゆり子』と言うひし美ゆり子自伝でさえ、アンヌ役に関わるエピソードが前半を彩っています。『万華鏡の女…』にある通り、実際のひし美ゆり子は、その後、雑誌『プレイボーイ』にヌード写真が掲載され、一気にその線の作品に(も)出演する女優と変わっていました。しかし、アンヌの呪縛はあまりに強いが故に、彼女のこちらの方の役歴は、私も含めて、アンヌとしての彼女の影の部分と言う位置付けにされていると思っています。
私も全く見たことのなかったひし美ゆり子のエロス作品がラピュタ阿佐ヶ谷で観られる。これは、行かねばならない十分な動機でした。『残酷!妖艶! 大江戸エロス絵巻』は、あの丹波哲郎が気に入って主演を買って出た(そしてひし美ゆり子も出演している)エログロの奇作『ポルノ時代劇 忘八武士道』、タイトルからして十分内容が想像できる『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』、エロス満載の『徳川セックス禁止令 色情大名』など合計8作の上映が、各作品一週間ずつ行われるシリーズです。
その中で私が選んだのはひし美ゆり子が出演している二本のうちの一本、『好色元禄㊙物語』です。チラシに拠れば「肉体を武器に男を渡り歩く奔放な姉・お夏(ひし美ゆり子)と、死んだ夫のために「男千人斬り」で供養する貞淑な妹・お七(橘)。対照的な二人姉妹の逞しい生き様を描いた痛快娯楽作!ひし美ゆり子がふてぶてしくも可愛い悪女をお色気たっぷりに好演」となっています。
全くその通りの映画でした。たった67分で、セックスシーンばかりですが、相応にきっちりとストーリーが作りこまれていて、ひし美ゆり子のセックスシーンも乳房や太腿丸出しから、ほぼ全裸まで、これでもかと言うほどにスクリーン上に溢れますが、ひし美ゆり子の好演故に、何か明るく健康的です。どれほど強烈な印象を残そうとも、脇役でしかなかったアンヌに比べて、主役になるとひし美ゆり子はこれほどに活き活きしているということが大発見でした。
妹役の橘麻紀と言う女優も、脇役集団の「ピラニア軍団」の紅一点として、東映が当時押していた女優で、当時売れていた女優の一般的美人顔とは一線を画した、今風の可愛らしい顔で、千人斬り供養(後に万人斬り供養)に出てからのパッツンと切り揃えたボブカットが、今の感覚で見てもかなりスタイリッシュです。当然千人斬りは千人とセックスすることですので、こちらも延々セックスシーンが展開します。
ネットで橘麻紀の出演作を見ると、劇場で観た『狂った野獣』にも出ていますし、DVDで持っている『県警対組織暴力』にも出ていました。全く認識できていませんでした。
これだけ短い尺にこれだけセックスシーンが満載なのに、きちんと話の構成ができていて、メリハリもあり、きちんと人々のその後に向かう姿で締め括る展開は、確かに痛快娯楽作と呼べるものと思いました。DVDは入手決定です。今回スケジュールの都合で観に行けなかった『ポルノ時代劇 忘八武士道』も併せてゲットしなくてはなりません。
追記:
ラピュタ阿佐ヶ谷で映画を観終った後に、書籍の売場を見ていたら、『東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム』と言う分厚い本を見つけました。当時の東映の、何かと言えばスケ番やあばずれ達に胸を露出させるシーン満載の各種バイオレンス映画を中心にまとめた集大成の書籍です。この手の映画特集の書籍は、タワーレコードの一角で売っている「切り株映画特集」など色々知っていても買ったことはありませんでした。今回の『好色元禄㊙物語』はバイオレンスが足りないので掲載されていませんが、『ポルノ時代劇 忘八武士道』は載っていました。あまりに現在のヒット映画と異なる灰汁の強い作品群のえづらに見入り、一冊買い求めることとしました。