306 慇懃な処遇

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経営コラム SOLID AS FAITH 第306号
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 ご愛読ありがとうございます。第306話をお届けします。

 300話達成記念特別号のシリーズが終了して一息ついたと思っていたら、通
常号を二話挟んで、今度は恒例の周年記念号の発行タイミングが来ました。と
うとう13年です。1999年10月末日の発行から、干支一周をも越えてこれほど
に続けられるとは、本当に思っていませんでした。永きに渡り当コラムを読み
活用して下さる読者の皆様のご支援と、クライアント企業の皆様が下さる中小
零細企業経営の日常からのインプットとの、両方のお蔭でここまで歩んで来ら
れたものと思っております。心より御礼申し上げます。

 6日後に発行される13周年記念特別号のテーマは、中小零細企業のIT投資
と活用。従来の周年記念特別号よりも、一段と長いのにソリアズ本文との関連
が薄い、非常に特異な特別号となりました。是非お楽しみ戴ければと存じます。
 
 満13年直前の今回の号は、『慇懃な処遇』と題して、多分初めて中小零細企
業の業者対応を取り上げた話です。贈答品受領の禁止や飲食の禁止など、業者
との関係を規則で縛る企業は以前から多々ありました。最近は、自分達が思い
上がった態度を取らないよう「業者」ではなく「お取引先様」と呼ぶようにな
どと、臭い物には蓋とばかりの放送禁止用語のような指導のある会社も見受け
られます。
 
 多くのクライアント企業において、「出入の業者」と名乗っている私にとっ
ては、非常に違和感があります。そんな企業での事例を皮切りに、業者の扱い
について二社を比較する形でまとめてみました。

 本文に対するご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへ
のお返事の目標納期は5営業日!!
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その306:慇懃な処遇

 クライアントのチェーン店本部を訪問して、打ち合わせ用のブースで待つこ
と数分。アポの相手の営業部長が顔を出し、前アポが押しているので少々待っ
てくれと頭を下げに来た。全然構いませんよと、鞄から本を出して見せて、ゆ
るりと待つことにした。

「店舗でも来店のお客様への接遇の改善にはかなり意識的に注力しているので
すが、本部部門でも、お取引戴いている会社の方々への対応にはきちんと配慮
することになっています。前職では取引先をなんと呼んでいましたか。『業者』
でしょうか。それとも『業者さん』ですか。これからは『お取引先様』と呼ぶ
ようにしてください。社内会議ででも同様です。勿論、単に名称を変えるだけ
ではなく、当り前のビジネスマナーを守ってください。決して、仕事を出して
やっている立場のような考え方はしないようにして下さい」。
 パーティションの向こう側から、本部スタッフ部門の聞き覚えのある声が聞
こえる。新たに配属になった社員に業者対応の基礎を教えているようだ。手に
した本をそっちのけで聞き入っていると、営業部長が現れた。

「で、この前市川さんに行ってもらったあの店舗の店長はどうでしたか。結構
いい線行っていると思っていますが」と営業部長が尋ねる。私は「ええ。勉強
熱心ですよね。私の読んでいる本は何ですかと、帰り際に聞いてメモしていま
したよ。そう言うことを尋ねる人は御社では珍しいですからね」とぞんざいに
答えた。

 ビルを出て午後のアポに向かう道すがら、次の打ち合わせ資料に眼を通し、
前回の経過を思い起こす。先方のビルに着いたら、一階のエレベータ・ホール
で服装を整え、手鏡で顔もチェックする。ここ最近のソリアズの内容を思い起
こし、ブログの投稿も思い出しておく。小さな応接室に入ってソファにかけて
いると、社長が現れた。

 いつも通りの展開で、社内の勉強会の経緯を報告し、考えを述べる。いつも
通り、私の考えの根拠を社長は鋭く追及する。私は予想して用意していた根拠
や背景を説明する。いつも通り、社長はふんふんと頷いて大きなノートにメモ
を取る。その後、いつも通り、最近面白いことはあったかと尋ねてきて、その
後にはソリアズに言及し解説を求めてくる。

「いやあ、もう二年になるか。うちは、あんた達業者ができることを自前に取
り込んで行くから、学ぶものが無くなったら、来るのを止めて貰っているって、
一番最初に説明したよな、あんたにも。汲めども尽きぬ泉とはこういうことか。
まだまだ色々教えて貰っていて、いつまで経っても止められないよな」と突如
社長はいつもと違うことを言う。

「ええ。吹けば飛ぶような零細業者なんで、商売のための経営努力はそれなり
にしているんですよ。来月もよろしくお願いします」と、私は頭を下げてにや
りと笑った。

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☆当コラムはプリントアウトしてお読みいただくと、より一層楽しめます。☆
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【MSIグループからのPR】

6日後に迫った13周年記念特別号発行!

予告ゼロの秘密裡の準備数ヶ月を経て…
前書きから後書きまで、合計9章にも及ぶ大作、満を持して登場!

 寄稿もなければ、ランキングもなく、タイトル解説もない。
 お祭り号的おふざけもなければ、13年の経緯とも無縁。
 おまけにソリアズ通常号への言及もたった2ヶ所。
 過去12回の周年記念特別号とは全く別路線の異色作!

 ただ只管に中小零細企業のIT投資のあり方について考え抜きます。
 読めば「ある、ある。こういう会社…」と呟いてしまうこと請け合い。

ITの切り口のソリアズではなく、敢えて言うなら…
ソリアズ風「中小零細組織のIT投資の基本解説」。
乞うご期待!

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 合資会社MSIグループ(代表 市川正人)
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次号予告:
 第307話 『見世物小屋』 (11月10日発行) 
 情報公開ブームの一環か、本来隠されている筈のバックヤード的な部分を客
に見せる企業が増えているように思います。その効用について考えてみます。

(完)