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経営コラム SOLID AS FAITH 第614号
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ご愛読ありがとうございます。第614話をお届けします。
夏休みが終わり秋が近づいていますが、暑い日々はまだ少々続きそうです。
夏休みの機会に昔暮らした街などを訪ねた方の中には、その無残な変わりよ
うを痛感した方もいるかもしれません。人口激減は以前から言われていて政
令指定都市においてさえ、人手不足で路線バスは本数を減らし、飲食店など
を中心に店舗はシフトが組めない時間帯を休業するなどの変容が目立ちます。
もっと地方に行き、「限界」の冠が付く市町村に行くと、強い日差しの眩
しい駅前商店街には人が歩いていず、10分歩いても誰とも擦違うことがあり
ません。所謂「しもた屋」が延々と続きます。以前は人でにぎわっていた商
業施設も各フロアに空きスペースが広がって、店舗が入る目途も立っていな
い状況が目立ちます。
自動車でしか行けない幹線道路沿いのSCには人が溢れ返っていますが、食
品スーパーとフードコート以外で財布を開いている人もスマホ決済している
人もあまり見ることがありません。駐車場で見ていると、明らかに高齢者が
運転している自動車の助手席や後部座席に20代から30代の家族が乗っている
ケースさえ見ます。自動運転車でも普及しない限り、SCの未来も明るいもの
ではないかもしれません。
零細店舗の店主が「大手の●●が近所にできてから、客を盗られて売上が
ガタ落ちだ」などと言っているのをよく耳にします。お客は拉致されて大型
店に連れ去られたのではなく、自分の意志で零細店を見限っただけのことで
す。「選ばれなくなった自店」を認識しない限り、そうした零細店舗の経営
が好転することはないでしょう。
同様に市町村も商店街も商業施設も「選ばれなくなった自身」を認め、
人々はどのような基準でどんな行き場を選んでいるかを理解し、自分を変え
ねば淘汰は時間の問題であろうと思われます。そしてそれは多分、どこかの
先行事例や、受売り情報ばかりの「出羽守」の言う海外先進国事例などの猿
真似の中に、解決策が見つかるようなものでは決してないことでしょう。興
味深い時代になりました。
今回の『前意識の箪笥』は世の中にやたらに生まれてはすぐさま消費され
て消える各種のコンテンツの効用を考えてみた内容です。今や日本が世界に
誇るドラマやアニメのコンテンツは、その時代の多様化した人々の記録です。
経営の多くの局面に利害関係者の動機づけが必要であるなら、各種コンテン
ツはその参考資料です。そんなことを考えてみた内容をお愉しみ戴ければ幸
いです。ご意見・ご感想をお待ちしております。頂戴したご感想などへのお
返事の目標納期は5営業日!!
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その614:前意識の箪笥
「そもそも美容師にはどんな切っ掛けで成りたいと思うんでしょうか。成ろ
うと思い立つ切っ掛けは何パターンぐらいあるんでしょう。ま。主要なもの
だけで良いですけど。」
私が真顔で質問すると、美容室チェーンの社長は虚を突かれて考え込んだ。
このチェーンでは理美容師専門学校からの新卒採用を行なっている。学校側
の後援会があり、そこに参加した企業や店舗には優先的に卒業生が紹介され
るのが業界の一般論。しかし、今や学生達は学校の就職課の紹介や斡旋等に
目も呉れず、スマホで勝手に応募するという。採用難が現実化し、おまけに
採用しても離職率も上昇している。その相談を受けた。
社長は一頻り考えて、「特に女子が多いでしょうが、メイクが好きという
のがそのまま美容師という仕事への憧れになっている子は目立ちますね」と
苦し紛れに説明した。なるほど。確かにそういう女子の人物像なら分かる。
女子高生なら映画『水深ゼロメートルから』の群像の中で際立っていた。ま
だ若いなりたて派遣OLなら、実質的に封印されたらしいヒットドラマ『セク
シー田中さん』の準主役の女子が思い当たる。彼女は知人のプロから習って
さえいた。ターゲット・モデルを作るネタがそれなりに手許にあることに気
づく。
「男子なら、ドラマの『オクトー Season2』でガッツリ登場しましたね。な
るほど。ああいう感じか。」とこの三例の私の理解を社長に確認し、こうい
う子達に響くキャッチや面接の流れを考えるだけでも採用や定着のプロセス
改善の糸口が見つかりそうだと告げた。社長は業界の人間でもそんな次々と
事例が思いつくものではないと感嘆して、そういう予習をしてきたのかと私
を疑った。そんな筈もない。還暦過ぎのオジでも普通に知っている。
2014年に閉館した吉祥寺のバウスシアターは若者文化の殿堂だった。その
歴史を描いた映画『BAUS 映画から船出した映画館』を観た。社長の本田實
男がMEG(武蔵野映画劇場)という近代的な映画館を1951年に開設した際に
スピーチで言っていた。
「これ(映画)が皆さんの住んでいる世界を見るために、感じるために、開
かれた窓だということです。この窓から見えたものを皆さんはそれぞれ一人
一人違ったように感じて、違ったように受け取って、そこからやがて自分自
身を作っていく。ご飯や学校と同じです。ご飯は体を作る。ね、ご飯は大事。
学校は頭を作る。これももちろん大事。そして映画は皆さんの心を作る。こ
れ、とっても大事なこと。」
開かれた窓は最早映画だけではなくなった。そして映画は心を創るばかり
でもなくなった。世の中に情報は溢れ返っており、脳の能力も時間もその氾
濫に全く追いつかない。ただ絞り込んだものをじっくり理解し記憶すること
はできる。窓は早送りするモノではない。
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次号予告:
第615話 『This コミュニケーション』
シリーズ『R6メリケン奇聞』(1) (9月10日発行)
昨年10月に大統領選直前の米国の田舎町を見て回ってきました。その時の
気付きをまとめたシリーズ6回がスタートします。第一回は裁判が頻発する
社会のありかたを考えてみました。
(完)