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経営コラム SOLID AS FAITH 第29号
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ご愛読ありがとうございます。第29号をお届けします。
前回の号はまぐまぐのメンテナンスにぶつかってしまい、発行がかなり遅れ
てしまいました。ご心配・ご迷惑をかけ、すみませんでした。
とうとう、20世紀最後の号となりました。クリスマスには不釣合いな内容か
もしれませんが、お楽しみ頂きたいと思います。前回の年末年始同様に、来年
も通常通り休まず発行致しますので、ご期待下さい。
21世紀も変わらぬご愛読を賜りたく、お願い申し上げます。ご感想・ご意見
はどんどんお寄せ下さい。（返事確実です。）
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その29：効用生産計画
子供の頃、私の住んでいた市とは名ばかりの小さな町では、神社祭や港祭り
など年に数回の町が浮かれる祭りがあった。この日は町の中心部に露店が並ぶ。
発発がそこかしこで唸り、柔らかい暖色系の光に照らされた通りは、小さな町
の何処から集まったのか人でごった返す。
社内報の自己紹介で好きな食べ物の欄に書くほど、私は天津甘栗が好きだ。
実家のある町では、天津甘栗を普段売っている店が無い。500円やら、奮発し
て1000円の袋を年に数度の祭りのたびに買い求め、一週間ぐらいかけて、今
日は5個、明日も5個、と大切に食べて行く。外の皮にひびをいれ、きれいに
割り取り、次は甘皮を丁寧に取る。欠けらも残さず味わって食べる。
東京に出て来ると、驚いたことに祭りでもないのに駅前の角で天津甘栗が売
られている。可処分所得も増え、屋台がいる時ならいつでも、好きなだけ買っ
て食べられる。業者さんから、天津甘栗を付け届けでもらったことまである。
それでも、一個一個、丁寧に剥いて、味わって食べる。
世の中には、甘栗が好きな「ご同輩」がやたらいると見え、とうとう、キオ
スクやスーパーで皮を剥いた甘栗が24時間入手できるようになった。もう、数
ヶ月待つことも、店を探すことも、そして剥くことさえしなくても良くなった。
味は昔のままに、味わいの何かが変わったように感じる。
テレビでオリンピック選手がメダルを手に感極まっているのを見ると、素直
に感嘆するのと同時に、つい心配になる。場合によっては十何年もの間、生活
のほとんど全てを捧げて努力した結果が報われた。気の狂うほどの喜びの瞬間
だろう。もう、多分この人は二度と同じ大きな喜びを味わうことは無いのでは
ないか。感動のヒューズは切れてしまわないか。これから先、他人が感動でき
ることに、同じぐらい感動できるのだろうか。
世の中が便利になると「ケ」と「ハレ」は見事に平均化されて、我慢も無け
れば、それが報われる喜びも減衰する。それでも、ぐっとこらえれば、大きな
感動でヒューズが飛ぶ。
「顧客を感動させるマーケティング」が注目されているらしい。計りもできな
ければ、量産もできない「感動」。こんな気紛れな切り札を使いこなすには、
マニュアル型の実用書では表現しきれない「覚悟」・「知恵」・「努力」が必
須だろう。
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次号予告：情人に乞う身請け（１月10日発行）
乱高下する株価。銘柄として扱われる企業。投資家と企業に関して考えてみ
ました。
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