033 火車の彼岸 =欲望との対峙=

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経営コラム SOLID AS FAITH 第33号
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ご愛読ありがとうございます。第33号をお届けします。

今回と次回の号は、「欲望との対峙」シリーズとして、初の連作で2作をお
届けします。人間と経営の関係を欲望だけで読み解くのは乱暴なことかも知れ
ません。しかし、買い手の立場が強まっていることが実感される近年、単に
「顧客満足」と言った「きれいごと」では括りきれないものを対象に経営を考
えることが、もっとあっても良いのではないかと感じます。

拙い文章ながら、今号では、「経営者と欲望」の話を、次号では「顧客とそ
の欲望」をテーマに書いてみました。いつもの如くの多少ラジカルな表現はご
容赦下さい。お楽しみ頂ければ幸いです。ご感想・ご意見はどしどしお寄せ下
さい。(返事確実です。)
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その33:火車の彼岸 =欲望との対峙(1)=

留学先の大学で心理学を学んだ。その教科書に「東洋との対話」と題された
短いコラムがあった。臆面もなく、「無礼講」だの「旅の恥はかき捨て」など
と言える多くの日本人と違い、遥か天上から自分を見つめる神がいる大抵のア
メリカ人は不自由である。あふれ出る欲求を押さえ込むと、ストレスが溜まる。

コラムではアメリカ人がインドの行者に聞く。「ストレスはどのように管理
すれば良いでしょうか」。行者は言う、「そんなことは考えないことだ。ある
がままに生き、足るを知りなさい」。

何度も何度も繰り返し見た大好きな邦画は「沙耶のいる透視図」である。?
樹沙耶演じる主人公沙耶は人前でものを口にしない。「貪る振る舞いは獣のよ
うで、せめて人に見られたくない」と彼女は言う。セックスも不感症だ。名高
達郎演じる男に犯されそうになっても、無気味な笑い声を立てている。

「人間として生きるために、欲に支配された部分だけ人生から抉り取ること
はできるのか」。映画が提示するこの問いは今でも私を惹きつけて離さない。

ある経営誌を読むと、地域貢献を目指す建築会社の社長が、本心から「売上
はもう伸ばさなくてよい」と発言している。あるコンサルタントのホームペー
ジでは「儲かろうとする店は潰れ、お客に喜んでもらおうとする店は儲かる」
と書かれている。

どうせ事業をするなら、大金を手にしたくない訳はない。売上はすべてを癒
し、カネの切れ目が縁の切れ目である。資金繰りの苦労を知り、自転車操業の
恐怖を知ってこそ経営者と言う。金庫のカネがどんどん減っていくとき、「ギ
ブ・アンド・テイク」の順番は変わらないか。

それでもなお、良き経営者はみな、欲望の呪縛から解き放たれて行く。欲望
と向き合うこと。欲望と付き合うこと。経営者を語るとき、自らの本質を乗り
越える勇気と忍耐が大きく取り上げられることはあまりない。
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次号予告:ある事業ドメイン =欲望との対峙(2)=(3月10日発行)
「欲望との対峙」シリーズ」の第2回目です。次回は「ある事業ドメイン」と
題して、顧客とその欲望を考えて、それにあい対する経営を考えてみます。
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