366 有触れた仕事

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経営コラム SOLID AS FAITH 第366号
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 ご愛読ありがとうございます。第366話をお届けします。

 いつも企画立案からのプロセスに半年程度を費やす当コラムの周年記念特別
号。10月末日の発行を目指し、企画検討に入りました。今年は16周年記念特
別号の発行をしますが、来年は17周年記念特別号と400話発行記念特別号の二
本の記念特別号の発行が控えています。これらの企画も合わせて、徐々に三本
の記念特別号の準備を徐々に進めてみようと考えています。

 今回の号は、『有触れた仕事』と題して、一般的な中小零細企業組織で求め
られる社員の多能化と作業スキルの標準化について考えてみたものです。この
多能化と標準化を進めるに当たって、弊社ではスキル・マップの作成と運用な
どの支援をクライアント企業に行なっています。
 
 原理は簡単なことですが、新入社員個々の育成に現実に取り組んでみると、
一筋縄では解決しない問題が頻出します。「理屈は分かるが、そんな風に上手
く行かない」と、取り組み始めて、1、2年のクライアント企業の幹部や育成担
当者から言われることがあります。今回の号はそのような新入社員育成企業の
逡巡を描いてみました。一緒に育成の現場を想像して戴けましたら幸いです。
本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへの
お返事の目標納期は5営業日!!
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その366:有触れた仕事

「やっぱり、あいつは、伝票の数字をチェックするような、地味だけど間違い
なく終わらせる必要がある仕事に向いていないんですよ。そう考えるしかない
じゃないですか」。
 困惑が滲んだ表情でクライアント企業の部長が私に向かって言う。彼は入社
三年目の若手社員について語っている。この会社の社員は10人に満たない。部
長の言う「伝票の仕事」は、経理の仕事と言うよりも、自分の売上をまとめて
管理する、営業事務的な仕事。人数が少ないこの会社では、税金の申告などの
本格的な決算は税理士に任せ、その手前ぐらいまでの工程は、皆が当り前に行
なう。部署・部門は事実上存在しない。
 
 件の若手社員は大学新卒で初めて採用した社員。就活中の大学生から毛嫌い
されることの多い営業職“でもよい”と元気に面接で語った。空気は読めない
が明るいのが取り得と社長が評して採用に至った。確かに営業にも臆すること
がなく、社内でも好評だったが、仕事に質や俯瞰的な視点が求められ始めた頃
から、ミスが連発し、社内での風評も芳しくなくなってきた。

「たとえば、人間の生活の上で、服が満足に着られないとか、まともに歩けな
いとか、そういう能力が極端に偏っている人間って、お目にかからないですよ
ね。五体満足で普通に育ったら、上手い下手はあっても、皆一応ちゃんとでき
るようになっていますよね。私から見ると、小さい組織の仕事って、誰がやっ
ても、下手なりにきちんとは終えられるというのが最低レベルにあって、皆が
何となく多くの仕事をできるようになって、職掌が重なり合って成立している
ように思えるんですけどねぇ。何でもできるようにさせられる可能性を買って
新卒採用したんでしたよね。アホと呼ばれたり、無能と謗られたりした人が、
後に大化けした事例は、歴史を紐解かなくても、色々思いつくような気がしま
すが…」。
 
「けれども、この状況を耐えて忍んでいたら、その“後の大化け”が起きる前
に利益がなくなってしまいますよ」という部長の意見を再度聞きなおしたが、
「仕事なんか、有触れた誰もができて当たり前のことしかない」と言ったのは、
この会社の社長だ。小さな組織の社員は多能化すべきだと私は思っている。よ
く聞く「全社員営業」だけではない。「全社員電話受付」も「全社員商品発送」
も、何でもありだと私は思っている。

 そんなことを考えながら、次のアポに向かっていると、アルバイト・スタッ
フの給与計算をアウトソースすべきかどうかについて、クライアントの人事の
課長から、メールが来ていることに気がついた。アウトソースのコストは、自
社の人間の作業人件費より、かなり低くなるらしい。そのメールを読み返しな
がら、給与計算は、有触れた仕事ではないのか否か、念のため、尋ねてみたく
なった。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

大型企画三本、同時並行企画活動始動!
当コラムの「16周年記念特別号」、「17周年記念特別号」、
そして、「400話発行記念特別号」。

今年の10月から来年の後半にかけて、
次々と発行することになる三本の記念特別号を
時間をかけて作成していくために、
企画立案を開始致しました。

過去、各種の切り口から中小零細企業の経営や、
弊社の事業ドメインや事業のあり方そのものなどを取り上げ、
通常号とは異なる、お祭り号として発行されてきた、記念特別号。

企画立案段階はあと一ヶ月程度続きます。
「こんな切り口の記念特別号が読んでみたい!」とのご要望がありましたら、
メールにてこっそりご一報ください!
 bizcom@msi-group.org
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【MSIグループの仕入完了報告(抜粋)】

■『限界集落の真実 過疎の村は消えるか?』 山下祐介 著
■『20代女性がセックスしてない…』 杉浦由美子 著
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発行:「企業から人へのコミュニケーションを考える」
 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第367話 『永遠の悦楽』 (5月10日発行) 
 最近観たアニメ作品二作品の中で、夢が叶うことへの懸念や弊害がテーマと
なっていました。夢だのビジョンだのキャリア・ゴールだのが世の中に流布し
て久しいですが、改めて“叶う夢”について考えてみました。

(完)