月曜日の仕事が終わった後に、バルト9の夜遅い回で観てきました。4月26日の封切から一ヶ月半弱。バルト9でも一日一回の上映で、3Dは既に全く上映されていない状態でした。月曜日の12時5分前に終わる回にも関らず、観客はかなりたくさんいました。客層に偏りがあまりなく、敢えて言うなら私ぐらいの40?50代男性が多めかと言う感じで、40人ぐらいはいたと思います。
根強い人気を誇る、話題の映画だけあります。
シリーズ第一作も第二作も見ているので、惰性で観たいと言うのは勿論ありましたが、話題の盛りあがりようが凄く、観たと言う周囲の人々から、「『脱兎見!』にはいつ載るのか」とか言われ続けてきましたので、きっとだいぶ混んでいるのだろうと、引っ張りに引っ張って、漸く観に行くこととしました。それ以外に観ておきたい映画が数本あったと言うのも引っ張ってしまった理由です。(それ以外に観ておきたい映画のうち、『コズモポリス』など見逃したものも複数あります。)
『アイアンマン3』。面白く残念に思う所が基本的に一つも見当たらない映画です。「日本よ。これが映画だ」などと大仰なキャッチコピーが鼻につくほどだった『アベンジャーズ』などよりも、よほど、この作品の方が娯楽映画の王道を行っているような気がします。
『アイアンマン2』は第一作を越えた、数少ないシリーズものだと思うとこのブログにも書きましたが、第三作は、娯楽大作としてさらに上を行っているように思えます。ただし、第一作から第二作へのキャラの深掘りをさらに深め、人間劇の要素が強まっていて、主人公達の過去の人間関係なども絡みついてくるストーリーになっていることが、ドラマ性を高めるものの、SF大作としての面白みを逆に削ぐ結果になっているようにも感じます。
最近読んでいるコミック『闇金ウシジマくん 』は、シリーズで展開する話を重ねるごとに、闇金のウシジマはただ金貸しとしてそこに居るだけになり、金を借りる側の人間の、自らの業に焼きつくされていく姿の描写の比重が限りなく多くなって行き、ここ最近は、「タイトルの主人公を全然見ないよね」などと知人と話しています。
ヒーローもので言うと、遥か昔、私が愛読していた日本版のコミック『スパイダーマン』は、スパイダー感覚も糸を射出することも、別にコスチュームを纏わなくてもできると言う単純な発見から、どんどん変身しなくなり、最後の巻の方では、単なる超能力者同士の悲しい物語の展開に集約されて行きます。
人間ドラマに比重が移ると、主人公を主人公たらしめる特異な部分の描写がどんどん圧縮されていくのは、或る意味必然なのでしょうが、今回の『アイアンマン3』もその例外ではありません。パワードスーツを着ていない主人公の描写がかなり長く続きます。これを推理劇やサスペンス劇、若しくは、生身のアクション大作のように観て楽しむことは勿論可能で、そうしても全く退屈させない大きな世界観を持ち合わせた設定になっているのは間違いありません。パワードスーツを着ても着ていなくても、ヒーローの苦悩と活躍を描く話であるのは間違いないのですが、前述のような変身しなくなっていくヒーローの比重が増える物語構成の兆候を、変身した状態で語るべきものが見当たらなくなってきた行き詰まりと捉えられなくもありません。
生身の人間の姿のロバート・ダウニー・Jr. の長いシーンを見ていると、『シャーロック・ホームズ』のシリーズを見ているような気になってきます。おまけに(昨年夏の香港旅行の際の飛行機内で観た)『アベンジャーズ』の中での苦戦がトラウマになっていてパニック症状を起こす設定などには、少々やり過ぎ感を感じます。
(最近、日本で一番と言われる催眠術者の方から、「習った訳でもなく、自覚もないのに、かなり筋が良い催眠導入を行なっている」と突如言われて習い始めることになった催眠技術がちゃんと使えるようになったら、こんなの簡単に治せるのだろうになどと思ってしまうぐらいに、醒めた気分に一瞬なってしまいました。)
人間ドラマに比重が移った結果のプラスの面も勿論あります。私にとってのこの面での最大のプラスは、第一作・第二作から引き続き、他の作品では見当たらない「可愛らしいグウィネス・パルトロウ」でしょう。今回は更に存在感を増し、敵による人体改造を経て、数千度の高熱を操る超人と化して、ロバート・ダウニー・Jr. の危機を救うぐらいの活躍をするほど(実際には、それ以外にも一度、映画前半で彼の命を救っています。)の場面まで存在するのに、「愛らしさ」全開です。
映画のエンディングでは、この超人化を解除することに成功したような話が出ていますが、いっそ、この微妙なバランスの上に成り立っている面白いキャラでスピンオフ作品を作ってみてはどうかと思うほどでした。エンディングで、なぜ、主人公がアイアンマンになることを止めようとするのか、さらに、なぜ心臓につけていたリアクターを外しても大丈夫になったのかなど、よく分からない部分が残る話でしたが、全体で見たら、勿論、楽しめる作品であると思います。DVDは一応買いです。