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経営コラム SOLID AS FAITH 第609号
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ご愛読ありがとうございます。第609話をお届けします。
前号のご挨拶文章で既に始まっていると言われる第三次世界大戦について触
れました。数年前からオーストラリアが中国による超限戦に対抗し始めている
のは有名で、同様の事柄は日本国内でもかなり見つかります。そんな中、宇露
戦争においてウクライナはロシア軍の遠くシベリアの基地まで対象にしてド
ローン攻撃を仕掛け、ロシア空軍の戦略爆撃機の3分の1を損耗させたと報じら
れました。ロシア軍の死傷した兵員の数は100万を超えたとも言われています。
完全に国境紛争の域を逸脱した戦況になってきています。
昨年10月のモサドによると言われるシリアのヒズボラ関係者を中心とする
数千人を死傷させたポケベル爆弾と言い、年単位の仕込みを経て実現する類例
のない大量破壊・大量殺戮の手法が登場し続けています。米国では元海軍司令
官が「国防総省が中国軍関連企業と認定した会社が所有・運営する船が、何千
ものコンテナを積んでアメリカの港に平然と出入りしている現状は、常軌を逸
している」と、今回のウクライナの大規模奇襲攻撃の成功を見て厳戒態勢を促
すなど、どんどん戦争関係の報道が増えてきました。
中国はシーラインの確保に東シナ海・南シナ海の海上にブイだの通称調査施
設だのの設置を進めていますし、典型的ランドパワーのロシアはウクライナに
向けても新規NATO加盟のフィンランドに向けてもせっせと鉄道を敷設・整備し
て兵站を整備しているとのニュースもありました。ロシアに三方から囲まれて
いる北海道では住民が減ったとどんどんJRを廃線させています。なかなかな好
対照です。
せめてドローンにも極超音速ミサイルにも核兵器にさえも有効でやたらにコ
スパの良いレールガンは日本が世界に先駆けて開発を進められそうですから、
「唯一の被爆国」と言い募るのなら、早々に核兵器を無効化して欲しいもので
す。その前に高い社会貢献度の自衛隊をきちんと憲法で認める方が先かとも思
われますが。
ここまで話が進んでしまったご時勢ですので、中小零細企業では、前号のご
挨拶にも書いたように戦時経済の研究がVUCAと言われる読めない時代への主
要対策の一つになるように思えます。最初の一手は既に戦時経済が始まりかけ
ていると説く中野剛志の『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』が良い
かもしれません。環境に適応してしぶとく生き残り勝ち残りましょう。
今回お届けする609話『抗ショック・ドクトリン』は、不満は見当たらなく
なって不安だけ山積みになった世の中で自社社員の動機づけについて少々考え
てみた内容です。是非ご一考ください。ご意見・ご感想をお待ちしております。
頂戴したご感想などへのお返事の目標納期は5営業日!!
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その609:抗ショック・ドクトリン
ハーズバーグが有名な動機づけの二要因論を発表したのは20世紀後半。それ
から、半世紀近く経っても二要因論は褪色しない。「動機付け要因」は、職場
の人々のやる気をどんどん引き出す「達成」だの「承認」だのと言った気持ち
の問題。それに対して「衛生要因」は、不満の発生を減らし抑制するだけの
「賃金」・「福利厚生」だの「経営方針」や「人間関係」だの、外部から与え
られる要因ばかり。
「福井県だかの海岸にタンカー事故で大量に油が押し寄せた時に、陸からはボ
ランティアと称する人達が多数押し寄せました。賃金などなく、福利厚生もほ
ぼなく、作業条件は劣悪で、いつ終わるとも分からないのですから方針もヘッ
タクレもありません。寄せ集めなのですから人間関係も少なくとも最初は友好
的なものでもないでしょう。それでも、長期に渡り働き続ける多数の人達がい
ました。会社を休んだり、辞めたりして来る人たちまでいたようです。」
20年近く前に書いた『人材育成のレポート』の一節。二要因論に基づくなら、
現地の人々の感謝と必要とされること自体による承認、そして社会に貢献する
作業の達成感など、強烈な動機づけ要因の眩しさは、皆無に近い衛生要因の影
を完全に消し去ってしまうようだ。
著書『Z世代化する社会』で舟津昌平は、若者のみならず社会全般に働くこ
とにおける不満は近年どんどん減っているが、不安は全く減らないと言ってい
る。ブラック企業は言われるほど生き残ってはいない。残業の上限規制は寧ろ
大手企業の方が守っていないぐらいだろう。ハラスメントも騒がれ過ぎなぐら
いになり、今やパワハラ上等を売り文句に社員に“熱血指導”をする企業に
「鍛えて欲しい」と若者が集まるほどになっている。
世界に比べて賃金が安いと散々言われるが、世界に比べて物価も安い。海の
向こうの平均賃金は高いが、酷い格差社会で高物価に生活苦の人々も溢れ、絶
望死なる死因が存在する国もある。低賃金に明確な不満を抱く人は減りつつあ
る。しかし、日々は暮らして行けて不満が湧きにくくても、「老後は金がかか
る」、「子育ては金がかかる」、「いつか大地震が来る」、「トクリュウが
狙っている」、「戦争が始まる」、「不法移民が社会を破壊する」などとネッ
トは言い連ねる。これでは賃金が幾らであっても不安が付き纏うだろう。不安
に根拠は要らず、一度心に巣食うと容易には消えないと舟津は説く。
不安に対して凡人ができることは少なく、多分、有意な努力を怠らず、日々
の生活に向き合うことぐらいしかないだろう。不満は抑制できる衛生要因も不
安には効き目が薄いらしい。けれども日々の達成や承認の喜びは、不安を消し
去って未だ余りある。
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次号予告:
第610話 『蒙昧の行方』 (6月25日発行)
以前から当コラムで話題にしてきたように、高付加価値型の商売はお客の高
読解力をはぐくまなくては実現しない世の中が本気に到来しつつあります。現
実論について考えてみました。
(完)