013 現場処理

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経営コラム SOLID AS FAITH 第13号
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第13号をお届けします。

 第12号「意見の伝達」の内容が分かりにくいとのご指摘を2件ほどお寄せ頂
きました。内容の質よりも、押し通すことに意義を見出していることが多いよ
うに見える米国人の「主張」。経営における「グローバル・スタンダード」も、
米国の声高な「主張」によって、国内に拡散して行くように見えます。

 留学時代に、数多く遭遇し、私を驚かせた主張する人々の資質が、「グロー
バル・スタンダード」の裏に隠れているような気がする。そのようなことを書
いたのが前回の号です。
 
 分かりにくくても、「深読み」や「謎解き」の楽しみがあるとのご指摘も頂
いたので、各号を通じての平均的な分かりやすさはこれまでのままに、SOLID
AS FAITH を続けて行きたいと考えています。第12号が分かりやすさの平均値
を下げてしまったので、第13号は身近なお話をお伝えしたく存じます。

今後とも、SOLID AS FAITH にご愛読を賜りますようお願い申し上げます。
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その13:現場処理

ベランダに乾しておいた下着を夜の間に盗まれたことがある。結構平和な住
宅地だったので、なかなかのニュースであり、そこそこの騒ぎになった。当然
警察を呼んだ。パンティとパンツ数枚が盗まれた旨は、110番通報の際に告げ
たのに、自転車の警官が駆けつけた後、パトカーまで到着し、パトランプを回
し続けている。アパートの2階の部屋に住んでいて、そのベランダから下着を
取るために、犯人はあちらこちらに掴まった形跡が素人目にもあり、靴跡まで
あちこちに残っている。

捜査は進んだが、よく見ていると働いているのは、私達夫婦から事情を聞く
最初の自転車の警官と、足跡を大判のセロテープのようなもので写し取ってい
る捜査官だけだ。ほかにいる二人は、基本的にぶらぶらしている。

靴は脱げるが、指は脱げない。証拠を採取するなら指紋を取ったほうが良く
はないか。「終わりました。では」と告げて、4人は去っていった。その後、
書類にはんこをつきに一度警察署に行った。この後どうなるのか、犯人が捕ま
る見通しはあるのか、捕まるとパンツは帰ってくるのか。疑問は何一つ答えら
れないままに終わった。書類を挟んだファイルを閉じたとき、警官は次の別の
案件が書かれた書類を手にしていた。

昨今連続する警察の不祥事を聞くと、事件を、そして被害者を一連の手続き
と書類作成のルーチンの材料としか捉えられなかったあの人々を思い出す。盗
まれたものが、もっと高価だったり、思い入れのあるものだったら、私は怒り
狂っていたことであろう。被害に遭ったことにではない。私からの税金を費や
して、私の気持ちを蔑ろにする者の態度にである。

「民間企業が、こんなだったら、すぐ倒産するぞ!」と思っているうちに、実
家から宅配便が連続して2度届いた。1個は、普段付き合いもなく、顔もほと
んど見かけないアパートの住人に預けられ、もう1個はあろうことかベランダ
に1階の道路から投げ入れられていた。

彼らにとって、たかがパンツ数枚、荷物2個。数千数万のうちの1つの現場
であろう。最低限の結果を用意し、書類の空欄を埋めればそれで終わるだろう。
書類と違って、顧客の思いはファイルできない。
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次号予告:経験という報酬(5月10日発行)
 インターネットによる情報化。「ウチの会社も、とうとう情報化ですよ」と
喜ぶ経営者のお話を伺って考えたことをまとめてみました。